表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
115/164

20.この一発に全てを込めて! でござる

「情報を整理するとここに行き当たりました。急いで走った甲斐があったというもの。ホッと胸をなで下ろしていた所です」


 一対五でござる。敵は用心深い。弓の距離を保持している。


「推測致しますに――強大な魔力を使って、遠距離より攻撃。王宮城塞のバリアシステムを破壊するおつもりでしょう? ハイエンシェントネコ耳族は魔法でも侮れませんからね」


 見抜かれたか。


「私どもの勝ちですね。巨大な魔法を行使するには、精神の集中と魔力を練り上げる時間が必要と存じ上げております。この場で、私が時間稼ぎするだけで作戦は挫折する。そうでしょう?」


「フッ、それはどうかな?」

 エランの真似をして笑いながら、ゆっくりと柄に手を置く。


「イオタ殿は、フェラルリでドラグリアの矢に倒れましたね? その場の再現です」

 よく知ってるなー。


 ザッカルドが手を上げると、四人の騎士が前に出てきた。そして半弓を構える。

 あのときは防御に制限があった。でも今回は自由だぞ。 


「小賢しい!」


 某は八双に構える。

 ザッカルドが腕を振るう。

 四本の矢が同時に放たれる!


「加速!」


 加速の前では矢など止まって見える。刀で丁寧に打ち払いつつ、射手に迫る。 


 弦を斬りつつ四人の騎士を斬って捨てる。

 ここで加速が切れた。


 残りはザッカルドのみ! 既に剣の間合い!


「ザッカルド殿、御免!」

 必殺でござる。


「風よ!」


 ザッカルドの魔法か?

 風が某の頬を打つ。袈裟懸けは空振りに終わった。


 風で吹き飛ばされたのではない。風でザッカルドが吹き飛んだのだ。


「魔法とは、使い方次第で千変万化いたします。身体強化! 敏捷性向上! 守備力上昇! 攻撃力上昇!」


 ザッカルドが一言唱える度、気合いが高まっていく。魔法で己を強くしている。それくらい解る! 

 剣を二本とも抜くザッカルド。右手に長刀、左手に短刀だ。


「ンフフフフー! さあ、切り刻んであげましょう!」

 心眼で見るまでも無い。こやつ、変態でござる!


「風よ!」

 背中からの風に飛ばされ、瞬時に距離を詰めるザッカルド。


 魔法の発動を感じた時点で左後ろへ飛んだ。ぶっちゃけ、紙一重で斬檄をかわした。おっと、左手の二撃目もあったか!

 胴巻きに鉄筋を仕込んでなかったら、腹に達しておった!

 白瓢箪と思っておったが、なかなかに腕が立つ。エランと同じくらいか?


「遅いですねぇ。どうやらスピードは私の方が速いようです。これは問題になりませんなぁ」

 小刀をクルリと回し逆手に構える。長刀はそのまま、中段だ。


 風の魔法が厄介だ。際でかわしたら、風が当たってくる。体勢が崩れて付け入れられる隙が生まれる。

 どう捌く?


「風よ! 風よ! 風よ!」

 逃げる。かわす。よける!


「ふふふ、やはり私の方が速い。あと幾つかわせますか?」


 じりじりとすり足で間合いを調整。まずは良い足場を確保せねば始まらぬ。


『旦那! フルチャージ、準備完了! いつでも撃てます!』


 こちらも足場を確保できたでござるよ。


「第二加速!」


 加速に加速を重ね、ザッカルドの左へ入り込み、脇腹めがけ刀を這わす。


 ゆっくりと動くザッカルドであるが、さすがでござる。左の短剣を刀に合わせてきた。

 加速状態のまま、短剣を跳ね上げ、体をねじ込む。

 某の左手には、こっそり抜いた脇差しが握られている。逆手に持った脇差しをグイと伸ばす。


「必殺! エラン斬り!」

『とうとう必殺技に昇華しましたか!』

 ミウラさん? 某、現在加速中でござるよ?


 加速終了。


 ザッカルドは血しぶきを上げ、クルリと回って転がる。


「は、速い!?」


 ザッカルドが最後に口にしたのはその言葉だった。


『違うな。お前が遅いだけだ!』

 ミウラさん、格好いいとこ持っていったよね?




 息を整え、鉄砲『ストラダーレ・ライフルです』の用意に入る。


 命の別状は無くなったとは言え、ジーモ殿はまだ動けない。座ったまま、後方の監視だけをお願いした。意識があって声が出せれば上等でござる。

 国家の一大事、怪我人でもこき使わせてもらう。


 青い仄かな光を放つ魔弾を鉄砲『ストラダーレ・ライフルです』に装填。

 特製遠眼鏡に片目を当てる。

 王宮城塞をはっきり捉えたが、先ほどより揺れが大きくなっている。


『気温上昇による大気の揺らぎです。時間が経てば立つほど条件が悪くなっていきます。速攻で仕留めましょう!』

「であるな!」


 とは言うものの、難しいんだよこれが!


『間違ってもお味方ド真ん中にぶち込んじゃ駄目ですよ。あと、石造りの城壁も駄目ですよ。強度の問題で弾かれますからね。狙いは城壁の上部。一見何もない所』


 城壁から飛び出している鉄柱と鉄柱の隙間。標的はあそこだ!

 なるほど、ミウラの言う通り、ここからだと直角でブチ当たるだろう。


 あそこだ。あそこだ! あそこだ!!

 鼓動が速くなる。息が荒れる。


「くっ!」


 右手の汗を太ももの布地で拭う。改めて引き金に指を置く。


「器用のすきるよ、我に力を!」


 やや上から、ゆっくりと柔らかく下ろしていき、標的に二つの照準を合わせ……。

 引き金を落とすように引く。


 ズォォオオーン!


 目の前が真っ白になった!

 

 

 

 

 

 

⊱φωφ⊰ ⊱φωφ⊰ ⊱φωφ⊰ ⊱φωφ⊰ ⊱φωφ⊰ ⊱φωφ⊰

 

 

 

 エランが陣頭指揮する、王宮城塞正面。

 日が昇る前より、今か今かと待ち構えている。


「城内部の協力者より通報です!」

 腹心のクリストファーが慌てて走ってきた。


「ザッカルドが未明に手勢を率いて王宮城塞を脱出! 目的地はエメラルド山のイオタ様です!」


 さすが予言者ザッカルド。見抜くか!

 城門よりエメラルド山に視線を移す。


「捨て置け! ネコ耳なら簡単に対処する!」

 イオタよ……


 その時だった。


 エメラルド山の山頂部より青白い光が放たれた!


「やったか! ネコ耳!」


 バリバリバリ!


 雷のような音を上げ、光は王宮城塞の上部、何もないように見える所に着弾!

 やりやがった!


 ――と喜色を浮かべようとしたが――


「弾かれた!」


 上辺を滑った光は、バウンドして暗い空へ飛んでいく!

 狙いが上過ぎたのだ! あのバカ!


「エラン様!」

 回りがざわめく。


「外れましたッ!」


次回、本編完です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