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12.軍議 でござる

 西側諸国に激震走る!

 ネコ耳の勇者イオタ。ついに、主を得る!

 その者は、反乱軍の中心人物。王子を自称するエラン。……の妹、デイトナ姫!


「その実、エラン王子に仕えたも同然!」

「常に正義の側に立っていた勇者イオタ。ならば、反乱軍が正義なのか!?」


 噂が噂を呼ぶ!




 その頃、反乱軍本部ではッ!


「で? エランが乗ってきたという白馬は今どこに?」

「言うなーっ!」

『ああっ! 先生のキャラが!』

 人間とネコ耳とネコがふざけ合っていた!


 作戦会議と称し、主立った人間、貴族、騎士が、中央のテントに集められた。何故か、某もでござる。

 これが噂に聞く軍議でござるか? 某、軍議の席に出るのは初めてでござる! 裃を持っておらぬが大丈夫でござろうか?


「北の要塞、イオラン城に降伏勧告を勧めに使者が、戦略物資満載の荷馬車30台と兵士300と共に帰ってきた。今まで渋っていたのに、ネコ耳がこちらに付いたと言ったら二つ返事で大放出だ。勝利を収めた暁には是非ネコ耳の勇者様のご訪問を。ときた」


 ご機嫌なエランでござる。むかっ腹が立つでござる。


「条件がもう一つ。官僚を丸のまま残せ、とさ。なんでだろう?」

『既に戦後の事を考えてますね。北の要塞に、高レベルの指揮官がおられる様で。気をつけましょう』

 何を言っとるのかいまいち理解しかねるが、ミウラが同調したのだ。官僚の件は正しい方針なのだろう。


 さて、軍議の中身でござるが……。


「現国王派は急ぎ各家に招集を掛けております!」

「よし! あと2日で2千の戦力が集結する。進軍は2日後とする!」


『攻撃目標は? なにをもって勝利とする? 武器弾薬の在庫は? 兵糧は? 後方支援は? どこに陣を張る? 作戦は?』


 白熱した軍議でござった。殆どエランが突っ込んできて、ミウラに返り討ちにされておった。有象無象の脳筋共は、首を縦に動かしているだけでござる。


 二日後に全軍出撃と相成った。王宮派もそれぐらいで軍が整うらしい。後は細々とした詰めと作戦だけでござる。


『作戦が問題なのよ!』


 さて、一段落付いたので、休憩でござる。

 デイトナ殿御自ら煎れて頂いた茶をみんなですすっておる。

 美女の入れた茶は甘露でござる。


「所でエランよ。貴殿、ゲルム帝国で別れたあと、どうやって拙者より先にヘラスへ着いたのでござるか?」


「ん? ゲルム帝国から4日も西へ歩くと、それなりの山脈(やまなみ)があって、そこを越えると南諸国へ出られるんだ。秋の空気は涼しくて楽な山越えだった。海まで出て船に乗ると、すぐにヘラスだ」


「な、なんでござると? そんな近道があったとは!」

『不覚! ウラッコはどこまで祟るんでしょうか!』


「拙者の目的地がヘラスだと知っておろう? なんで近道教えてくれなかった?」

「確かネコ耳、おまえこの世界を旅して回りたいとか言ってただろう?」


「そんな事言って――言ってたでござるが!」

 なんだったのだ、この長旅は!


『旦那の運は1!』




「只今戻りました!」

 埃と土にまみれた若い男が軍議の席に入ってきた。なかなかに不敵な面構えでござる。


「長旅ご苦労! まあ座れ」

 全く遠慮せずに椅子に腰掛けおった。


「こいつは私の部下で、国外の情報を収集してもらっているのだ」


 間者でござるか。


「報告しろ」

「はっ! まずは、ダヌビス川を封じていた魔物共が一掃されました。滞っていた流通が再開されました」


『ずいぶん古い情報ですね。この世界、情報の鮮度が命運を分けますね』


「ネコ耳の勇者イオタなる者が、たった一人でダヌビス川流域の魔物を殲滅しました」


「……ダヌビスの流通が再開されたのだな。通り魔竜レッドマンが塞いでいた街道も開けた事だし、西側諸国と流通が盛んになる。ヘラスにとって望ましい事だ」


 こっちをチラリと見るエラン。こっち見んな!


