表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/17

貴族×婚約

やっとヒロインの婚約まで来ました。



これからもよろしくお願いします


 私はいよいよ、パーティに正式にデビューを果たす日がやってきた。


 貴族において、パーティデビューとは、結婚相手を選ぶ場としても用いられる。


 もちろん恋愛結婚ではない。

決めるのは、当主同士である。


 私が魔法使いであると知られると、国中の貴族が、お見合い写真を送りつけて来たらしい。


 祖父は、頭を抱えた。

だが、祖父自身も、好きに孫の結婚相手を、決められるわけではない。


 我がルミエール伯爵家は、ルミナス侯爵家の寄子である。


 寄親は寄子の面倒を見るし、寄子は寄親の意見に出来る限り従うのである。


 だから、祖父ジョセフは、ルミナス侯爵に相談した。


 すると、ルミナス侯爵は孫である、チアキ・エン・ルミナスを結婚相手に選んでしまった。


 最早、祖父ジョセフにも私にも、拒否権は無かった...


 本日は、そのチアキとの婚約式も兼ねている。

 

 私は前世ですら、結婚した事がないのに、この歳で婚約とか、気が滅入る。


 頼むから、ミルキーのような、お転婆娘でない事を祈る。






 やがて、パーティが始まった。

本日は、ルミナス侯爵の館でパーティが開かれる為に、私は生まれて初めての、旅行をした。


 普通貴族は、余暇に、旅行を楽しむらしいが、祖父ジョセフは許さない。


 祖父ジョセフは変わり者で、家族を極力旅行へは、連れて行かなかったのだ。


 なんでも、祖父の両親が、旅行先で、暗殺者に殺されたのが原因らしい。


 私はとりあえず、花瓶に飾ってある薔薇を手に取り、胸ポケットに入れた。


 セクシーだろ?


 最早私は、薔薇を見たら手にしないと気が済まない癖が出来た。


 祖父ジョセフは、真っ先にルミナス侯爵を探す。私を紹介する為である。


 いやいや! 我が家のパーティでも何度か話しているから別に紹介しなくていいのだが...


 やがて、祖父ジョセフとルミナス侯爵は、モジモジした可愛らしい女の子を連れて、私の元にやって来た。


「いつもお世話になっております。フィン・マウル・ルミエールです。本日は宜しくお願い致します」


 私は正式な貴族の礼をした。

いわゆるお辞儀に近いが、右手を心臓に当てるのがポイントである。


 すると、チアキは、ルミナス侯爵に引っ張られて、私の前に出されて、挨拶をさせられる。


「初めまして、チアキ・エン・ルミナスです。よろしくお願い申し上げます」


 チアキはかなり、照れているらしい。

大人しい女性は好みである。


 実にラッキーだ。実は内弁慶とかいうオチは、やめて欲しい。


「いやぁあんなに小さかった、フィン君がパーティデビューとはね! しかも、同年齢の娘が居て本当に良かったよ」


 ルミナス侯爵は、とても喜んでいた。


「私としても、良い縁談を頂き、感謝致します」


 ルミナス侯爵は、さらに笑顔になる。

チアキは相変わらず、ルミナス侯爵の背中に張り付いてこちらを伺っている。


 まるで、小動物の様である。

私はチアキに、飲み物を渡して、話をする。


「チアキ嬢様! 今宵は綺麗なお召し物ですね」


「ーーーーーー」


 チアキは、顔を赤らめて、俯いたままだ。恥ずかしいのであろうか? 


 すると意外な人物がやって来た。

ミルキーだ!!


