リョク君 仕事を決める。
「それでですね、さっきの授業でリョク君の魔法に関する知識と実力は問題ないと解りました。」
「棒術と体術も及第点です。」
「じゃあ~、修行は終わりかなぁ~?」
ドライト様とオフィエルさんにフル姉さんはそう言うと、僕を見てくるのだった。
「戦闘訓練は終わりでも、生活に関することを教えるんじゃないのか? 俺の時と違ってな!」
「吹き飛ばされたからって拗ねないで下さいよ、面倒ですから。」
「お、お前な!?」
戦闘訓練が終わったあと、僕達は夕飯にシチューを食べながら今後のことを話していた。
「何故か眷族のケンさんが拗ねていますが、リョク君の生活に関することで何か意見でも有るのですか?」
そう言って日本酒をあおっているケンさんにドライト様が質問をする。
ちなみにこのケンさん、ドライト様の眷族で武神や軍神のような立ち位置の人だそうだ。
それに元々は僕と同じ地球の出身なのだそうだが、ドライト様に認められて神となった人なんだとか。
そしてきつそうに見えるけど棒術とかの戦い方とかを僕に親身になって教えてくれた、優しいお兄さんだ。
「そんなことだろうと思ったよ……ドライトもだけどオフィエルにフル、こいつを見てみろよ。
どっからどう見ても冒険者になって魔物をガンガンとぶっ殺す様なやつに見えないだろ?
じゃあこの世界、メテカトルでどうやって生活していくんだ、転生でなく転移させるなら身内は居ないはずだからまっとうな職に就くのは難しいだろ?
じゃあ生活費とかはどうするんだ。」
ケンさんの言葉を聞いて僕もハッとする、このままドライト様達と楽しくすごしていけると考えていたけど、ドライト様とその眷族のオフィエルさんやケンさんにフル姉さんは神としての仕事をするために、去らなければならないのだ。
そして残された僕はまだ12歳の子供だ。
この世界では15歳で成人として認められるけど、早い子だと10歳から働いたり、修行に出る子もいるとこの世界の常識として教えてもらっていた。
そんな世界に12歳の僕が放り出されたら……ケンさんはそんな僕のことを心配して言ってくれたのだろう、そっぽを向いてるけど本当に優しいよね。
「それなら大丈夫です、この私の宝物庫と繋がった魔法袋を持たせるので、お金には困りませんよ!」
「お前な、それをセレナ様が許すと思っているのか?」
「私が姉としてついていくから~大丈夫~!」
「それこそダメだろうが!」
ドライト様とフル姉さんの提案はケンさんに却下される。
ちなみにセレナ様と言うのはドライト様の母親だとのこと、ドライト様のお母様なら立派な方なんだろうなってケンさんに言ったら、ケンさんはあいつに似ずに真面目な方だが……凄い怖い方でもあるから気をつけろとの事だった。
何にしろケンさんはそんなセレナ様の名前を出してダメだと言い、ドライト様もフル姉さんも反論できないのか顔を見合わせている。
「……盲点でした、リョク君が魔物を殺しまくってお金を稼げるとは思えません。」
オフィエルさんにもそう言われるが、僕は1つ思いついたことが有ったのでその事をドライト様達に提案してみる。
「あ、あのドライト様、この間に習った話と僕のスキルでなれる仕事が有るんですが……それを目指してみても良いですか。」
「リョク君はなりたい仕事が有ったのですか? ならどんどん言ってください、その仕事につけるように私もサポートするので!」
「あ、ありがとうございます!
それじゃあですね、この世界にはお医者さんも居ますけど、庶民の治療は薬師の作ったポーション等で治療を行うのが基本だと聞きました。」
「そうですね、お医者さんの治療魔法等の方が確かですが、高くなるので庶民の方は病気や怪我の回復にポーションを使うのが一般的です。」
「なら僕は……薬草学等を利用して薬師になって、みんなのために色々な薬を作って生活していきたいです!」
僕がそう言うと、ドライト様は嬉しそうに何度もうなづきながら言う。
「なんて、なんて志の高いことを言うでしょうか! どこかの大工になりたいとか言いながら、ハーレムを作って女の事しか考えないクズとは大違いです!
それにリョク君のスキルなら治療師や薬師に向いています!」
「さすがはリョク君です、素晴らしい考えですね! 本当にクズとは違います!」
「弟よ~見直したよ~! あとクズってケンの事だからね~?」
良かった、ドライト様もオフィエルさんもフル姉さんも賛成みたいだ、でもケンさんがクズってどう言うことだろ?
「て、てめえ等な、マジで俺を怒らせるなよ? 色々とセレナ様にバラしたっていいんだからな?」
クズ呼ばわりされたケンさんがそう言ってドライト様達を睨むと、オフィエルさんとフル姉さんが顔を背ける。
だけどドライト様だけはそんなケンさんにあっかんべーをしてから僕に言ってくる。
「私には母様に知られて困ることは有りますが、ケンさんに言わせないことぐらい出来ます!」
それは止めた方が良いんじゃ……バレたらもっとお母さんに叱られちゃうんじゃないかなぁ?
「何にしろリョク君のカリキュラムはそちら方面の強化にしましょう!」
ドライト様にそう言われて、僕の将来が決まったのだった。
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