異世界キャンプ
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「ファイヤァァァ!」
テントを張ってご飯の支度をして、ドライト様と僕は今、キャンプファイヤーをしていた。
ただドライト様、ファイヤーダンスはキャンプファイヤーとは別のものだと思います。
両端に火の着いた棒を振り回して雄叫びを上げるドライト様を見ながら、僕はそう思うのだった。
「ふぅ……あ、カカオドリンクをどうぞ。」
「……美味しい、これは?」
「カカオすり潰して液状にしたカカオドリンクです。 チョコレートドリンクとまた少し違って、なかなか美味しいでしょ?
それでですね、まずはリョク君には今後はこの世界に転生するか転移するか決めてください。」
ドライト様はそう言いながら焚き火で炙られている川魚と、小麦を練って木の串に巻いた棒巻きパンが焦げないように手を入れている。
「転移か転生……」
「はい、転移か転生です。 違いは分かりますよね?」
僕は軽くうなづきながら考える、ネット小説とかだと転移はこのまま異世界に、転生は異世界に新しく生まれ変わるってことだよね?
なら僕は……
「転移でお願いしても良いですか。」
「理由を聞いても?」
「僕は確かに死んじゃいました、でも記憶を持ったままで転生して、新しいお父さんやお母さん、兄弟や姉妹を持ったとしても本当に家族だと思える自信がないんです。
なぜなら僕には立派で尊敬できる両親と、厳しくも優しい姉さん達がいるのだから。」
僕の言葉にドライト様は軽くうなづくと、僕の顔をしっかりと見ながら言ってくる。
「分かりました、あなたはこのままの姿でこのメテカトルに住むということですね。
それでは当分はキャンプしながら良い場所を見つけて、そこを拠点に修行をしていきましょう!」
ドライト様がそう言うので僕は少し驚きながら聞いてみる。
「ドライト様も一緒にこの世界に住んでくれるのですか?」
「残念ながらそれは難しいのです……私も転生や転移を勝手に司る仕事がごく稀に有りますし、妹達のお世話や奥さん達の相手をしないといけないのですよ。」
「は、はぁ……残念です。」
「ただ、あなたを放り出すようなマネはしませんよ。
私にできうる限り、この世界で生活して生きていけるようリョク君に色々と教えてあげます!」
「ありがとうございます!」
「何にしろ今夜は、キャンプを楽しみましょう!」
ドライト様はそう言うと、用意したベーコンや焼いている川魚に棒巻きパンを手に取る。
「飯ごう炊飯でご飯を炊くと美味しいって、育花姉さんが言ってましたけど、こういうパンも美味しいですね。」
「そうでしょうそうでしょう、そちらのバターやジャムを塗ってそのまま食べたり、炙って味を変えても味が変わって良いですよ。」
「……モグモグ本当だ、軽く炙るだけでこんなに違うんですね!」
「明日のお昼は飯ごう炊飯にしましょう、あ、そちらのお魚は食べ頃ですよ!」
「これですか? ……美味しい!
塩だけなのに、すごく美味しいです!」
「この世界は食生活はあまり変わりませんし、動植物も地球とあまり変わりません。
違いと言えば魔物化した動物や定番のスライムにゴブリンとかのモンスターがいるぐらいですね。」
「あ、やっぱり魔物がいるんですね……」
「まぁ異世界物の定番ですから。」
そんなことを話ながら食事は進み、コーヒーを飲みながらマシュマロを火で炙り始めたところで僕は気になっていた事を聞いてみる。
「あの、それで僕は今どうなっているんですか?」
「え? どうなっているって、何がですか?」
「僕は死んじゃったんですよね? それに、さっきの手紙を届けてくれた時の映像に、死んじゃった僕が映ってたじゃないですか……じゃあ、いまここに居る僕はなんなんだろうって思って。」
僕がそう言うと、ドライト様は「ああ……」っと言いながら教えてくれる。
「地球のリョク君は魂が入っていません、ここにいますからね。
つまり脱け殻みたいなものですよ。
そしてここに居るあなたはクローンです、あなたの髪をちょろまかしてきて培養して作りました。」
「ク、クローン……あれ? でも普段より息苦しくないですし、あんまり疲れないです。 なんでだろ。」
「それは私の何だかよく分からないえたいの知れない力で、ちょっといじってありますから。」
「えたいの知れない力!?」
僕の体はどうなっちゃったの!?
そんなこと考えてながら、自分の体を確認するようにペタペタと触っていると、ドライト様が話しかけてくる。
「あなたの体をこの世界に合うようと、少しでも戦えるように少しだけ手を入れさせてもらいました。
これは先ほども言いましたがこの世界には魔物がいますし盗賊なども出ます。
そう言ったものから戦うだけでなく、最悪逃げられるだけの体力や運動能力が有る体にしたのです。」
「僕、ぜんぜん運動が出来なかったから嬉しいです。
ドライト様ありがとうございます!」
僕がそう言うと、ドライト様はニッコリと笑いながら続ける。
「ただし、身体能力が向上しただけで強くなるわけではありません。
プロのサッカーや野球の選手達だってそうでしょう? 長年の鍛練によってプロになれるのです。
そこでリョク君には私が体術に武術、魔法や魔術に錬金術や採集などの実技を教えて差し上げますよ!」
ドライト様は右手を突き上げて、そう宣言すると座り直して。
「まぁ今はこの焼きマシュマロを優先させますが!」
そう言ってマシュマロをパクンと食べる、それを見て僕もマシュマロを口にするのだった。