表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美女に子種をせがまれて  作者: ぬ~ぶ
22/46

#22 五大アイテムをGETせよ


「なぁ、爺さん。金も貯まったことだし、そろそろ装備をグレードアップすべきじゃないか?」


「そりゃ、わしだってそうしたいのは山々じゃが……確か2万5000マドカじゃなかったか? 次の装備は」


「足りない分は、今 使ってる装備を下取りしてもらうことで何とかなるんじゃねぇか?」


「おぉ、その手があったか。さすがオウム、聡いのう」


 そんな訳で、わしらはあの武器防具屋へ顔を出したんじゃが……


 下取り価格を加えても2万5000には届かんかった。


 負けてくれ、と頭を下げたがダメじゃった。


 それで仕方なく、


「女装趣味のこと、町中にばらすぞッ」


 そう脅したら、素直に負けてくれた。


 こうして、わしはプラスチック製の 頼りない剣・盾・鎧を手に入れたんじゃ。


「よぉし、さらにもっとレベルを上げてやるぞいッ」


「おい、爺さん。レベルを上げるのは結構だがよ、それだけじゃダメだぜ」


「むむっ、どういうことじゃ?」


「冒険もしなきゃ」


「いや、冒険っていわれてものう……具体的に何をすればええんじゃ?」


「ま、一言でいえばアイテム集めだな」


「アイテム集め?」


「といっても、ただのアイテムじゃないぜ。重要アイテムだ」


「重要アイテム……。それは一体どんなもんじゃ? いくつある? どこにある?」


「まぁ、そう()くなって。これから順序立てて説明してやるから。まず爺さん、あんたの目的は?」


「そりゃ、チューリップを倒すことじゃ」


「じゃあ、そのチューリップはどこにいる?」


「雲の上の城じゃ」


「で、爺さん。あんた空を飛べるのか?」


「バカ言え、飛べる訳ないじゃろが」


「なら、どうやって雲の上まで行くつもりだ?」


「ヴッ……。そこまでは考えとらんかった」


「ケントのマントだ」


「へ? トンマのマント?」


「違ぁう、ケントのマントだよ」


「ほぉ。……で? そのマントが何じゃ? 羽織れば空でも飛べるんか?」


「あぁ、まさにその通りだ」


「そりゃ、ありがたいな。どこにある?」


「ヒュルリの洞窟だよ」


「おぉ、そうか。なら、さっそくそこへレッツラゴーじゃ」


「ところがダメなんだ。ヒュルリの洞窟へ行くには、ゆうさくライターが必要なんだよ」


 オウムが言うには、ヒュルリの洞窟内は常に特殊な風が吹いておって、あらゆる火の気を消してしまうらしい。

 ランタンの炎も、燃え盛るたいまつでさえも通用しないんだとか。


 じゃが、ゆうさくライターなるアイテムを使えば、吹き消されることなく灯りを保てるというんじゃよ。


 ならば、そのライターのある場所へ となるんじゃが、あいにくそこへ行くには また別のアイテムが必要となってな……。


 要するに、以下の五つの重要アイテムを順番通りにGETせにゃ チューリップの住む城へは辿り着けんという仕組みじゃ。


①ドエスのほね   南方を指し示す   場所:ババヌキタウン

②やからのグラサン 透明の敵を可視化  場所:さまよいの森

③スケバンのマスク 毒ガスから身を守る 場所:もうもくの砂漠

④ゆうさくライター 猛火の点火器具   場所:もうどくの沼

⑤ケントのマント  自在に空を飛べる  場所:ヒュルリの洞窟


 そういう訳で、わしらはコンババタウンから北5キロの地域『ババヌキタウン』へ向かった。


 無論『ドエスのほね』を手に入れるためじゃ。



 ババヌキタウンは、町並みもその規模もコンババと似たり寄ったりじゃった。


 けど、こっちの方が少しせせこましい。

 石畳の路地が上下左右に入り組んどって、それに沿うように三角屋根の長細い家屋が建ち並んでおる。


 ただ、外壁の色が多彩だったんで その分コンババよりも面白みがあった。

 まるで、おとぎ話にでも出てきそうな景観じゃ。

 