 私は自宅で開かれるパーティで、たまに顔を合わせては、酷い目に遭わされていた。


 ミルキーは私とチアキが、二人で居る事を不審に思い、声を掛けてきた。


「ちょっとチアキ! 何でこの変態野郎と一緒にいるの?」


 どうやらミルキーは、私を完全に変態野郎だと、噂を流しているらしい。


「変態野郎はあまりに酷いですよ。ミルキーお嬢様」


 しかし、ミルキーは、私との死闘の数々を言い出した。


「チアキいい! このフィンという男は、私のスカートを捲るは、口移しでシャンパン流し込むは、お尻を触るわ...」


「いや要らん事言わなくて良いわ!」


 すると、チアキは喋りだす。


「フィン様は変態なんですか?」


「そう!」


「違う!!」


 私はミルキーと睨み合いを続ける。


「いいかい! ミルキーお嬢様が変態なんだよ! 私を素っ裸にする事、三回以上! 更には、身体に落書きまでするのだよ」


 すると、ミルキーがローキックを私に喰らわす。


 ぐは!! 


「いい! チアキ! こんな変態男は危険だから、他で遊ぼ!」


 ミルキーはチアキを連れてどこかへと行ってしまった...


 私は、祖父ジョセフに相談した。


「ミルキーお嬢様にチアキお嬢様を連れて行かれてしまい、本日の婚約式とやらの準備が出来ません」


 すると、祖父ジョセフもルミナス侯爵も苦笑いを浮かべる。


 そう! ミルキーお嬢様は公爵令嬢であり、身分が上なのだ...二人とも文句が言えない。


「とにかく、笑顔で手を振り、肯定していれば良い!!」


 祖父はそれだけ言うと挨拶周りを再開した。


 私は、今夜の婚約式の為に、ナンパもできずに、窓辺で一人夜景を眺める。


 湖畔の湖に月が反射して、何とも絵画の様な風景である。


 一人で夜景を眺めていたら、また奴がやって来た。


 ミルキーお嬢様だ。

しかし、何やら様子がおかしい。

何故か涙目だ。


「チアキと婚約するって本当なの?」


「はい! まぁ貴族なので私が決めた事ではないんですが...」


「私のパンツをみて、口付けして、お尻まで触っておきながら、責任取らないつもり?」


 どうやら、ミルキーお嬢様はツンデレだったらしい。あの暴力の数々も愛情表現だったのだろうか? 


 だが、私は出来ればミルキーお嬢様は遠慮したい...そもそも、私に嫁の選択権などないのだよ。


「すみません! 貴族の子弟たる者、婚約の話は、当主同士の話し合いによって決まります。私に話されても困ります」


 私は丁寧にお断りをした。

すると、ミルキーは、走り去って行った...





 


 そして、婚約式の準備の為に私は別室へと向かう...






「それでは、本日の婚約式をはじめます」


 その掛け声と同時に、私は扉を開けてパーティ席に座る。


 隣を見ると驚きの光景だった...

チアキの他にミルキーが座っていたのである。


 私は祖父を見た。祖父ジョセフは目を逸らす。次にミルキーの父を見る。ミルキーの父も目を逸らした。


「おいおいおい!! 一体全体どういう事だ〜?」


「別に貴方なんか好きじゃないんだからね」


 実は、ルミナス侯爵の寄親が、ミルキーの父親である、ベアトリクス公爵なのである。


 つまりベアトリクス公爵家も、我がルミエール伯爵家の寄親に当たる。


 ベアトリクス公爵は娘のミルキーに甘い。

ミルキーが恐らくは、ベアトリクス公爵と祖父ジョセフを脅したのであろう。


 なんて無茶苦茶なお転婆娘であろうか...


 しかし、こうなれば、逆に私は断れないのである...


ミルキーはしたり顔で、パーティ席に踏ん反り返っていたのであった。


 こうして、私は十二歳にして、婚約者を二人も授かる事になった。

気に入って頂けたらブックマーク登録及び評価お願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ミルキーの愛情表現が重い……(^_^;) ツン9、デレ1のちゃんミルでしたね。 [一言] どうぞ、ご自愛下さい。 また、再開楽しみにしております。
2021/03/08 23:24 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