何度目かの
小説サイトに投稿させていただくのは初めてです。至らない点があるかとは思いますが、よろしくお願いします。
蜃気楼のようにゆらゆらと揺れる彼女は呟いた。
「 今回は会える 」
朝の集会で「制服のリニューアルをします!」と校長がはっきりと報告をした2018年6月某日。
「昔っから少しずつしか変えないんだよ〜この高校。もっと大きく…いっそのことブレザーとか」「あ〜分かる。数年前にもリニューアルしてたよね。私の制服見てお姉ちゃんが、私の時と袖が変わってる〜って言ってた」
「いや、まちがいさがしかよ」
その制服が変わることに不満がありそうな子達を横目に、今のままでも充分可愛いのにと自分の不満を心にしまった。
そんな、少しだけ変化を感じた今日。3限目が始まりそうなこの時間。サボるように玄関の靴箱で座っていた時のこと。
「あー夏が近づいてきたって感じだねー」と暑そうに呟く女の子。私に話しかけているのか独り言なのか分からなくて、その時は返事をしなかった。
「てかもう夏でしょ。暑すぎない?」
「…」
「うわ、靴箱あけたらもわっとした空気!くさ!」
「…」
「…」
「…」
「…ちょっと無視しないでよ。なんか恥ずかしいじゃん」
「…あ…わ、たし?」
「じゃなきゃ誰がいるの。もう 人に話しかけるの恐怖症になるかと思ったんだけど」
「…あ、えっと…その、独り言、かと思った」
久しぶりに口から出た音に私って話せたんだと驚いてしまった。
頬をプクりと膨らませた彼女は私のことを知っていて話しかけてきたんだろうか。そうだったら、こんな目立つ場所を選ぶだろうか。いじめられるよ仲間はずれにされるよと教えてあげた方がいいだろうか。でも幸か不幸か今は3限目の途中だ。この玄関には彼女以外誰もいない。誰もこの場面をみていないのだ。
「…授業サボったの?」
そんな私の問いに、体調不良だから帰るんだと教えてくれた。お母さんが迎えに来てくれていると。
「…私も帰りたい」それは聞こえるか聞こえないか、声に出したか出していないか分からないような小さな声だったと思う。
「ちょっと。私が仮病で帰るんだと思ってるでしょ。ほんとにお腹痛いんだからね」
そんな事は思っていなかったが、そう言いながらピースをしている彼女にやっぱり仮病じゃないかと思っていた。そのあとゆっくり指が3本になり「ミスった。3日目だ」と。そういうことか。
「うん。だったら仕方ないね。」
「ね。本当にもう限界なんだもん」
「…じゃあ早く帰った方がいいんじゃない?お母さん待ってるんでし「あ、てか一緒に帰る?」
だって帰りたいんでしょ?と聞かれたとき、私はどんな顔をしていただろう。帰りたいのに、ここから動けない。そう彼女に全てを言ってしまう前の安堵の表情だっただろうか。
いや、何をしても彼女は何度も忘れてしまう。きっとまた少ししたらあの夏に戻されるのだから。
あの夏で会いましょう 1話 [完]
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登場人物
吉田 恭子 (16)
2004年7月某日 午前11時
体調不良を訴え早退。帰宅途中、信号無視をした車との衝突事故で死亡。
2004年に戻ることが出来る。過去を変えることをできず、毎回死亡の道を通る。
今回は真と一緒に過去に戻ることが出来る。
川崎 真 (16)
2018年に恭子と出会う。小さい頃は少し霊感があり、見えないものが見えていた。