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1.ぱわーあっぷ でござる


 バサ、バサ、ブワサ!


 意にそぐわぬ空の旅でござる。


 聖竜ディーノ殿が、某を掴んで空を飛んでるのでござる!


 上も下も右も左もグルグルでござる。普通、目が回って吐瀉物を一合でも吐き出しそうなものでござる。

 吐き出さないのは目が回っていないから。目が回らないのはネコ耳族であるから桶屋が儲かる。


『旦那、イオタの旦那! これからの道が見えます。はるか向こうに見えるメガロード山を抜ければヘラス王国です!』


 妙にはしゃいでいるのは、チャトラネコのミウラ。もうすぐ二才『満1歳です』になるネコだ。


 かような高い空からでもメガロード山の偉容が見て取れる。

 富士のお山に似た形。おしむらくは、七合目当たりからスッパリと切り取られたような形をしている。

 それでも山々の中から、天に向け突きだして見えるその高さよ!

 

「アレを登るのか?」

『まさか! 脇を通り過ぎるだけですよ。あんなのいちいち登って行くんだったら、ヘラスは陸の孤島と化して滅亡してますよ』


 それもそうだ。先ほどまで緊張に次ぐ緊張だったからな。頭が勝手に休憩に入ったのだろう。頭が上手く回らぬ。


『山脈を二つばかり越した。この辺で良かろう』

 ディーノ殿が降下を始めた。


 戦場よりさらわれ、斯様な山道へ放り出されるのでござるよ。


『なに言ってんスか? 10日近くの日程をパスできたんですよ! 感謝しなきゃ!』


 バサリと一つ大きな翼音を立て、ふわりと地に着いた。


「うー、ふらつく」

 足元不如意でござる。


『ここでお別れだ』


 ディーノ殿とはここでお別れか……。


『これより先は、我の生活圏から離れる。よって以後、会うこともまず無かろう。……面白い事したらこっちから会いに行くかも知れぬが』

「面白いことなぞ起きないでござる!」


『ディーノ様、半年お待ちください。素晴らしい冒険譚をご用意して見せましょう!』

「ミウラ!」


『半年後を期待しておるぞ! そうだ、よい子のミウラにプレゼントを進ぜよう。ほれ!』

『おあっ!』


 ミウラの体が光り、粗い絵のように変貌した。

 石化を解かれるときの某のような変化でござる!


『違う世界の神が、世界を跨いで手を下したのだろう。あちらこちらで不具合が見られる。魔法に対応しやすいよう、少しばかり手を加えてやろう』


 言ってる間に、ミウラは元の姿に戻った。


『さすができる竜は違う! 有り難うございます! 真・ミウラ爆誕! なんだか強くなった気がそこはかとなくします! これで旦那の無茶にも少しは付き合えそうですね!』


「あ、ミウラだけズルイぞ!」


『名残は惜しいが、そろそろお別れだ』


 ディーノ殿がふわりと浮き上がった。


「ちょっと待つでござる! 拙者にもぷれぜんとを!」

『できる我は石化解除の時、施しておいた!』


「どこが変わったでござるか!?」

 ワクワクでござる!


『剣を扱いやすくする為、手足の肉球をより柔らかく、より強靱に!』

「待つでござる! 待つでござる!」


『もう一つ。肉球をさらに良い匂いがするようにしておいた。なに、礼は要らぬ』

「待つでござる! 待つでござる!」


『イオタとは一度手合わせをと願っておったが、せんないこと。さらばだ!』


 ディーノ殿は、北の空へと飛び立った。


 あんまりでござる! 肉球が……あ、香ばしい。


『まあまあ、もう戦わないんでしょ、旦那? だったら手先が器用になる一助になる肉球の改良は良いことじゃないですか! あ、香ばしい』


 考えようによってはそれも有りか。


「そ、そう思うようにいたそう」


 都合の良い木陰に入り、着替えた。

 いつもの筒袖と袴だと、山歩きしにくいのだ。


 異世界では定番の旅人の服・山岳地帯改訂版。それにちょいと改良を加えた。お尻に鹿皮を垂らした山伏型。尻尾を出すから下の方への取り付けとなった。


『見ようによってはローライズ。至高れますね』 


 腰に刀は定番でござる。


「さて行くか」

『日が暮れる前に次の町へ入りましょう。上から見ていた所、坂を下った場所にありました』


 うむ、某も見ていた。


 左手に薄く森が広がり、右手は崖っぷち。

 山々の向こうに遠くメガロード山を望む。ああイセカイよ、絶景なるかな!


「では、ヘラス王国タネラへ向けて出発! でござる!」


 早速、大岩の影を回り込む。

「ん?」


 赤い大きな物体。

 目つきの悪い?


 出会い頭で目と目が合った。ヤクザもんみたいな目をして某を睨んでおる。


『……赤い竜? ディーノ氏、幻の赤バージョンですね、わかります』

「ああ、赤ディーノ殿」


『さっき手合わせがどうとか言ってましたね?』




 赤ディーノ殿が火を噴いた。

 

 

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