「えー、そのイオタなる者ですが、戦争状態に突入した西側諸国とドラグリアの件にも関わっておりました。和平の使者として、仲を取り持った模様です」


「……ドラグリア本国は外へ撃って出る事を控えたようだ。ヘラスにとって望ましい事だ」


『先生のテンション低い低い』


「ネコ耳! お前が遠回りしてくれて助かったよ。勝利の女神だな、貴様は!」

「エランの為にも近道をすべきでござった! 一生の不覚でござる!」


「ネコ耳?」

 間者は某の頭頂から生えている三角形の耳を見て、エランを見て、耳を見てと盛んに目を泳がせておる。口を開けっ放しにして。


「まさか――」

「紹介しよう。ネコ耳族の勇者イオタ殿だ。我等の陣営に参加してくれた」


 間者殿があげた悲鳴(?)が「ホゲー!」ってなによ!




「王子! 王宮で新たな動きです!」

 別の者が会議の席に駆け込んできた。なんだか慌てておる。


「エドゥが王宮城塞より消えた模様です! 城内は大騒ぎとなっております!」

「なんだと!?」


 エランが慌てておる。それほどの者か?

 ヴァンテーラ伯爵に、小物だと教えてもらったが?


「影の大蛇・エドゥの事でござるか? あの者、魔族でござるが――」

「魔族だとぉー?!」


「道理で尻尾が掴めなかったはずだ!」

「まさか、魔族と手を組むとは! まさに亡国の輩!」

「この話を国中に広めよう! 敵を崩せるかもしれぬ!」 


 エランをはじめ、軍議に集まった者共が騒ぎ出した。


 落ち着かせる為、声を張り上げる。話をすれば解ってもらえる。

「みな落ち着くでござる。魔族といえど、さほど大げさな――」


「魔族が大げさでないだとぉー!?」

 騒ぎが輪をかけて大きくなった。


「では、アレは本当だったんですね!? イオタ様が目覚めた魔王を封印したって噂! ダヌビス川をはじめ西側王国で魔物共が活性化したのは魔王が目覚めたからで、魔王が封じられたので魔物の活動が停止したって噂です!」


 外国から帰ってきた間者殿の声が高くなっておる。

 皆の目の色が変わってきおった。


「落ち着けと言うに! 魔王は話せば解る御仁でござった。膝つき合わせて説得して、魔王城へ帰ってもらっただけでござる。目覚めるのが早かったので後五百年は温和しくしておるはず。さらに、できればもう五百年ばかり静かに暮らしてもらう為の品も、ジベンシル王国の信頼できる御仁に渡しておる! 落ち着け!」


「話を聞いたら余計落ち着けぬわ! 魔王と対峙するだけで命が幾つあっても足らん! 封印した上で再封印だの、これが落ち着いて聞いておれるか!」


「ちょ、エラン! 唾飛ばすな唾!」

『返してよ! 先生のキャラを返して!』




「ご注進ーっ!」

 また駆け込んでくる男が。町民の服装だが中身は剣を仕える男のようだ。


 軍議の席は万人の出入り自由でござるか?


「今度は何だ!」

「港よりドラグリアの艦隊が消えました! 港では王宮の関係者が走り回っています!」


「なぜだ? ドラグリアの後ろ盾は、カスタル宰相にとって最も重要なはずだ?」


「それはカレラ皇帝の方針変更でござるな。え?」


 その場にいる全員が某の方を見た。エランに至っては切れ長の目がドングリみたいに丸く開いている。そなた本物のエランか?

 話を続けなれば殺されそうだ。


「さ、先の和平調停でドラグリアのカレラ皇帝と話をした際、内政へ傾注する事にてオチを付けてきたでござる。ヘラスへ手を出す理由が無くなった故、金食い虫の派遣艦隊を引き上げたのでござろう」





「……お前、どーやって皇帝を手なずけたのだ?」





『ヒント=運が1』


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― 新着の感想 ―
ヒントは一般人には分かりにくい過ぎるwww
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