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3.今週の運気は最高 でござる

「我が商会が独占買い取りさせていただく代わりに、討伐したのは名も無き戦士という事にいたしましょう!」

「それは助かる。拙者は山派松太郎と名乗ろうと思う」


「ヤマハ……様ですか?」

『いえ、スズキ・ジェペル之助でお願いします』

「ヤマハでござる!」



 紆余曲折あったが、ルカス殿は荷馬車の一つを空けて、レッドマン氏の死体を乗せる事とした。乗っていた荷物は近くに埋めて、後日取りに来るという。

 盗賊などに取られたら勿体なくないかと聞いた所、ドラゴンの素材丸々に比べれば駄菓子程度の価値にしかならないとのこと。


「イオタ様……じゃなくてヤマハ様。ドラゴンの鱗で鎧を作りませんか? 貴女にはその権利がある」

(ドラゴン)鱗鎧(スケイルメイル)です! 虎鉄作の鎧より何倍も価値があります! 国家的お宝クラスですよ!』


 ミウラの勧めもあるが、荒事は避ける方針なんだがなー。


「細かい鱗が採れますから、ビキニアーマーだって作れます」

『是非お願いします!』


「ビキニってなんだ?」

『いえ、大した意味はございませんよ』


 横を向くミウラ。これ! 某の目を見て話をするでござる! 


「拙者、ヘラスに安住できたら刀を捨てるつもりでござる。鎧は無用にござる」

「どうして!? 赤竜を単騎で倒す実力がありますのに! レベルで言えばSSクラスなんですよ!」


 ルカス殿が目を剥いて驚いてる。

 おかしいな? 某の実力はベルリネッタ姫を下回るのだが?

 まあいいか。


「色々あってな。刀を持ってるのは、あくまで身を守る為でござる」

 もう刀を振るうのは……二人ばかり私怨があったッ!


「ウラッコとエランを斬れれば満願成就! 今すぐ刀を神仏に奉納するでござる!」

 メガロード山に向かって叫んでしまった。


「……そのお二人に恨み辛みがございますか?」

「うーん、もはやどうでも良いと思うときもあるが。エランは一度斬ったしぃ!」

「ほう! お斬りになった?」


 男の子は幾つになっても血湧き肉躍る話に夢中でござる。


「彼の者らとは因縁がござってな。特に黄色いの。必ず斬る!」

 奥が噛みしめギリリリリッ!


『まだ拘ってたんですか? デイトナ嬢に嫌われますよ。ウラッコは別として』

 かっこつけでござる! 武士は体面が何より大事でござる! 某、腐っても武士でござる!


「あのかっこつけ中年!」

「ほほう、中年!」


「あの時は下に鎖帷子を着ておったので致命傷は与えられなかったでござるが、拙者との腕の差は歴然でござる。あとウラッコ! こやつは八つ裂きにしても腹の虫が治まらん! 話してたらだんだん腹が立ってきた! 白刃取りの弱点は二刀でござる! いまからちょっと斬りに行ってくる!」


「お待ちください!」

 立ち上がった所、ルカス殿に腕を引っ張られて止められた。


「エランと、それからウラッコ? なる者は手前共で探しますから、まずはヘラス王国へ! 歓待致しますよ! 良い働き口もございます。是非紹介させてください! こう見えて手前共はヘラス王室御用達を頂いておりますんで!」 


『伝手、みーっけ!』


「タネラという町で生活したいのでござるが、伝手はお持ちか?」

「なんと! 手前の故郷でございますよ! 青い海、美味しい魚。良い所でございます! そうです! 今回のお礼に家をご用意致しましょう!」

『バラ色の人生です』


「ルカス殿とは一生の付き合いになりそうでござる。ゴロゴロゴロ」

「ゴロゴロいただきました! 身代掛けてお付き合い致します!」


 もうね、ヘラスに入る前から楽園の生活が約束されました!




