二人と同棲
買い物中ずっと、泉はどこか上の空だった。
いつもは常に僕の事を気にしてくれていたが、今日は何を言っても生返事。
さっき愛真に言われた事に気を取られている様な、そんな感じがした。
早々に買い物を済まし僕達は家に戻る。
戻るなり泉は「ちょっとシャワーを浴びて来ます。出たらお兄様にお話があります」と言ってきた。
「う、うん……」
話すのにわざわざシャワーに入るって、なんだかよくわからないけど……僕はとりあえずそのままリビングで泉を待つ事にした。
そして待つ事数十分……。
「お兄様……」
「……い、いずみ……」
白いフリルが可愛いパジャマ姿、短パンで太ももが露になっている。
白い二本の足が、生足が眩しく光輝く。
「お兄様……」
泉はそう言いながらゆっくりと僕に近付きそして僕に密着するかの様に、隣に座った。
「あの……え、えっと……話って」
「……はい……お兄様……私ずっと思っていたんです。やはり私達は繋がりってものが薄いって、そう思うんです」
「う、うん? 繋がり?」
「……はい、さっき愛真さんが言っていた血の繋り……そんなものは気持ちの問題って思うんです。血が繋っていても家族になれない人達がいる。逆に血が繋っていなくても家族以上に家族になっている人達がいる。私はそう思っているんです。だから私はもっとお兄様と繋りたいって……お兄様と私の心の繋り、愛の繋りがもっと必要だと思うんです」
「ふぁ? あ、あ、愛の繋り?」
泉はシャワーで火照たのか? 赤い顔で僕を見つめる。
うるうるうとした瞳を、僕の手の甲に自分の手を重ね合わせる。
温かく柔らかい手の平の温もり、泉の身体からいつも以上に言い匂いがしてくる。
どういう事なのか? 繋りって何? 僕は戸惑った。
「ど、どういう事なのかなあ?」
僕が少し惚けてそう聞くと、泉は少し頬を膨らまし、拗ねた口調で言った。
「お兄様……どうしてあれからキスをしてくださらないんですか?」
「え? えっと……それは」
それは……兄妹で居続けたいから……僕はそう言って、自分にそう言い聞かせて理性を保っているから。
「……お兄様……私はもっと、繋がりたい……お兄様ともっと深く……」
「い、泉……」
うるうるうとした瞳がそっと瞼で閉じられる。
それを見て、僕の理性が吹っ飛びそうになる。
良いんだろうか? またしても……。
1回してしまえば2回も3回も一緒だという声と、いやいや前回は泉から不意にされた、僕は何もしていない、泉がしてきただけ。と2つの声が聞こえてくる。
キス位なら、もう既に一度しているし……。
僕はゆっくりと泉の顔に自分の顔を近づける。
いや、しかしちょっと待て、今、泉はシャワーを浴びてきている。凄く良い匂いに包まれている。もし僕がここでキスをしたら、僕から泉にキスなんてしたら、絶対に僕の理性が崩壊する。
そうしたら……。
いやでも……泉は繋がりが欲しいって、僕ともっと繋がりたいって、深く深く……それってつまりは……。
心の繋がりは男性が求め、女性は身体の繋がりを求めるって何かで読んだ事がある気がする。
つまり泉は……僕と……。
「僕は……臆病者だけど……でも」
そうだ、僕は臆病者、だからそれを克服したい、そして今、それを克服出来るかも知れない。
これ以上泉に恥をかかせてはいけない。
僕は泉の唇に自分の唇を重ね合わせ……。
『ポーーーーン』
合わせようとした瞬間、インターホンがなる……な、なんだよ折角覚悟を決めたのに……。
『ポーーーーン、ポーーーーンポーーーーンポーーーーン』
「う、うるさい!」
何度も鳴らされるインターホンに僕は苛立ち直接文句を言ってやろうと立ち上がる。
「お兄様……」
「ご、ごめん泉、ちょっと言ってくる!」
『ポーーーーンポーーーーンポーーーーン』
いまだに、しいつこい位インターホンを鳴らしてくる奴に僕は切れていた。
迷惑にも程があるって。
僕は玄関にたどり着くと、そのまま扉を開けて言った。
「うるさい! 誰だ!」
「ヤッホー」
扉の向こうには満面の笑みを浮かべている……愛真がいた。
大きなトランクを持って玄関前に立つ愛真……。
まさか……また外国に……。
僕の背筋に寒気が走る。また愛真が海外に行ってしまうかもと……そう思った。
しかし愛真は僕の予想を遥かに越えた事を、言ってきた。
「真ちゃん、私1週間真ちゃんの家に泊まる事になったから宜しくね?」
「……はい?」
僕がそう言うと、愛真はスマホの画面を見せて来た。
そこには……。
『ええよ~~』
と、書かれた父さんのメッセージが手のひらに父さん軽すぎ……。
『母が父の所に1週間戻るので~~女の子が一人じゃ危ないから~~僕の家に泊まる~~』等と詳しく書かれた文面に対す返信……。
それに対し『ええよ~~』と一言だけ書かれていた。
「え、いや? えっと……なにこれ?」
「うん? そのまんま、あ、大丈夫お母さんからも電話して貰っているし、あと泉さんのお母さんにも許可を頂いてるから、今日から宜しくね真ちゃん」
「いやえっと……」
もう完全に外堀埋められて断れない状態。
何度も僕の家に泊まった事のある愛真は慣れた感じに玄関で靴を脱ぐ。
「……お兄様?」
愛真が玄関で靴を脱いでいるとお、リビングから何事かという表情で泉が出てきた。
泉は愛真の姿を見て一瞬眉間にシワが寄ったが、愛真はすぐに笑顔を作って、
「泉さん、暫くご厄介になりまーーす!」
そう言って泉に向かい手を上げた。




