3話
「おーい、おーい。」
「こいつ死んでるのかなぁ。」
「こんな所で死なれても困るけどなぁ。」
何人かの会話の声で俺は目が覚めた。木々の間から溢れる日差しが眩しい。どうやら、俺は森の中にいるようだ。また、俺は夢の中に迷い込んだようだ。そんな俺の顔を二人の少年が覗いてくる。
「お。目が覚めたか。」
「良かった、良かった。こんな所で死なれても困るしな。」
「どうも。お陰様で。」
そう言いながら俺は立ち上がった。お尻についた木の葉を取り払いながら。三人ぐらいかなと思った人数は正確には二人であった。銀髪の子と赤髪の子 がそこには立っていた。小学六年生だろうか。なんとも可愛らしい様子である。二人ともリュックサックを背負っており、そこには旗が突き刺さっている。
「カサブ、タ?」
赤色の旗にはそう書かれていた。
「お。お前。言葉が読めるのか。さぞ良い家の出なのであろう。俺は残念ながら読めないが、おじぃちゃんが似たようなことを仰っておったぞ。」
銀髪の子が少々驚きながら意気揚々と話してきた。
「ちなみにここはどこなんだい?」
俺は単純に抱いた素朴な疑問をこの可愛らしい二人の少年に投げかけた。夢の中とはいえ、十分に夢を楽しむのにはこの場所が何処かくらい把握するのは大切であろう。
「そんなことも知らずにココで寝ていたのか。ここは聖なる森だ。アスカレイド王国の中では外れも外れの森だ。おじぃちゃんが森に何か気配がするから見に行ってこいと言われて来たら、このザマよ。」
どうやら、ここはアスカレイド王国と言うらしい。今回の舞台は日本ではなく西洋風の国のようだ。地理に関しては疎いが、アスカレイド王国なんて聞いたこともないから、夢独自の国なのであろう。西洋系の夢も悪くない。西洋の女の子はプルンプルンで美しい人が多いし。これは楽しみだ。
「そんなお兄ちゃんはどこから来たんだい?」
「俺はアスカレイド王国のミカルダ町から来たぜ。」
日本の東京から来たって言ったって通用しないのがこういう西洋系の物語ではお約束なので適当な嘘をついておいた。
「おおー!ミカルダ町か!やっぱり、お兄ちゃんは貴族の出なんだな!これはみんなに紹介しないと。」
あ。あるらしい。こういう時の勘ってやっぱり当たるんだよな。赤髪の子の目は珍しいものを見つけたかのようにキラキラと輝いている。
「ま。そういうことだ。ちなみに君ら二人は名前はなんていうんだい。」
「そういう個人情報を聞く時は、まず自分の個人情報を開示するのが礼儀だよ。」
銀髪の方がニヤニヤと自信満々に言ってきた。
「あぁ。分かった。まぁ言う通りだな。俺の名前は快斗だ。」
「カイト?あんま聞き慣れない名前だね。やっぱ、貴族って名前から違うんだね。じゃあ、礼儀には礼儀で返すとして。俺の名前はシルバー。んで、弟のコイツはレッド。俺たちはすぐそこの村の住民さ。身分はそんな高くはないけれど、よろしくな!カイトは貴族と言っても、俺たちはカイトの命の恩人なんだから仲良くしてくれよな!」
「お、おう。たしかに命の恩人だな。よろしく。」
俺の右手はシルバーと、左手はレッドと握手した。
それにしても、名前が髪のまんま過ぎて笑える。