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SF  作者: 真夜
5/14

覚醒の起

昔から、人と喋るのが苦手だった。

と言うと、嘘になる、喋るのは好きなんだけど喋るきっかけの作り方がよく分からない。

どんなことにも、レシピやマニュアル、設計図を求める。

そんな面倒な人が自分だった。


中学に入学して、部活に入らないと高校に受かりにくいと聞いて

叔父が薦めてくれて、自動車部と言うよく分からない部活に入った。

叔父曰く、せっかく中学生から車に乗れるようになったのにそれを活かさないなんて勿体ないとの事だった。


自動車部の入部者は2人しかいなかった。

先輩は3年生が4人と2年生が3人の少ない部員だった。


私と一緒に入部した子は山木と言う、大人しい子だった。

しかし。車の話になるとやけに情熱的に喋り出す面白い子だった 山木とは同じクラスだったし、入部して次の日早速挨拶をした。

そうすると

「えっと...誰だっけ?」

芳村ですよーと叫んだのは今でも忘れないだろう。

いや、だって前の日にあんなに喋ったのに...叫んでも仕方ないような気がするんだよね。


初め半年は先輩や山木と共に免許取得を目指して勉強した。

車が自動運転化されたとしても、免許をとるのはそこそこ大変だ

何かあった時のための通常運転なんかは自転車とは勝手が違うし慣れるまでは大変だった。


免許を取ると草レースに出ようと先輩に誘われ自動車部全員で備品であった、NAロードスターをそこそこ改造して草レースに出た。あまり、カスタマイズしていないから、戦果はそこまで芳しくないけど...それでも楽しかった。車ってすごい...そう思った

今は...もうガソリンエンジンなんて危ないって思われている。

けど、そんなことは無い。楽しかった。


月日が経って

3年が引退して、2年生が...部長に...そして2年生だった先輩も引退して。ついに私達が部を指揮することになった。

その間に新入部員も人数は少ないもののちゃんと入ってきた。

そして

2年間改造したNAロードスターをここに来てエンジンチューンをすることになった。

叔父が車のチューニングメーカーで仕事をしているので、教えてもらいながら、ライトチューンではあるが...改造した。


ライトチューンなので戦果は全く上がらなかったが...楽しかった

そして、私達が引退する前に中学生エンジンOHの大会があったので私と山木は冗談半分で、だけど本気で練習して大会に望んだ。

結果は...私が2位で山木が3位で終わった。

1位の子は私がOHする3分の2の時間で終わらせていた。圧倒的能力の持ち主だった。悔しかったけど実力差が圧倒的だったのでむしろ感動の方が多かった。

しかし、無名中学がこの好成績...次の年は少しだけこの中学に車好きな子が入学したらしい。だけど、それはちょっと後の話


部活を引退して、私達は高校受験を目の前にする初の受験生になったのだ。


進路を決めるのはとても悩んだ。普通科にするか工業系で高卒するか、けど、嬉しいことに私と山木は推薦を手に入れた。

私は山木と同じ高校に入れると思って嬉しかった。

しかし、結果は...私は東雲工業高校と言う新学校へ

山木は呉工業高校と言う所への推薦になった。

私も頑張って勉強して呉工業高校へ行こうと思ったけど、山木にこう言われた。

「芳村は、東雲工業高校に行くべきだと思うよ。そこは芳村を必要としているからさ...学校は別になっても、遊べるからさ」

私を必要とか...

嬉しいけど緊張するセリフを言われた。

そこからの月日はとても、速いように感じた。


受験生なので特にイベントもなく、ただ、山木と学校帰りに古本屋で車の雑誌を読み漁って帰る日々が続いた。

中学生活の3年でこんなにも車の虜になるなんて思わなかった。

けど、車を知れば知るだけガソリンエンジンが少なくなっているロマン無き今が悲しい。そう思ってきた。

最近は、私達が戦ってきた草レースだって、ガソリンエンジン搭載車はほとんどなかった。あ、けど白いGT86なら昔見たな...

草レースなのにドアやルーフをカーボンと言うとガチ仕様なんだから、まぁいいけども...


