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10 聖女を囲んで 

「ねね! 見てくれたアズ、イズ、オズ!」


 私とアズたち三兄弟は、宿舎のラウンジでルイボスティーを飲んでいた。先程までアーウェン隊長のテストをこなし、大統領に頼まれた召喚を行っていたので、まだ興奮が残っている。


「もちろん見てたよ。流石は私たちのアリスだ」

「ああ。なんか前世の時より、強くなってねぇーか?」

「うんうん! バハムートをあんなに呼び出しちゃっうなんて!」


 三人に褒められて、なんだかくすぐったい。けれど高揚感と充実感が心と身体を包んでいる感覚が心地よくもあった。


「でもアリスフィア」


 アズワルドがいくらか声のトーンを落として、語りかけてくる。澄んだ碧眼も真剣味を表していた。


「アーウェンには気をつけたほうがいい」


「気をつける? 何を?」


「ほんまやで。何に気をつけるんや?」


 不意にかけられた言葉に、振り返るとアーウェン小隊長がコーネリアス大統領と立っていた。


「だ、大統領! 小隊長!」


 私は起立して、慣れない敬礼をした。


「歓談中のところ、申し訳ない。楽にしてくれ」


 大統領にそう言ってもらい、一同はテーブルに着く。小隊長はニヤニヤしながら、アズに問いかけた。


「で。何に気ーつけたらええんや?」


「ふん。知ったことか」


 アズワルドは不機嫌そうに、テーカップに口をつける。それを見て、アーウェン隊長は「かっかっかっ」と独特の笑い声を上げる。


「時にアリスフィア」


 コーネリアス大統領が私に向き直り、耳打ちした。彼女の銀色の髪が肩口で揺れ、ラベンダーようないい香りが微かに漂う。大人の色香。その言葉がしっくりとくる女性だ。なんだかドキドキしてしまう。


「は、はい。なんでしょうか。大統領」


「うむ。今日は無理を言って済まなかったな。お詫びとして今度一緒に観劇に行かないか? オペラは興味あるかい?」


 観劇! オペラ!! その単語に、たちまち心が踊りだす。


「は、はい!! 私、オペラ大好きです!! とっっっっってもうれしいです!!」


「そうか! それはよかった。よし、特等席を用意してやる。楽しみにしていてくれ」


 それから大統領が、私の頭を柔らかく撫でてくれた。とろけるような感触が広がり、ときめきが溢れていく。あ、あれ。私、どうしたんだろう……。


「アリスフィア! おい!」


 イズワルドの大声に、我に返る。あ、あぶなかった。危うく大統領に恋してしまうところだった……。


「はあ。アリスお姉ちゃんは相変わらず惚れっぽいね……」


 オズワルドがジト目で私を見つめてくる。あの純粋無垢のオズにそんな目で見られると、なんだか罪悪感を感じてしまう。ぐう。


「まあまあ、みんな嬢ちゃんが大好きってことでええやんか。はい、めでたしめでたし」


 アーウェン隊長が私たちの肩を抱いて笑う。空気が変わり、ほっとした。よかった! と思ったのは甘かった……。


「うるせえな、アーウェン! てめえはアリスに近づくんじゃね!」


 イズワルドが小隊長の襟首に掴みかかる。にも関わらず、アーウェン隊長は「かっかっかっ」と愉快そうである。


 私はその光景を眺めて、ふと思う。

 こんなにも幸せな時間を過ごしたことがあっただろうか。いや、ない。子供の頃からずっと貧乏だったし、皇国では酷い扱いだった。


 その私が――こんなにも温かい人達に囲まれて、認められて、とろとろの時間を過ごしている。


 共和国に来れて、本当に嬉しい。

 私は人生で最大の幸福感に包まれ、その夜を終えるのだった。

ご覧頂き本当にありがとうございます。

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引き続き、何卒よろしくお願いいたします。

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