 そんなこんなで、赤竜を荷車に積載する作業が済んだ。結局二台連結することになった。

 商隊の者達は、忙しく走り回っている。

 大変そうだが、皆の顔は明るい。


「竜一体ともなれば、巨大な利益を産み落とします。そりゃ働きがいがあるってもんですよ! 町へ入れば拍手喝采注目の的! 竜を運んだだけで一生物の名誉! 我が商会は大きくなります。どれもこれもイオタ……ヤマハ様のおかげです!」


 金もさることながら名誉欲を満たしてくれるということか。ましてや、この竜は悪名が高い。感謝感激雨霰!

 気分は、鬼退治して凱旋する桃太郎でござるか!?


「おい! そこのネコ耳の小娘!」

 渋々振り返ると、若い冒険者が挑戦的な目で某を睨んでいた。


 めんどくさそう。まるで初めてエランにあった場面そのままでござる。


『オールバックで、年の割に額が後退してて、ヴァンテーラ伯爵に雰囲気が似てますね』


 剣がギリギリ届かない距離。僅かに落とした腰。できる! そこそこに。


 ()の者の後ろ。彼の者の剣が届かぬ位置で、ニヤニヤ笑ってる冒険者が数名。この者達に悪意は無い。血の気に逸った子犬が吠えているのを微笑ましく見見守っている風情。


「あんた、できる口だろ?」

 無造作に一歩踏み込んで来おって――


 斬りかかってきおったわっ! 


 鞘から半分だけ出した刀で、若造の放つ剣を受ける。


 こやつ、本気で某の胴を薙ぎ払うつもりであったか!? 頭大丈夫か?

 鞘だけを後方へ抜き取り、見た目完全抜刀!

 剣に刀を這わし、相手の動きをいなしながら、切っ先を若造の喉に近づける。


「な、なんだ、いつの間に抜いた?」

 加速なんか使ってないのだが?


「これが見切れぬ様では、長生きできぬでござるよ!」

「なんだと!」


 ムキになって体を突き出してくる若造。

 バカ! 切っ先が刺さるぞ!


「いい加減にしろ! このくそガキ!」

「へぶっ!」

 若造がどつかれた。

 四人がかりで袋だたきにされている。槍の石突きで小突いてるのもいる。


「こいつ、端っことは言えAクラスなんだが。やっぱ強えぇな、イオタさん。俺が責任を持ってこいつの根性を鍛え直すから、許してやってくれねぇか?」


 厳つい顔の冒険者達がハの字眉で笑っている。陽気な笑顔だ。


「それだけで刀を鞘に収めよと?」

 必至に練習して習得した「片眉上げ」を披露する。

『同時に片方の耳も折れてますよ』


「町に着いたらジュース奢るから」

「そういうことなら」

 にっこり笑って納刀した。


「なんだか惚れちまいそうだ!」

「拙者に惚れると火傷をするぜ!」


 一生に一度入ってみたい言葉上位十個の内の一つでござる。


 こやつ厳つい顔だが、笑うと子供っぽくなる。気に入ったでござる。

 あとは、ワイワイガヤガヤ。皆とは一気に仲好しになった。

 どうやら、某の事を気むずかし屋さんだと思っていたらしい。



『ここに来て運が急上昇です。そういや旦那、ストラダーレ・ライフルを装備して戦闘力が上がったことですし、雪崩から村を救ったし、ドラグリアと調停に成功したし、必死の石化から回復したし、竜を退治したしでレベルが上がってませんか?』


 レベルって鍛錬せずに上がるものなのか?

 では一発、己に対して心眼!



種族:(いにしえ)よりのネコ耳族(黒猫)

性別:女

武力:三十五(補正 追加加算十五可能)

職業:ネコ耳族の勇者

水準:甲・加算二

性癖:女・開拓者

運 :一


 ……え?

『数値がバカ上がりしてる?』





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