1話
俺は大学四年生だ。これ以上もこれ以下もない。日々携帯を眺めているそこら辺によくいる大学生だ。こんなことを掲示板にスレを立てて語っていようならば、就活をしろ、ゆとり乙といった罵声を喰らいそうなものだ。ただ、俺は確かに四年生ではあるが六年制大学に通うよねんせいであるから、就活しろとか言うのは的はずれな部分がある。まぁ、ゆとり乙という事実には変わりはないのだが。といっても、ゆとり乙という言葉に対してもやや違和感を感じる。ゆとりがある人間が良いに決まっているだろう。一生懸命物事に取り組むことを特に日本においては美化されるが、それは正しいことなのだろうか。君は「ゆとりを持って、物事を成し遂げる人」と「一生懸命頑張ったけど、何もなし得なかった人」、どちらが社会的に認められると思う。多くの人が後者を選ぶ。まぁ、日本には古来から「一所懸命」という言葉が根付いているのでしょうがないのかもしれないが。日本で生きていく上では通用するかもしれないが、世界は日本だけではない。諸外国と戦うにはプロセスを多少犠牲にしても結果をお文字なければいけないと思うけどね。(みんな分かっているとは思うけど。)と、言った感じに僕は揚げ足を取ることが好きだし、口だけは一丁前だ。それこそ、社会では通用できない人間だと自分でも思う。こんなにしょうもないことをべらべらと話せるのも今が春休みだからだ。と言いたいところだが、分かっての通り、いつもこうである。
と、見せかけてのこれは現実逃避である。うん。絶賛俺は牢獄なうなのだ。うん。ゴブリンが二匹も目の前にいる。あ、目があった。
「お。とうとう目を開く気になったか。」
緑の小太りゴブリンが首を傾げながらそう息巻いてきた。単純に気持ち悪い。特に目が。
「あ。はい。おはようございます。おかげさまで目が醒めました。」
「そりゃあ、よかった。で、おまえは誰なんだぁ?ウチの第二駐屯地を爆破してくれてよぉ。」
顔を近づけてきた。臭い。そして、僕には何を話しているか全く理解できない。
「なんのことでしょうか?」
「おい、兄貴。こいつ、とぼけたフリしてるぞ。どうする?」
「バカ弟。そんなにそいつに近づくな。怖くないのか。この第二駐屯地を破壊したやつだ。何されるか分からないぞ。」
「お。兄貴ぃ。怯えてんのか。俺がこいつから力づくで聞き出してやるよ。」
「殺られても知らんぞ。親方様がなんとおっしゃられるか。」
なんとなく状況を理解した。ここは夢の中だ。いや、違う。最近流行りの異世界転生かもしれない。そして、俺はこの世界の救世主ってわけだ。そして、救世主の俺はこの世界の悪党どもの拠点を破壊して、世界を救おうとしているところなのだ。理解、理解。
「なんだ。臭いなぁ。チビの雑魚のゴブリンが俺に話しかけてくるな。俺を誰だと思っている。かの女神様に愛された魔道士 ザビエル様だぞ。おまえらなんて俺の特Aクラスの詠唱魔法で一発だ。」
救世主というわけで威勢よくそう叫んだ。
バンッ。
「あ。」
ゴブリンが右手に持ってる銃から煙が出ている。で、俺の胸辺りから血がにじみ出て、シャツが徐々に汚れていく。
「おい、兄貴やったぞ。魔道士を殺ったぜ。」
そう話すゴブリンの声が遠のいていく。どうやら死んでいくようだ。