そこからまた月日がたって、当たり前に受かった高校受験を終え、中学校の卒業式を迎えることになる。


特に、卒業式で思うこともなく、卒業証書を貰った。

卒業式が終わり、外は卒業生が校門で写真を撮ったり、先生達に感謝の気持ちを伝えていた。

だけど、私は特にそんな物は興味が無いのでそのまま帰ろうと思った。帰り道、山木と毎日通っていた古本屋に寄ってみる。

ラノベコーナーやスポーツコーナーを抜け車の雑誌コーナーに行ってみると山木がいた。

すぐに、山木も自分の存在に気づいたらしく喋りかけられる。


「芳村、卒業おめでとう」


「山木もね、おめでとう」

会話が詰まる...本当は最後に言いたい事はたくさんあった。

取り敢えず外に出ようかと言って古本屋を後にする。


「芳村、自分ね、やりたいこと見つけたんだ。」


「え?そうなの?なになに?」

そう言うと山木はバックの中から企画書みたいな物を取り出す。企画書の内容は、RB26DETTのチューニングについてだった。


「RB26DETTってR32のエンジンだよね...何でまた?」

まぁステージアとかも搭載しているけど...置いておこう。


「それはね、呉工業高校にR32があるんだよ。受験の時に見たんだ。それを自分、改造したいんだ。」


「そうなんだ、山木なら出来ると思うよ。楽しみだよ。山木が手を入れたエンジンを見るのが」


「ありがとう。芳村も東雲工業高校でガソリンエンジンを改造出来たら、いいね。」


「うん。私もガソリンエンジンを改造したいな。」


「うんうん。頑張ってね...あ、A80スープラ発見。」


「え?どこどこ?」

山木があっちだよと指で指すと追いかけていく。

そんな山木を後ろから見ていると、今日で山木との学校生活が終わるんだと...と悲しくなってくる。


「今までありがとね。」

そう小声で言ってみる。


「ん?何か言った?」

山木が振り返ってきた。


「何もないよ...ほらほらモタモタしてたらスープラ見失うよ」

そう言って、私と山木の学園生活終了日は卒業式がメインでは無く。スープラを追いかけると言うのがメインで終わりを告げた。


そんな感じで、中学生活は終わりを告げ高校へ入学することになる。


私が高校に入学してびっくりしたことは、SFにスープラで出るということ。

しかも、エンジンは280馬力を叩き出す。最強の2JZ-GTEが搭載されている。すごい改造したかった。

けど、それ以上に山木が居ないからどうやって高校生活を生き延びようかそこが不安だった。


入学してから2日目早速、蒼井さんから家に来ないかとのお誘いがあったが、何故か知らないけど逃げてしまった。


はぁ、なんで逃げてしまったのだろう。

そう思いながら下校しているといつも山木と立ち読みばかりしていた、古本屋まで来ていた。

今の時代なら携帯で本をダウンロードすれば安いし、楽だしでメリットだらけな気がするけど、私は実際に本を手に取って読むのが好きだなっと独り言を呟きながら店に入った。


健康に関する本、ラノベやマンガなどのコーナーでもよかったけど、私が向かった先はあまりでかいスペースではないけど車の雑誌や車に関する工業基礎が置いてあるコーナーだ。

スープラに関する本はないかなと見て回る。

...あった。見つけたのはいいけど本を取りたい所に先客がいる。

うう、退いてくれないかなと願いながら先客の顔を見ると、

今日も昨日も眠たそうにしているから名前ぐらいは覚えた、岩森さんが居た。

岩森さんもここに居るって事は蒼井さんのお誘い断ったのかな、

と言うか岩森さん車に興味あるんだ...けど無いと東雲工業高校来れないから当たり前に有るよねと自己解釈しながら見つめていると流石に気づかれた。


今の私に取れる行動は3つぐらいあるだろうか...

1.逃げる

2.戦う(私から喋りかけるだけ)

3.守る(喋りかけられるのを待つだけ)

と言った感じだろうか。

どれにしようかと悩んでいると岩森さんに喋りかけられたので結果的に3を選んだことになった。


「えっと...誰だっけ、どっかで見た覚えが...」


「芳村ですぅ!同じ高校、同じクラスの」

なんか、この流れ3年前ぐらいにやった記憶が...う...頭が


「ああ、芳村か、なるほど...なるほど」

いきなり、呼び捨てですか...いいですけど、何を納得してるのだろうか。


「芳村はここになんか用あるの?」


「えっと、スープラについて、ちょっとでも詳しくなりたくて」


「なるほど、一緒だね。私もだよ。ここって家に無い本があるし無料で立ち読みできるから結構参考になるよ。」

そう言って岩森がスープラの雑誌を渡してくる。

今から20年前ぐらいのスープラの雑誌だった。

でっかい文字で...2JZ-GTEで夢の500から700馬力へと書いてある。

2JZ-GTEって昨日ネットで見たけど海外では1500馬力とかにしている方もいるらしい。なんてポテンシャルを秘めたエンジンなんだろうと感動しながら雑誌内容を漁る。

内容はごく当たり前なチューンから参考になるものまでたくさんあった。

自分達のスープラだって、いつかはエンジンチューンをする時が来るはず...その時の参考にこの本役に立つかな...

