006
「君は宇宙人って信じる?」
彼女はいつものようにぼくの目を覗き込むように言う。彼女は彼女の親友のことを話して以来、そのことについては触れることはなかった。まるでその話をしたことはなかったかのように次の日からはいつもの彼女に戻っていた。ぼくもその日のことは夢だったのではないかと思うくらいだ。だがぼくもそのことには触れない。触れる必要はない。このように彼女との会話が続けられればいいのだから。
「うーんどうだろう。でもいた方がおもしろいとぼくは思うな。」とぼくは答える。
「私は信じる。いないわけがない。」
彼女はいつもどうりだ。自分の意見に絶対だ。
「宇宙って私たちが想像できないほど大きいものなのよ?私たちの住むこの星なんてその広大な宇宙と比べたら、いえ比べることさえできないわね。それくらい宇宙は大きいのよ。そんな大きい宇宙で生命が私たちだけなわけがない。」
「確かに。じゃあやっぱりよく見るUFOの映像なんかは本物なんだ。」
「あれは偽映像に決まってるでしょ。宇宙人が不用意に私たちに姿を見せるわけないじゃない。」と彼女は答える。
「でもなんかアメリカは秘密裏に宇宙人とのコンタクトをとってるとか聞いたことあるよね。」
「それも嘘ね。そんなの宇宙人にとってなんの得もないもの。宇宙人が既に地球に来てるかどうかは私もよくわからないけど、仮に来るとして彼らはなんのために地球に来るのだと思う?」
「うーん友好を深めるためとか?」
「違うわ、侵略に決まってるでしょ。私たちがまだ宇宙人を発見できてないのに対し、彼らは私たちを見つけ、地球まで来ることができるのよ。その時点で友好を深めることなんか無意味なくらいに文明の差ができてしまってるの。そこにあるのはかつてのヨーロッパ人によるアメリカ開拓のような一方的で圧倒的な侵略よ。地球は植民地となり、私たちは奴隷となる運命なのよ。宇宙からコロンブスがやってくる前に私たちがコロンブスにならない限りは。」
彼女はまたいつものように楽しそうに話した。これでいいのだ。ぼくと彼女はこのようにくだらない話ができるだけでいい、お互いのことを知らなくてもいい。ぼくがこんなにも人と話していることを楽しんでいるのは久々だった。




