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*水着審査会2

 夏季休暇(さまあばかんす)季節(しいづん)が始まる今日この頃、皆様におかれましては如何お過ごしでしょうか?

 さて、水着審査会当日。

 海上旅籠(ほてる)、その名も星屑隼(すたあふぁノレこん)弐号! 新装開店のこけら落とし、水着審査会でござるよ!


『横文字は大体合ってます。腕を上げましたね、旦那!』


 ふんすふんす!

 某の鼻息でござる!


『完全新調した海上ホテルはひと味違いますぞ! ふんすふんす!』

 ミウラの鼻息でござる。


『星屑隼初号は二隻の中古船をつなげて、屋根を付けた、いわば改造船!

 新造致しました弐号は設計から見直し、わたしが前足取り後ろ足取り、携わった完全新調。異世界に二つと無い特務船でございます!

 上から見ると、尻尾が二つに割れた水滴型。丸い屋根でつなげた、安定性に評価が高い双胴船でございます!

 投影図は、縦に伸ばしたスター・ファノレコン号を上から見た絵にそっくり! まるで意識したかのよう!』


 そうそれ! ……すたぁふぁる……何とか号が、何かは知らぬがミウラが言ってるから一番わかりやすい例えなのでござろう。


『星屑隼弐号機は、えーっと、おおざっぱに言えば……、

 最下層がレストランと海への出入り口、そして船着き場。

 二階が客室と板張りのデッキ。デッキチェアーと、観葉植物を配置致しました。

 三階が展望台と休憩室。南国情緒溢れる木をぐるりと植えております。

 全ての階で、屋根を張り出し、日陰を多く作る工夫を致しました。

 船の左右の海面にはフロート付きロープで区切り、プライベートビーチっぽく致しました。

 改修なった一号船をくっつけるという拡張機能を持ちあわせております。

 海の上が不安というお客様! 海岸のすぐ側。泳いで行き来できるあたりにホテルを浮かべてございますので、安心し――』


「さて、お得意様である御貴族の常連様がお待ちでござる!」


 唾を飛ばし、明後日の方向を向いて喋りまくっているミウラを放置しておくとして――。


 こけら落としの催しに招いた御貴族様方が誇る美姫達(全てお妾。爆発しろ!)。


『パトロンの御貴族様方は、自分が囲う美女の自慢をしたいという欲望に溢れています。これって異世界では普通なんです。だから、なんら違和感はございません。風紀、風習におかしなところもございません!』 


 全員、贅沢な「水着」で着飾らせておられる。

 異世界の水着は、体の殆どを布で覆っておるのな!

 肘までの半袖。膝下の七分丈。

 せいぜいが縞模様とか、足下までの薄いどれすだとか、透けないよう、黒い布を巻き付けた姿だとか、工夫を凝らしておられる。

 全部が全部官能的でフンスフンスでござる! 


『異世界における海水浴とは、医療目的の潮湯治でございますからねぇ。水着ったってこんなもんでしょう。がっくし!』


「未来では如何様な水着が主流でござったかな?」


 ミウラは、そっそ耳元に口を持ってきおった。

 そして一言――。

『極楽』


 ふんすふんす! ふんすふんす!


『話を戻しましょう。物欲しそうな顔をしたって駄目です旦那。現地少年少女による海遊びとかけ離れております。なんとか現地の遊びに持っていきたいのですが、水着=エロの概念を切り離す作業が必至。今回の水着審査会はその第一歩です。コツコツと時間を掛けてバカンスの概念をこの世界に植え付けていきましょう』


 だ、そうだ!

 行事を官能、もとい……進行しよう。


 水着美姫の宣伝実演『デモンストレーションですね』をタネラの浜で行った。

 登録『エントリーですね』者数は五名。書類審査で選抜した五名の美姫でござる。

 全員、お妾さんタイプ。デイトナ殿に劣る事二段階下でござるが、皆様十分すぎるお色気の持ち主。五人揃ったその威力は、デイトナ殿一人分!