そう悩んでいると...隣の岩森さんがこっちを見ていることに気がつく。


「その...何かな?」


「芳村って結構、車の雑誌買う人?」


「買うけど、どちらかというと立ち読みで済ませる方かな」

そう言うと、岩森はそっかと言ってまた雑誌を読み始めた。

なんだったんだろう...と思ったが流石にそうは聞けない...


私もスープラの雑誌漁りに戻る

次の雑誌は...昔のスーパーGTの各車の性能について迫る的な内容の雑誌だった。

叔父曰く、最強世代と言った時代。

その当時はスープラ、Z33、NSXが主力となりレースをしていた

私は見たことは無いが、今スープラを改造しているから、究極の改造スープラを見てみたいなと思いながらこの雑誌をみる。

私たちのスープラは、ほぼドノーマルだから外装からの違いに流石に呆れてしまった。

エンジンチューンをしたら今度は足回りとか空力もしないといけないのか...お金も時間もすごいかかりそうだな...と思いながら見ている。


「スーパーGTか...」

岩森がこっちの本のタイトルを見たのか知らないけどそう言ってきた。


「ん?どうしたの?」


「うちの親がスーパーGT大好きだから昔のとかDVD焼いて取ってあるなってね思っただけ」


「そうなの?それってスープラのとかもある系?」


「どうだったかな...多分ある系だと思う系かな」

ノッてくれてありがたかった。

けど、昔のスーパーGT。見たことが無いから見てみたいよね。

それを悟ったのか岩森が


「自分の家来る?多分有るから。見る?」

え、行くって岩森さんの家に...行っちゃって良いのだろうか。

けど、見たいからな。


「...その、お願い致します。」

そう言うと、宜しいっと言って、付いてきてと岩森さんに言われたので古本屋を共に後にした。


「その、岩森さんの家って遠い?」


「岩森さんって...岩森でいいよ。家は学校から自転車で5分だから遠くないよ。」

さん付けしなくて良いんだ...良いんだよね?そう脳内整理をする


「けど、羨ましいよ。家が近いのって」


「でしょ。寝坊しても遅刻する確率減るし、帰るのも楽だからいい事尽くしだよね。」


「寝坊って...けど岩森って結構眠そうにしてるけど、何時に寝てるの?」


「ええっとね、大体深夜1時ぐらいかな?」


「お、遅くないかな、私なんか23時には寝てるよ。」

そう言うと岩森が自分をじっと観察してくる。


「だから、身長小さいのか...」


「ぎ、逆じゃないかな?自分は早寝は成長のために必要って信じてるよ。」

あれ、もしかしたら、寝ない方が成長するのかな...嫌違うな。

けど、岩森ってスタイル良いし...そうなのかな?...

そう思っていると岩森が一軒家の前で止まった。


「ここが、我が家だよ。」

そう言って、岩森がドアの鍵を慣れた手つきで開けている。

鍵は何の抵抗もなくガチャっと音を立てて解除された。

あれ...私の家だけかな?鍵抜く時ってすごい抜きにくいんだよね...まぁ、脂させって事だと思うけどね。

そう思いながら岩森について家にお邪魔する。


「お邪魔します。」


「はいはい、いらっしゃい」

そんなテンプレだけど常識なやりとりをしてお邪魔する。


「とと、ちょっと待っててね。」

お邪魔して、早々岩森が2階に上がっていく。

けど、1分未満で帰ってきたので何事かと思う。


「姉ちゃんが居ないか確認して来たんだ。ごめんね。」


「お姉さん居るんだ?何歳?」


「今年で17歳だよ。国際工業高校行ってるんだよね。」


「国際工業高校って、もしかして自動車科?」


「うんうん、NSX改造してるらしいよ。」


「NSXって...どこから引っ張り出したんだろうね?」


「さぁ。分からない、ウチらのスープラも人の事言えないよね」

そう言いながら岩森は笑っている。

岩森はスタイルも顔も良い。そんな人に笑顔で喋りかけられると来るものがあるよね。


「...ここが自分の部屋だよ。」

そう言って岩森が自室の部屋のドアを開ける


「お邪魔します。」


「はいはい、いらっしゃい。ゆっくりしていってね。」

本日2回目のテンプレやり取りをして。部屋に入る。

部屋は綺麗に整理整頓されていて。テレビや何に使うか分からないが小さい冷蔵庫もある。

壁にはアニメのポスターが貼られている。

あれ、このアニメって


「岩森ってアニメ見るの?」


「うん。結構見るかな。芳村は?」


「もちろん。見てるよ。ここにあるポスターのやつ私も好きなんだ」


「へーーじゃあ。これなんかは」

そんな感じのオタクトークは30分は続いただろう。


疲れた、オタクトークって楽しいけど結構弾丸トークになるから疲れるんだよね。岩森の方を見るとさっき気になった小さい冷蔵庫から炭酸飲料を取って注いでいた。なるほど、1階の冷蔵庫にわざわざ行かないと行けない手間を省いているのか。と感心していると。岩森が炭酸飲料の入ったコップを渡してくる。


