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*シーフードチャーハン

その後の逸話です。

時系列、ばらけてます。

ドゾよろしく!

「この焼き飯。美味しいでござるな!」


 とある昼下がり。

 ミウラが作った人造人間(ごおれむ)が作った(ああややこしい)焼き飯を食している次第でござる。


『焼き飯じゃなくて、海鮮(シーフード)チャーハンですよ、イオタの旦那』


 腰まで伸ばした黒髪。某と同じくらいの背丈……の、ゴーレムの肩に乗っかったのがチャトラネコのミウラだ。

 ミウラのゴーレムは中華鍋を洗っている。


「このパラパラ感が何とも! むぐむぐ! 塩梅とか、脂っ気とか、海老とかイカとか、味が染み込んだ米とか! 至高の逸品でござる!」


 匙ですくって口に入れる。うまうまと噛みしめれば、口の中に広がる塩気と旨味。喉に流れれば鼻に香ってくる磯の香り。

 勝手に耳がピコピコ動く。尻尾もピンコ立ちでござる!


『ネコは、イカとかニンニクとかタマネギなんかを食っちゃイカンのですが、わたしは悪食のスキルを完ストしてますし、旦那は人族の雑食性を引き継いでいますから大丈夫なんですね』


 何となく、設定的に言い訳がましいミウラであるが、こ奴の料理の腕は、店出し級でござるからタチが悪い!


『というわけで、わたしもうまうま!』

「うまうま!」

『そんなにお気に入りなら、ご自身で作ってみますか? 中華鍋があれば簡単ですよ』

 

 

 

 

 

『って事が、5日前にあったのですが、あれからずっと田舎でスローライフしながらチャーハン作り続けるってどうよ、って件について』

「そう言わず、これを食ってみよ!」


 チャーハンをオタマでよそって皿に盛りつける。

 中華料理はどんな材料や調味料も、一つのオタマで済ませるから楽ちん『横着』だ。


『えーっと、評価しろって事ですね? では頂きます。むぐむぐ……ふむふむ』

「さあどうでござる?! 基礎チャーハン完全最終版は!?」 


 明後日の方向を見ながらモグモグと口を動かしているミウラ。そのチャーハン、初日と比べずいぶんと進化している。ミウラの腕を越えてしまったかもしれない、どうしよう!

 某の才能が恐い!


『美味しいですけどね。味が単調ですな。塩味と胡椒だけで、もうひと味欲しいですね』

「ぬぐぅー! シーフードチャーハンだったら負けぬわ!」


『では明日のお昼ご飯、シーフードチャーハン対決にしますか?』

「よかろう! 吠え面かかせてくれん!」


『ただで勝負するのも無粋です。勝った方が、負けた方にリクエストしたご飯を作るってどうですか?』 

「その賭け、乗ったでござる!」




 翌日。

 庭にコンロを二つ設置し、某とミウラのチャーハン対決が始まった。


 ミウラはいつもの人造人間(ゴーレム)に指示を出し、鍋を振るうつもりだ。


「フフフ、では勝負でござるよ!」

『僭越ながら、10年早ぇ! と申し上げておきましょうか!』


 料理開始でござる!

 チラリとミウラのまな板を見る。

 おジャコのように小さい海老だとか、焼き魚のほぐし身だとかが並んでいる。


 この勝負、某の勝ちでござる! 


 チャーハンは火加減や鍋の振りも大切でござるが、最も重要な要因は具材でござる!

 某、日の上がる前から市場を回り、高級食材を買い込んできた。

 アワビ、イカ、タコ、海老。もう一丁! カニを使う!


 鍋に油を回し、紫色の煙が出た頃を見計らい、炊きたてのご飯と溶き卵を同時に投入!

 チラリとミウラ陣営を盗み見る。

 同じように、釜で炊いたであろう炊きたてご飯を鍋に放り込んだところだ。

 材料をおおざっぱに放り込み、鍋を振っている

 調味料をパラッと振りまき、ひと混ぜふた混ぜ。鍋を火から下ろした。

 チャーハンは質素がよろしいと申すが、少々貧相すぎないか? ネコ故の慢心でござるかな? 某もネコでござるが?


 そっちが質素で来るなら、こちらはもう一工夫。

 レタスを千切って放り込む!

 フフフ、このシャキシャキ感が口に楽しいのだよ!

 アサリモドキで採ったダシ汁を鍋肌に回して鍋を振る。できあがりでござる!


「さあ、食いやがれでござる!」

『お互い、皿を交換して味を評価致しましょう。武士たる者、己の舌に嘘をついてはいけませんよ!』

「くどい! 武士に裏表はござらぬ!」


 ミウラのチャーハンに目を落とす。

 具材は少ない。でも米に色が付いている。深い所に付いた色だ。

 嫌な予感を抱きつつ、一口ぱくり。


 ……むぐぐ。


 並んでおっチョンしているミウラの顔を覗き込む。

 一口頬張って、おもむろに皿を押しのけた。――意味わかるよね? って顔しておる!


 ……負けたでござる!


 貧相なシーフードチャーハンに負けたでござる! 

 この深い味。米に染み込んだ海鮮の旨味。

 某のも美味いが、上っ面の味でござる!




 でもどうして? どうやって?

 あの味を出した?


『ああ、大したことはしてません。ただ、事前に用意したシーフード炊き込みご飯を――』

「ズルイでござろう!」

『おや? 反則ですか?』


 ……それは……有りでござる!


「くっ!」

 がっくりと膝を付く。

 その手がござったか……。




『では夕食をリクエスト致しましょううか? ウフフフ、楽しみですね!』

「くっ! 殺せ!」

『クッコロ頂きました』




 で、夕食の食卓には……

 某が作ったシーフード・レタス・チャーハンが鎮座していた。


『いえね、旦那お手製のチャーハンを食べたかったんですよ。いやー、贅沢ですね!』


 よく解らんが、ミウラが満足してればそれで良いか。


『うまうま!』

「うまうま!」





次回「水着審査会」


乞うご期待!

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― 新着の感想 ―
[一言] 元気な二人が見れて嬉しい 昨日初めて行ったラーメン屋で食べた炒飯がイマイチだった自分にはタイムリーな話
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