キャラブレって作品的に致命的じゃない?
クラスカースト『そんなものは存在しない』まあカースト上位の人間はそう言うよね。
でもね、僕みたいにカースト下位、底辺に居る者から言わせて貰えば、あるよ絶対に……。
例えば学園祭、やっぱり学園祭と言ったらカフェだよね! 『メイド喫茶』だよね! 昔は『お化け屋敷』今は『メイド喫茶』……え? メイド喫茶も、もう古い? そ、そんな事ないよ! 『メイド喫茶』だよ?! 『メイド喫茶』考えてみてよ、『お化け屋敷』なんて何が面白いんだよ?! 怖い格好をして他人を脅かすだけ……こっちとしては何も面白くない。
そこへ行くと『メイド喫茶』クラスの女子がメイドの格好をしてくれるんだよ? 自分の好きな娘がメイド姿に……ああ、もう冥土に行っても良いくらいだよ。
えっと……すみません……ここでブラバは止めてください、もう少し先までお付き合いを……。
えっと……どこまで話したっけ……そうそう、まあとにかく『メイド喫茶』は僕の憧れなんだよ、高等部になったら学園祭は『メイド喫茶』でって。
だから高等部1年の秋、学園祭で何をやるかクラスの議題に上がった時、僕は思いっきり大きな声で言ったんだ!「メイド喫茶をやりたい!」と……
あ、ちなみに僕は日頃から、影が薄いキャラとしてクラスで過ごしていた。
キャラだよ、あくまでもキャラ……学校では皆キャラ設定ってするよね?
まあ、僕は小学生の頃かずっとキャラ変更はしていないんだけどね。
そんな僕が委員長(通称赤メガネ)の「何かありますか~?」に被せる様に言ったので、クラスの皆がキョトンとしていた。
そりゃそうだよね、後で気が付いた、これじゃキャラブレだよね? これが小説だったら書いてる作家は才能ないよね。
でも、僕はそんな事を気にせずに熱く熱く語ったわけだよ、『メイド喫茶』について。それはもう熱く熱く語った、熱すぎて10月なのに残暑かよってくらい熱く暑く語ったんだ、メイドについてをメイドの素晴らしさを…………。
そして全てを悟った……語り尽くした後に我に返った僕は、すっかりとキャラブレしていた事に気が付く……いや気付かされたんだ……周囲からの冷たい視線によって。
クラスカースト上位達の冷たい視線、そして「えーーー何こいつ、こんな奴いたっけ?」と言う話し声、そして「それよりもっと面白い事やろーー」との一言で僕の提案した『メイド喫茶』はあっさりと流された……
僕みたいな、クラスで底辺の奴が何を言っても、カースト上位の一言でなかった事にされてしまう。
まあいいさ……そういう物だと諦めた僕は、そのままそっと席に座った……。
そして話題はとっくに違う物に変わり僕は再び居ない者、さっきの事は無かった事として扱われている……のに、何処からか視線を感じる……僕はその視線を探すとクラスで一人、僕を物凄く冷たい視線で見続けている人物がいた。
その人物は……皆の憧れの存在、その出で立ちから間違いなくお嬢様、深窓の令嬢、悪役令嬢……はちょっと違うか、とにかく物凄く冷たい、雪女かと言うくらい冷たい、凍る様な視線で僕を見ていた。
『薬師丸 泉』クラスカーストの頂点、艶やかな黒髪ロングは清楚なお嬢様然としている。そしてスタイルはとにかく細い、しかしガリガリという感じではなく適度に出る所は出ている。顔はいつも凛としているが時々見せる笑顔がとても可愛いく愛らしい。
ここまで言えば分かるかな? 分かるよね……そう……僕がメイド喫茶にこだわったのは、中等部からの夢と……彼女……
薬師丸さんに着せたかったんだ……メイド服を、彼女のメイド服を観られたら、冥土に行っても良い位だ。
えっと……ごめんなさい。
薬師丸さんとは中等部からのクラスメイト、僕の憧れの人、僕の初恋……でも彼女は中等部からクラスの中心人物、クラスカーストの最上位、いつも輝いている太陽、僕は地面を這うアリ、彼女とは立場が違う、違いすぎる。
だから僕はこの思いを心に秘め、目立たない様にひっそりと過ごしていた。
まあとにかく僕はやってしまったんだ。最悪のキャラブレを……そして気付いてしまったんだ最悪の事を…………そう僕の秘めた思い、隠していた恋が隠れたまま終わってしまった事に……