「その、ありがとう」

そう言うと岩森はいいよ。と言いながら、DVDの山からスープラが参戦していた頃のスーパーGTを探していた。それにしても、流石は結構取ってるて言うだけあってDVDで軽い山が出来ている。

しかも、DVD一つ一つに何年のどこであったかと言うラベルが貼ってあるお陰で比較的短時間で見つけられた。

結構マメなんだなと感心しつつ、ブルーレイを再生する。


2005年のスーパーGTは今のスーパーGTの基本となる水素エンジンを搭載せずガソリンエンジン搭載車だけでのレースだった。

ZやNSX、F1GTRなど今ではお目にかかれない車が走っている。

そんな中スープラはGT500クラスに5台も参戦している。

これは、車が優秀と言うことなのだろうか。


スープラはドノーマルでもスポーティなルックスだが、スーパーGTなどで洗練されたボディはもう戦闘機に近い感じだった。

車重は今さっき見た雑誌曰く1100kgに迫ろうと言う車重へと軽量化。3S-GTエンジンで武装化されている。

当たり前だか、私たちのスープラとは物が違う。


「自分達のスープラってドノーマルでSF行くのかな?」

岩森が聞いてくる。


「多分、車重と空力と足回りは改良するんじゃないのかな?」


「そうか、エンジンは改造しないのかな?」


「どうだろうね、私的には改造したいかな。」


「そうだよね。2JZ-GTEはブーストアップだけで400馬力近くまですぐ持っていける。エンジンだからね。生かしたいね。」

それもそうだ。どんなにいいエンジンも改造しないと宝の持ち腐れ、2JZ-GTEのポテンシャルを引き出して上げないと。

そう思いながらスーパーGTの観戦に戻る。

スーパーGTは大体2~3時間ぐらいあり、見ると案外長いもの。

けど、参考になることも多く、メモをしていると突然膝あたりに衝撃が走る。何事かと膝の方に目を落とすと岩森が私の膝に頭を置いて寝転がっていた。


「あの、岩森これは...」


「膝枕でしょ。芳村の膝なかなかいい感じ」


「せ、セクハラかな?」

これをもし、見知らぬ人にされてたら0.5秒ぐらいで110番に電話できる自信があったが、岩森だからな...と辞めることにした。


「せ、セクハラって基準浅くない?芳村の膝適度な柔らかさがあっていいと思うけどな...」そう言って岩森は私の膝の上で頭をゴロゴロと動かしている。


「ッ...名誉毀損とセクハラで絶対に訴えてやる...」


「まぁまぁ、落ち着いて、ちょっと眠くなったし寝るわ」


「ちょっ...私の名誉が...」

そう言いかけた瞬間岩森は寝ていた。寝るの早すぎでしょ...

って...え、寝てるのか...なんかこの状態三人称視点から見たら

相当まずいんじゃないんでしょうか。

...なんか、足音しない...誰か上がってきてるよね。


「加奈江。部屋いるの?」

ま、まずいですよ...岩森のお姉さんかな?が岩森を探してる。

こ、こんな光景見られたら終わる色んな意味で...どうにかしないと、取り敢えず岩森を揺さぶるが効果はないみたいだ...


「ちょっ...岩森寝るならベッドで寝てよ。」

と言いながら結構力を入れて揺さぶる


「ん...芳村か...そうだよね。寝る前は制服脱がないとね...シワつくし。」


「うん、そりゃ、そうだけど...私が居ないとこでやってください。」


「えー、めんどくさいな...良いじゃん別に...」

そう言って岩森が学生服を半脱ぎした瞬間、部屋のドアが開いた


「加奈江、今日の夜ご飯どう...どう...どうぞごゆっくり...」

そう言って岩森のお姉さんだろう人は部屋のドアを閉めた。

嫌、私悪くないよね...私の膝の上に座りながら制服を半分ぐらいまで上げている岩森...まぁ、一般目線で見たら...ギルティか。


「芳村...今日うちでご飯食べていく?」

岩森は呑気にそう言ってきた...


