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「その人がいい人かどうかって、それを評価する人によって変わってくると思わない?」
「どいうこと?」
ぼくは購買のパンを片手に彼女に聞き返した。ぼくは毎日購買でパンと紙パックのジュースを買い、こうして彼女と話ながら食べているのに対し、今日も彼女は昼休みにもかかわらず何も食べていない。
前に一度、昼休みなのに何か食べないの?、と聞いてみたところ、女の子なんだからダイエットに決まってるでしょ、といわれた。彼女はダイエットが必要なほど太ってなんかいなくむしろスマートな方だと思うのだが、男性と女性自身では理想の体型が違うと聞いたことがある。彼女はまだ自分の体型に納得がいかないのだろう。また、ぼくは女性に、今でも十分キレイだと思うよ、なんて言える男ではなかった。
「その人がたまたま良くしてくれたからいい人だと思っただけで、他の人にはぞんざいな態度をとってるかもしれないじゃない。それだとその人のことをいい人だと思う人はその人に良くされた人だけでしょ?」
「なるほど、確かにそうかもしれない。」
「よく浮かれた女が、彼はどんなことよりも私を優先させてくれるの。彼は本当に最高よ、って言ってるけどそれは彼がその女以外はどうでもいいと思ってるってことでしょ?彼が最高の人だと思ってるのはその女だけよね。」
何か彼女の言い方に多少の毒が混ざっているような気がするがまぁ言ってことはわかる。ただその"女"がある特定の人物ではないことを祈るばかりだ。
「本当にいい人になるには誰もがその人をいい人だと認めなきゃいけないわけだけどそんなの無理よね。誰にでもやさしくなんてできるわけないもの。誰かに優しくするには誰かを犠牲にしなきゃいけないの。」
彼女の言うことは一見めちゃくちゃのように感じるが、何故かぼくは彼女の話に惹き付けられる。ぼくはこの毎日昼休みにこの屋上でする彼女との会話が学校での唯一の楽しみとなっていた。




