私の方が知っている
「どういう事何ですか?」
「わーー泉さんのパジャマ可愛い」
「いや、僕も何が何やら」
「泊まるって一体……しかも一週間も……」
「わーーフリフリも可愛い」
「父さんの許可が降りてるから、僕にはどうにも」
「私は許可は出してません!」
「半ズボンぽくなってるんだあ、そんなパジャマ私も欲しいなあ」
「──ちょっと聞いてるんですか?!」
とりあえず3人でリビングにて話し合う事にした僕達……って言うか空気を読んでか読まずか、愛真はずっと泉のパジャマに食いついていた。
「えーーーー? だってえ、お母さん急にお父さんの所に行かなくちゃいけなくなっちゃたしい」
「ですからそれでどうして家に来るんです!」
「だってえ、女の子一人だと危ないでしょう? 私学校もあるし、一緒には行けけないし」
ケラケラと笑いながらそう言う愛真に泉は更にまくし立てる。
「だからって!」
「あのね、私と真ちゃんは子供の頃にお互いの家に泊まりっこしてたの、どっちかっていうと真ちゃんが家によく泊まりに来てたのね?」
そう言うと泉は僕を見る……うん確かによく泊まりに行っていたので僕は黙ってそうだと頷いた。
「それがどう関係が」
「あのね、子供が他人に家に泊まるのに親の許可を取らないわけ無いでしょ? だから真ちゃんが知らない所で私の両親とおじさんでかなり連絡とかしてたのよ、特に私のお父さんとおじさんとは職場も近かったしたまに飲みに行ってたりしてたみたい」
「へあ?!」
「まあ、私も最近聞いたんだけどね」
「……」
「おじさんが海外出張とかで長期に家を開ける事もあったじゃない? 小学生の、子供の真ちゃんを長い期間一人するのは心苦しいって言ってたの、じゃあ家に泊まりにおいでって、真ちゃんは知らなかっただろうけどねえ」
「父さんが……」
そんな話は全く聞いていない……僕は一人でも平気だったけど……愛真がしつこく言うから……。
「だからって言うわけじゃ無いけどね、まあ、こういうのって餅つき胃もたれって言うじゃない?」
「……持ちつ持たれつだろ……」
「ああ、それそれ、あ、ちなみに泉さんのお母さんともその時に知り合ったらしくて、お父さん紹介されたって言ってた」
「え?」
「だからいまだに二人の連絡先とか知っててねえ、今回こういう事になりましたのでお世話になりまーーす」
「そ、そんな! 私は認めません!」
「……あのね泉さん、泉さんは真ちゃんと暮らしてまだ1年にも満たない……真ちゃんのおじさんともね、私は違う……暫く離れてたけど、貴女より長く一緒だった、貴女よりも真ちゃんの事も、この家の事も知ってる」
「だ、だからって」
「今日法律云々の事を言ってたでしょ? それを言ったら泉さん、貴女は未成年、そしてこの家の主でも無い、私はちゃんとおじさんと貴女のお母さんに許可を頂いてます、なので貴女に拒否権なんて無いの」
「お、おい、愛真……」
「……くっ」
泉は手を口に当てながら立ち上がると、足早にリビングを出ていく。
そしていつもは丁寧に音を立てずに階段を登って行く泉が、わざとなのか? 大きな音を立てながら走る様に登って行く。その音がリビングに響いて来た。
「お、おい、愛真、そこまで言わなくても……」
追いかけ様か迷ったが、階段を駆け上がる音を聞いて、とりあえず泉は家にいると判断する。あの姿で、どこかに出ていったわけではない、今は愛真の真意が知りたいと僕は思い、その場に留まり愛真にそう言った。
「……真ちゃん……真ちゃんは今のままで良いの?」
「……な、何が?」
「私今日二人に会って、二人の雰囲気から何かあったのかなって、それで一萬田さんに聞いたの」
「え?! り、凛ちゃんに……」
「うん……正直……今の二人の関係はおかしいって、兄妹で居続けないと成り立たない愛情って、おかしいって……そんなの愛じゃないって……」
「愛真……お前……」
「私は真ちゃんの親友で……お姉ちゃんなんだから……大好きな真ちゃんがおかしな事してるんなら、それを正さないといけない……もし……二人が普通の恋人になるんなら、私は真ちゃんを諦める……二人を祝福する。でも今のままなら、兄妹で変な関係になろうなんて考えなら、私は諦めない、一生掛けてでも、真ちゃんを振り向かせる、泉さんから奪い取る」
「一生……」
「そうよ! どんな手を使っても……今回みたいな手を使っても……一生……一生二人に絡んでやる……私は一生真ちゃんを好きで居続けてやるから、覚悟しろ!」
愛真はそう言って笑った……目から涙を溢れさせながら……満面の笑みで……僕を見つめながら笑っていた。




