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10.腹を決める でござる

 王都ヘラスより真北の地。左右を山並みに囲まれたトライデアル平原にて。


 襲撃事件の後、デイトナ殿に連れられ、しっちゃかめっちゃかに逃げ回り、気づいたらここにいた。


 ぶっちゃけ、ヘラスの北。左右に高い山並みがそびえる谷というか平野というか、広い場所でござる。


 イセカイの鎧を纏い、槍や刀を帯びた武者達がいっぱい彷徨(うろつ)いている。

 ざっと見、千人はおるのな。小さな集団を形成し、各々でまとまっておる。剣の修行をしておる者共もおるな。


 本格的な防馬柵や、屋根のある天幕『テントです』がそこここに。

 一番大きなテントに招かれた。

 そこそこ……かなりいいテントでござる!


 絵が飾ってあったり、大きな机があったり、豪華なソファーが置いてあったり……。

 ここで生活が出来るでござる!


「ここは私の拠点だ。まわりの騎士や戦士は、私に従ってくれている者共だ。安心してくれ!」


 走り回って喉が渇いたので、水をがぶ飲み中でござる。

 ふー、一息ついた……。


「説明しろ! エラン! ここで何をしておる!」

「ネコ耳こそ説明しろ! なんであそこに居た!」


 胸ぐらのつかみ合いでござる。


『両者平行線です。具体的な質問をしましょう』

 ミウラ、お前どうしてそこまで冷静なの?


「エラン、お主、ヘラス王国で何をしておる?」

「うっ!」


 グイと顔を近づけると、エランのヤツ、頬を赤くして顔を背け、乱暴に胸ぐらをつき放しおった。やましい事があると白状したようなもの!


「教えてやろう! 現体制の打破だ! ネコ耳に解るようかみ砕いて言い直せば、世直しだ! 重税とか汚職とか貴族の腐敗とか、そんなのを正す!」


「はっはっはっ! 面白い。それではまるで噂の反乱軍でござるよ!」

「その反乱軍の頭が私なんだよ!」

「え?」


 これはまた……神をも恐れぬ、どえらい事を!


「ネコ耳、お前まさか、私達の活動を知らずにデイトナに臣従したのか?」


 うるさいわ! デイトナ殿の色香に迷ったんだよ!

 

「悪い事は言わぬ。拙者が付き添ってやろう。自首致せ」

「悪いのは現王家側であって、苦しめられてるのは国民だっちゅーの!」

『先生、キャラがぶれてます!』


「ネコ耳! お前も見たろう? 国民が借金まみれなのを! 暗い夜を! ドラグリアが国の利権を買い占めているのを! 王室と取り巻きが己の利益だけを求め、この国を売ったんだ!」


 むぅ、そう言われれば心当たりが……。みんな貧乏だし。


「私はそれを見かねここへ来た。これまで抵抗運動家と指さされてきた小さな組織だったが、いまや反乱軍と呼ばれるまでに大きくなった。なぜだか解るか!?」


 え? なぜでしょうか?


『賛同する有力者が増えた。先生が旗頭に立ったから』

「賛同する有力者が増えた。エランが旗頭に立ったから。で、ござろう? ふふん!」


 鼻高々!


「フッ、さすがネコ耳。私が一目置く者。頭の回転が早い」

 へへんでござる!


「なら、私の正体も察しがつこう?」


 試すような目をする。正体も何も、殺人狂の戦闘狂だろ? 刃物持たせるとヤバイやつ。

 なあミウラ?


『先生は10年以上前に出奔したヘラス王国の王子』

「エランは、十年以上前に出奔したヘラス王国の王子だ」

「その通り!」

 ほうら……え?


「なんだとぉー!」

 驚くとかそんな段階の話じゃない!


「自分で言って何を今更?」

「王子って! 若君だろう!? お前どう見ても中年だろ?! 王子って年か? その面、どう見ても悪人だろ? 王子って面か!」


「喧しいわ! 王の子が王位を継がなければいつまでも王子なんだよ! 現王は、王として認めてないから私は王子のままなんだ! 法的に何ら問題は無い!」


『そんな、理屈ーっ! いえ、わたしはその政治的(ごういん)理論に賛同致します』

「ちょっと待つでござる! 話が思っていたのと違う! 仕える話は撤回でござる!」


 命がけの戦場へ飛び込むつもりは全くない!

 そもそも、エランがヘラス王国の王子で、現王は? エランの父上ではないのか?

 情報が全く足りぬ。


「イオタ様、お願いです!」

 連れの二人の内、顔見知りが跪いてる。もーほんと面倒くせぇ!


「どうか、お力をお貸しください! 今回、モンマルテル伯爵を我等の陣営に引き込めませんでした。これは痛い。戦力に差が出る。我等の情報が漏れる。我等に賛同してくれている貴族達が離れていく」


 一か八かの賭けだったのか? エランらしくないぞ。


「兄の伝手で多くの貴族の支持を短期間に取り付ける事ができました。ですが、敵は強大。これを機に、支持派貴族を一つずつ潰して来るでしょう。そうなる前に逃げ出す者も多いはず」


 モンマルテル伯爵も味方になってくれると踏んだのだろう。そこを裏切られた。嵌められた。エラン陣営は、一気に劣勢となったか。

 そんな所か?


「ネコ耳。いやイオタ。貴女には返そうとしても返せぬ恩がある。それを承知で言う」


 いつにもなく真面目な顔をするエラン。こやつこういった精悍な顔もできるのな。


「イオタ――」

「ふふふ、何でござるか?」


 土下座の想像は付く。さあ、跪け!


「武士に二言はあるのか?」


 ……は?


「おまえさっきデイトナに仕えると言っただろう? ブシは二言を使い分けるのかな? っと思ってさ」

「エラン! 貴ッ様ぁ-!」


 ソファにふんぞり返るエラン。なに邪悪な目をしておる?


「その舌の根も乾かぬうちに、前言撤回するがブシなのか? と聞いてるんだよ!」


 上から某を見下ろし、笑っているでござる! 口の端をめくり上げるような勝ち誇った笑いでござる!


「えーい、こうなったら、毒を食わらば皿まで! 徹底的に付き合ってやるでござる!」






『ネコ耳の勇者イオタ。ヘラス反乱軍に正式参加を表明ッ!』



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