 わしらは広場がある町の中心部まで歩を進めた。


 じゃがその間、壮年の男は一人も見かけんかった。

 やはり、この町もチューリップの餌食になっておったんじゃ。


 青空のもと、わしらは広場のベンチで梨佐さんの弁当に舌鼓を打った。


 それから噴水に入り、子供たちに交じって水遊びに興じた。


 その後は、ベンチでひと眠りしてリフレッシュ。


「さて、そろそろ始めるとするか……」


 わしらは辺りの民家や店舗を片っ端から訪ねて回った。


 もちろんドエスのほねの()()を突き止めるためじゃ。

 オウムは、ドエスのほねがババヌキタウンのどこにあるか、までは知らんかったからのう。


「いえ、聞いたことないわ」

「わて、そんなん知りまへん」

「ドエスのほね? 何じゃそら」


 情報は何一つとして得られんかった。


 それで、どうしたもんかと首を傾げてた時じゃ。


「キャーッ、危なぁーいッ!!」


 唐突に女の叫び声がして、わしゃ反射的にそちらへ顔を向けた。


 2軒隣の家からじゃった。


 2階の出窓に四つん這いの赤ん坊が見えたかと思ったら、それが窓の外へ落っこちたんじゃ。


 あっ、と思った時には既に体が動いておった。


 わしゃ自分でも信じられんくらいの敏捷(びんしょう)さで、2軒隣の出窓の真下へ移動した。

 そして、赤ん坊を見事にキャッチしてみせたんじゃ。


 すると、辺りに居合わせとった者たちから自ずと拍手が沸き起こった。


「坊やぁーッ」


 顔面蒼白の母親が転げそうな勢いで玄関から飛び出してきた。

 じゃが、我が子の無事を知るや一転、飛び上がって喜んだ。


 そして、わしから赤子を受け取ると 今度はおいおい泣きながら礼を言った。

 

「もう、ええって。そんな大したことは しとらんのじゃから」


 そう返して なだめるわしじゃったが、

『もし勇者になっとらんかったら、今頃この赤子は……』

 と、想像してしまい 密かに背筋を寒くした。


「どうか、お名前をお聞かせください」


 そんな母親の問いに対して、わしは、


「いやいや、名乗るほどのもんでは……」


 そしたら、オウムの奴が、


「このお方は、()()()勇者様だ」


 半笑いで言いやがった。


()()()……勇者?」


 赤子を胸に抱きしめながら、一瞬 戸惑いの色を見せる母親。


「そうだ。お前ら民のためにチューリップ打倒を決意された 心尊きハゲの勇者様だッ。()が高いぞぉ!」


 すると、母親のみならず 辺りにおった者たちまですべてが片膝をつき、頭を深々と下げよった。


「あぁ、ハゲの勇者様……」

「まぁ、ハゲの勇者様……」

「おぉ、ハゲの勇者様……」


 皆、口々に言うて合掌までしよる。


 わしはオウムをキッと()めつけた。

 じゃが奴は、してやったりの表情でウインクするばかりじゃ、まったく……。



 ふと気づけば、空は黄昏を迎えつつあった。


 これから小一時間かけてコンババまで帰るのは少々億劫(おっくう)じゃ。

 今日はこの町の宿屋にでも泊まるとするか。


 わしらは、派手な看板で安値を謳っとる『ババヌキエンペラー』にチェックインした。


 室内は思いのほか小綺麗じゃった。


 けど、狭いし窓がない。

 その圧迫感を和らげるためか、壁はすべて鏡張りじゃった。


 よう分からんのはベッドが円かったことじゃ。

 しかも、手で押すと回転しよる。


「おい、見てみぃ。このベッド」


 じゃが、オウムの奴はまるっきり無関心。

 安酒を舐めながら缶詰をつつく方に熱心じゃった。


 そういや、風呂場の椅子も けったいじゃったのう。

 座面の中央部がえぐれとって、こんな形じゃ → 凹


 帰ったら、梨佐さんにも教えてやろう……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