ドジ!マヌケ!アンポンタン!
ここで少し時間は遡る─
グラン達が準決勝を勝ち上がり、観客席からお手洗いに言った時の事である。
「ちょっとお手洗いに行ってきます」
そういってシオンは席を立った。そしてふと気がつきカレンに尋ねた。
「カレンも一緒に行く?」
カレンはシオンを見て言った。
「女神はトイレには行かないのじゃ!」
何だってーーーーーーー!!!?
ペシリッ!
「そんな訳ないでしょう!?」
「あいたっ!ちょっと言ってみただけじゃ!妾は後で行くのじゃ」
「了解!じゃ、ちょっと行ってきま~す」
シオンが観客席を立ち、トイレに向かったのを、監視していた者がいた。
???
「ちょうど、ターゲットが1人になった。仕掛けるぞ!」
こうしてシオン追っている者達は仲間に指示を出して、罠を張るのだった。
ジャー!!!
「ふぃー!これでよしっ!」
化粧室で身だしなみを整えて出てきたシオンに声を掛ける者がいた。
「あー、いたいた!」
???
「シオンお嬢様でよろしいでしょうか?」
会場のスタッフの服装をした男性だった。よく迷子や観客席の誘導など、目につく服装の方だった。
「はい、そうですが?」
「アクエリアス公爵様がお呼びです。他の皆様はすでに向かわれました。着いてきて貰えますか?」
お父様が?準決勝も勝ったし、決勝の装備の事かな?
「わかりました。ご苦労様です!」
こうしてシオンは疑いもせずの、偽のスタッフに付いて行くのでした。
「こちらの部屋でお待ちです」
通路の奥、突き当たりの部屋で人気が少ない場所だった。シオンは部屋に入ると後ろから薬の染み込ませたハンカチを口に当てられ、モゴモゴしながら意識を失うのだった。
ああ、なんてことでしょう!?この小説の主人公ともあろう者が、こんなメジャーな罠に掛かるなんて!
ちょっとは疑う心を持てと言いたいですね!?
こうしてドジでマヌケでアンポンタン!な、シオンは敵の手に落ちたのでした。
※非常に残念ですが、この小説は健全な全年齢指定のため、敵の手に落ちたヒロインが陵辱されことはありません。
「シオン、戻って来るのが遅いな?」
「トイレが混んでいるんだろう?」
シオンの戻りが遅く、少し気になりだした時に子供が手紙を持ってきた。
「こんにちわ!係の人がこれを渡して欲しいって言われたの!」
ちょうど、近くにいた子供のようで気にせずにお礼を言って手紙を預かった。
「ありがとう!」
「うん!」
子供は元気に返事をして母親の元へと戻っていった。
「誰からじゃ?」
「ちょっと待ってね」
レインは封筒から手紙を取り出し、目を通すと固まった。
「ば、バカな!?」
突然のレインの叫びにカリンを始め、レグルスも驚きレインを見上げた。
「ど、どうした!レイン!」
「どうしたのじゃ!?」
レインは震えながらみんなを見渡し、手紙を見せた。
「嘘だろっ!?」
「あのシオンが!?」
「どうやって!?」
アルデバランとガイもついさっきまでいたシオンが拐われた事に驚きを隠せなかった!
「シオンを無事に返して欲しければ、決勝戦を負けろと書いてある………」
「なんじゃと!なんと卑劣な!?」
「では、シオンを拐ったのは決勝戦の相手か?」
「いや、この後のもう1つの準決勝で決まる。まだ相手は決まっていない!」
「では誰がこんな事を………?」
レイン達は誰が犯人なのか考えたが、わかるはずも無かった。
「アルデバランさん、お父さん達にこの手紙を届けて貰えますか?控室にいると思うので。僕達はシオンを探します!」
「わかった!」
すぐにグランの元へと向かうアルデバランを見送り、レイン達もすぐに行動を開始した。
「闇雲に探しても、会場は広い!どうするのんだ?」
この中で唯一の大人であるガイが、レインを呼び止めた。
「カレン、女神様の気配とかで探せないかい?」
?
ガイは何の事だ?と思ったが、深く追及せずにカレンの言葉を待った。
「出来るには出来るが、人が多すぎるのじゃ!気配が混じって何とも………近くにいけばわかるのじゃが………」
「まずはトイレの方から行って見よう!」
こうして、レイン、レグルス、カレン、ガイ達はシオンを探します為に、行動を開始したのだった。
愚者の声
「なんともマヌケなシオンでした!」




