自覚を持った行動を
みかんちゃんの応援をしよう、友達として、同士として……僕が出来なかった事、やれなかった事……それは変わること、変わろうとする事。
僕は出来なかったけど、みかんちゃんはやった、僕に変わってやってくれた、僕はそう思っている、思ってしまっている。
日本一にまでなって、それを実現したみかんちゃんの事を僕は心底尊敬している、だから応援しよう、出来る事をやろう……僕に出来る事それはみかんんちゃんのお店に行ってみかん汁……失礼、みかんちゃんスペシャルオレンジジュースを飲む事だ!
と言うわけで本日もここ『喫茶メイドっ子倶楽部』より実況は佐々井が生中継でお送りしています。
さあ、てきぱきと働くみかんちゃん、今日も素晴らしいメイド服を着こなしていらっしゃいます。
そして僕と時々目が合うとニコっと微笑んでくれます、あれは僕にだけのサービスに違いありません。
「可愛いな~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」
え? 笑顔はお店なんだから普通だろ? いや、まあ他の人にも微笑んでいますが、でも、でも時々僕に向かってだけ小さく手を振ってくれるんだ、あれがまた最高で、あれは僕にだけのスペシャルサービスなんだ!
そう思った瞬間僕はベルを鳴らす、鳴らしてしまう。
「みかん汁追加で!!」
「もう~~ご主人様のいぢわる! スペシャルオレンジジュースでございますね、かしこまりました、少々お待ちくださいませ」
みかんちゃんはそう言って少し頬を膨らませながらお辞儀をする。
「はわああああああああ」
ツンデレだよね、今のはツンデレサービスだよね! ヤバいよヤバいよ、ヤバ過ぎるよ、可愛い過ぎる~~~~
みかんちゃんのツンデレ姿とか超レアなんじゃない? あ、まあ日頃学校じゃ僕に対してツンデレっぽいけど。
でもそれはある意味僕だけ特別って事なのかな? 僕だけのみかんちゃん……ああ、みかんちゃん、愛しいみかんちゃん……
そんなこんなで僕は今日も2時間程みかんちゃんを堪能して家路に就いた。
食事もしないで長時間入り浸るのはやっぱりメイド喫茶ではマナー違反だしね。
「はあ、最近みかんちゃんとはどんどん仲良くなっているんだけど、問題は泉なんだよな……」
最近ほとんど会話をしていない、泉は僕を避けている……そして僕も泉を避けていた。
きっかけはあれだ、みかんちゃんの話しからだ……遊園地に皆で行って……泉
が僕に、「みかんちゃんのファンなのですか?」って聞いてきて……だったよね?
あれ? でも……みかんちゃん確か、泉はみかんちゃんの正体は知らないと言っていたよね? だったら何で僕がみかんちゃんのファンだって知ってるんだ? あれ?
わからない……何度考えてもわからない……どういう事なのかさっぱりだった。
「とりあえず、今回食事はしていないから夕飯は一緒に食べるし、そこでちょっと話せばいいか……」
そんな事を気楽に考えながら僕は家に帰ったけど、それは大きな間違いだった。
「き、気まずい……」
どのくらい気まずいかと言うと、お通夜でお経をあげているお坊さんのカツラがズレているくらい気まずい雰囲気だった。
今日も僕が帰ると夕食の準備は整っていた。当然いつも通り両親は不在……いつもの如く二人きりの夕御飯。
泉は何も言わずに黙々とご飯を食べている。僕には一切目を合わさずに……
え、怖! 何この話しかけるなオーラ……
こんな状態で……クラスカースト最上位の雰囲気を醸し出している泉に底辺の僕が話しかけるなんて出来るはずもなく、僕は黙ってモソモソと夕飯をたべていた。
チラチラと泉の様子を伺う僕、泉は一切目を合わさない……そんな膠着状態が続いていた。今日はこのまま無言で食事か……そう思い僕が少し気を緩めたその時を狙ってか? 泉は僕の目を見ずに突然話しかけてきた。
「お兄様……本日もご用との事でしたが、どちらへ行かれたんですか?」
その突然の質問、しかも冷たい口調で尋問するかの如く泉に言われた僕は慌てた。学校帰りの寄り道は特に校則違反では無いが、メイド喫茶に行ったと言うのはほんの少し、特に泉に言うには抵抗があった。
図書館とか買い物とか言えば良かったのに、僕はその質問に対して素直に言ってしまった。
「あ、えっと喫茶店に」
ああ、辛うじてメイドとだけは言わなかった、言わないで済んだ。僕GJと思ったがその瞬間泉は顔を上げ僕を睨みながら言った。
「お一人で?」
怖! 怖い! 何その目、え? 僕刺されるの? ナイスボートされちゃうの?
「あ、うん、そ、そうだけど……」
今日は一人で行ったのは間違い無い、みかんちゃんは先に行って僕は後から行ったから、お店も一人だし、何も嘘はついてない……よね?
「そうですか……うちの学校は特に寄り道は禁止されてませんが、当校の生徒として自覚を持った行動をと言う一文があります。お兄様は私の兄なんですから、あまり変な場所に出入りなどしないようにお願い致します」
「あ、うん、わかってる大丈夫」
メイド喫茶は変な場所じゃない! あくまでも喫茶店……だし。
「お付き合いも程々にしてください」
お付き合い? なんだか良くわからないけど、とりあえずここはうんと言っておこう。
「あ、うん、そうだね」
そう言うと泉は再度僕を睨む……え? な、なんで? 怖!
そしてまた何事もなかったかの如く下を向き黙々と食べ始めた。
一体なんなんだろう? 泉はどうしちゃったんだ?
僕はそう思うも泉の話しかけるなオーラに圧倒され、その後何も言えなかった。




