同じトラウマを持つ者同士
辺りは静まり返っている……。
虫の鳴き声ひとつしない冬の夜……まだ春は遠いと感じる程に今夜は冷え込んでいる。
僕は何か着てくればと後悔するも、この場所から……二人の会話から離れられないでいた。
泉のエゴを僕に押し付けるなと言った愛真……泉はそれに対して何も言わずに黙っている。
エゴ……エゴなんだろうか? 僕と泉は兄妹になりたくてなったわけではない。
偶然兄妹という関係になっただけ……。
でも……でも僕は……泉が好きで……兄妹になんてなりたくないと後悔もした。
そして一度は泉のブラコンを治そうと、そう思った。
でも……泉のブラコンが治ったら……僕達が本当の兄妹になってしまったら僕は泉を失う……大切な宝物を失う事に、僕はそれが怖くなった。
大切な物失う恐怖が僕の心を蝕んだ。
そして僕は泉を、泉の身体を奪おうと、自分の物にしようとした。
あの時泉は全く拒まなかった。
この先……僕は耐えられる自信が無い……全てを僕に捧げようとしている泉……から逃れる自信が全く無い。
キスだけじゃ……僕はもう満足出来ない……。
さっきも……もし愛真が来なかったら。
でも……僕はバカだった……その先を全く考えていなかった……。
そもそもまだ高校生だと言うのに……泉と……しかも何も準備をしないで……その……アレとか全く無い状況で……しようとしていた。
男は夢を見る、女は現実を見る……現実を突きつけられるのはいつも女の子だって良く言う。
だから女の子は成長が早い……身体も心も男なんかよりも成長が早い。
それは……現実を見せつけられるからだと……言っていた。
現実……そう僕が泉にしようとした事は、僕が泉に求めている物は……現実が伴う……その行為による極めて当たり前な現実。
僕は全く先を考えていなかった……現実の先を……妊娠という現実を……。
それを愛真が泉に突きつけた……愛真は全てわかっているのだろう……。
僕に女の子の事を教えてくれた……愛真は僕に現実を見せつけた。
男と女の決定的に違う事を……身体も心も違うという事を……。
──女の子は人の人生を作り出せる存在だと言う事を……。
勿論一人では作り出せない、男が居ないと作れない……でも、命を生み出し育み、それを世の中に送り出すのは女の子。男には出来ない神秘的な事。
僕はそれを知った時……愛真の事がとてつもなく素敵に思えた。
愛真の事が凄く愛しく思った。
そう……僕は愛真との将来を……家族になる事を本当の家族になる事を夢見た。
愛真がお母さんになる事、そして……将来僕の子供に……二人の子供に僕が貰えなかった物を授けてくれるって……それを僕は横から眺めて居られるって、僕の代わりに僕の子供がって……そう夢見ていた。
でもそれは脆くも崩れた……愛真がいなくなり全てが無になった。
僕の友達も家族も愛する人も夢も全て消えて無くなってしまった。
僕は愛真が好きだった……僕の家族になってくれるって、僕のお母さんに……将来、お母さんって呼べる人になってくれる筈だってそう思っていた。
僕は……お母さんって呼びたかった……そう呼べる人が欲しかった。
「あは……あははは……なんだよ……何で今頃気が付くんだよ……」
そうか……泉は究極のブラコンで……僕は…………究極の……マザコンじゃないか……。
恋人に母親を求める……子供と一緒に妻をお母さんって呼べる。
お母さん……そう僕はお母さんが欲しかったんだ。
友達も妹も姉も全ていらない……僕はお母さんが欲しかった。
愛真のお母さんも泉のお義母さんも呼び方はおかあさんだけど、他人のお母さん義理のお義母さん……お母さんではない……。
そう僕が将来そう呼べるのは、僕が結婚して子供が出来た時だけ。
最近はそう言う呼び方を嫌う人もいるけれど……僕はそう呼べる人と結婚したいって……心の底で思っていた。そう夢見ていた。
僕も泉と同じだ……。
兄に縛られた泉、母に縛られた僕。
「その二人が兄妹になるなんて……」
亡き兄、亡き母に縛られた兄妹なんて……笑えない。
僕も泉も夢を見ているのだ、子供の様な夢を……でもそうは行かない、それを今、愛真に突きつけられている。
泉はどう言うのか? どう言い返すのか? 僕はずるくも泉の言葉を待った。
僕と泉は……同じトラウマを抱えている……だから僕は泉を……。
「…………わ……私は……」
泉が消え入る様な微かな声で発する……愛真に現実を突きつけられて、なんて言うのか……僕は自分の答えを求める様に、更に身を乗りだし泉の声を聞こうと…………。
「……は、は……きゅしゅん!」
身体に冷たい風が……冷えきった身体にとどめ、とばかりに冷たい風が当たる。
それと同時に僕は思わずくしゃみをしてしまう。
『ガラガラ』
くしゃみと同時にお風呂場の窓が開いた。
「! こらあああ! さいしん! また覗いてるのかああああ!」
「え? いや、ま、また!? またってええ!」
「昔……いつも私のお風呂覗こうとしてたよね!?」
「ち、ちが……あああああ!」
違う、覗いていない、声を話を聞こうって、僕の事を変な事を言われた時の対応を……今言った様な誤解をって、そう言い返そうとしたが……言う前に僕の目に4っつ大小の膨らみが飛び込んで来る……。
泉と……愛真の……おっぱいが……はっきりと僕の目に……。
そして……僕が固まるのを見て愛真が見られている事に気が付く。
「ああああ、見たなさいしん!! 出たら説教だあああああ!」
説教……そう……僕は愛真に女の子という物を教わった……そしてその後はいつも……長い長い説教をされていた。
お母さんにされる様な、説教を……いつも……されていた。
またもランキングに返り咲きました。
ありがとうございます(*≧∀≦)人(≧∀≦*)♪
以前は底辺ランカーでちょくちょく載っていましたが最近はポイント高騰で載るのも難しく……
モチベーションを保つのも一苦労です(笑)
もう少しで強制的に暇になりますので、頑張って書きまくります。
引き続き応援宜しくお願いします。
この世の中少しでも読んでくれている人を楽しませられたら、そして娯楽の一つになれたらと思いながら書いております。
一緒に頑張りましょう。(ヾ(´・ω・`)