 町の人々の興奮、もとい、盛り上がり具合が良く判ろうという物。ちなみに一六禁でござる。


『期せずして色物のエロイベントになってしまいました。今年限りと致しましょう。タネラの品位が下がります』


 ならば目に焼き付けておこう! この世の天国として!


 一般人による投票を設けておる。一番多かった美姫に、審査員票相当一票を入れるものとする。

 こういった催しに参加する美姫でござる。世俗の機微を熟知しておる。奉仕精神に溢れた美女でござる。大量のうっふん、あっはんでござる。至高るネタ満載でござる!

 これが大盛り上がり。『しまった! 有料にしておくべきだった!』


「地元から金をむしり取るのはいかがなものか?」

『それもそうですね』



 

 予定の時間が過ぎ、いよいよ本戦。

 星屑隼二号機の船上にて。ここからは貴族の皆様だけによる審査となる。


 エランの様子がおかしい。そわそわしている。

 こやつは審査員の一人だ。依頼したら二つ返事で了承しおったわ!


「ふしだらなイベントではあるまいな? ってことで、私が直接見に来た訳だが。あー……」


 某に視線を向けたり外したり――


『こんな事もあろうかと、旦那に水着を着せておいて良かった。昭和40年代のワンピースですがね。陥落ですね』


 某が着ている体にピッタリ張り付く水着は、手と足だけが剥き出しになった黒の水着。前の「びきに」とやらはお腹とヘソが出ていたが、わんぴいすはそこを隠しておる。


 現世にて愛用しておった褌一丁に比べれば、裃の上に羽織を羽織っておるような重装備。

 この場で紋付き袴の正装は野暮でござる。むしろ水着が正装でござる。……と、ミウラが言っていた。


『体にピッタリしている点が違う所。ポリウレタンの勝利でございます』

 なにやらしたり顔のミウラ。これが通常の言動でござる故、安心して頂きたい。


「さて審査員の皆様! 準備はよろしいでござるかな? このデッキにおわします女性の誰かが第一回水着女王でござる。では投票をお願い致します!」


 某、司会でござる。「司会」と大きく書かれた腕章を付けておる。


『ピッタリフィットの黒いワンピースと、ネコ耳とネコ尻尾を組み合わせた破壊力は、東京ドーム23個分でございます』 


 美姫様方を紹介しよう。


 一人目が縞々の半袖に膝下丈。

 二人目が水に透けないワンピース。足首丈。

 三人目が体に黒い布を巻き付けたゲフンゲフンな御衣装。

 四人目が上下色違いの半袖、膝下丈。

 五人目は真っ黒の半袖、膝下丈!


 全員素足でござる!

 皆真白な肌。某のように日焼けなどしておらん!

 至高でござる! 今夜は至高れるのでござる! 


『どこが旦那らのツボなのかが解りません!』


 後ろにずらっと並んだのが各美姫のパトロン達が自慢顔で見守る中、審査員が票を入れていく!

 エランの指揮の下、投票得点が集計されていく!




「結果発表でござる!」


 司会者として、この場を仕切る。

 さて、審査委員長エランより渡された封書を開封。

 ドキドキでござる!


 二つ折りになった用紙を開く!


「発表するでござる! 優勝者は――」

 そこに書かれておる番号は!?

  

「――司会!」

 ……。


 え?



 エランが立ち上がった。


「満場一致で司会者、ネコ耳が優勝だ。おめでとう!」


 審査員から拍手。パトロンさん達からも拍手。水着美姫達からも拍手。


『どれどれ? 一般人人気投票1位、ネコ耳さん。審査員は、あらあら、全員がネコ耳さん。堂々と1位獲得でございますね! おめでとうございます』





 万雷の拍手の中央で某が叫ぶ。


「どうしてこうなった!」




『このなかで、最も扇情的な水着を召しておられるのがイオタの旦那なんですが、……はあ、自覚ありませんか? そうですか』 





……最近、ミウラの暗躍が多いと思われる件について……

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