「わ、私は...悪くないですぅ(多分)」

そう叫んで私は岩森家を後にした。


家に帰って、枕を抱きしめずっと悶絶していた。

いくらパニックになっていたからって、もう少しまともな行動はできなかったのだろうか...そう思いながら、膝に手を当てる。

ここに、岩森の頭が...そう思うとまた悶絶しそうになる。

私の必死な脳内整理は1時間にも及んだ。


大分、思考が蘇って来たので今日のメモをノートにまとめよう。スクールバッグを探すが見当たらない...あっ...そう言えば岩森の家に置いて帰ってしまったな...

突然家を飛び出したり、部屋にバッグを放置して帰ったり...

明日は謝らないとな...そう思いながら今日は寝ることにした。


ベッドが揺れる...んん...朝かぁ

最近のベッドは進化した。指定した時間になるとベッドが揺れて強制的に起こすベッドが開発された...私みたいに朝が弱い人にはピッタリだと思う。


朝ごはんを食べ、歯磨き、洗顔、着替え...そして私の苦行の髪をセットする。こうゆう時髪が長いのはめんどくさい...切ろうかな...よくアニメで黒髪ロングのキャラが人気だから一応そうしているけど、意味無いしな...そうして髪をセットしたら学校へ行く。自転車に乗って約15分ぐらいかけて、東雲工業高校へ行く。


「おはようございます」

そう言ってスープラが眠るガレージに入る。

岩森以外は揃っていて、ディスクには設計図がたくさん置いてある。


「あの、これって...」


「スープラのエアロパーツをFALCO+sで作ることになったの」

FALCO+sはスーパーGTなどで使われるドライカーボンパーツの制作工場。そこのパーツを使うことになったらしい。すごいと思う。これによってスープラは空力と軽量化を図ることが出来る。そう感心していると岩森が来た。


「芳村おはよう。これは忘れ物」

そう言って岩森が私が置いて帰ったスクールバッグを渡してくる


「その、昨日はごめんね...ありがとう」

そう言うと岩森はいいよ。と言って席についた。


佐々木さんがスープラのエアロを作ると言ってから完成するまでの約3週間はあっという間に過ぎていった。

その間、私は古本屋でスープラについての本を読み漁る毎日を過ごしていた。

流石にスープラの本ばっかり読むのもあれなので、普通の車の雑誌を読んでいると...私と山木がでた大会について簡単に紹介されている記事を見つけた。大会記録を見て、私と山木の名前がある嬉しさを噛み締めていると、1位の人の名前が目に止まる。

あれ...これって...


それからの日は早かった。

スープラが完成し、東雲工業高校初の練習会が開催された日。この日からようやく私の工業高校生としての日々が始まったと思う。


SFで500馬力以上600馬力未満のエンジンを組まないといけない事。これをその日、山木から教わった。

これは、私にエンジンチューンをしろと言う山木からの挑戦状だと私は思った。


現段階のスープラはノーマルの280馬力そして、蒼井さんは595馬力+-3ぐらいの馬力を求めている。

私の組む2JZ-GTEの目標馬力は598馬力これを目標にこれから始まるゴールデンウィークを使ってエンジンを組む。


整備するガレージは叔父の会社の所を使わせてもらえることになった。叔父も手伝ってくれるらしいが、私と叔父では少しメンツが足りないと思う。

せめてもう1人、そう思いながら帰っているとお馴染みの古本屋が見える。今日もいつも通り車の古本コーナーに行くが車の雑誌が読みたい訳ではない。今日の用事は...居た。


「あ、芳村か、今日も雑誌漁り?」

ピンク髪の子が振り返る。


「岩森...私と2JZ-GTE改造しない?」

そう言うと岩森は真剣に考え始める。


「へー芳村エンジン改造できるんだ。」


「できるよ、とは言っても...岩森程ではないかな...」

そう言って私はちょっと前に読んだ、古雑誌をペラペラとめくり目標のページに行くと止め、その記事を指さした。

記事の内容は、半年前にあったエンジンOH大会で天才中学生現ると言った感じの内容だろうか。

3位に山木、2位には芳村、そして1位には岩森加奈江っと書いてあった。


「半年前に私達に圧倒的差で打ち破った力、私に貸して欲しいんです。お願いします。一緒に2JZ-GTEを改造して下さい。」


「芳村、まっかせてよ。一緒に最強無敗のエンジンを組もう」

その時見た岩森の顔はいつもの眠そうな顔ではなくやる気に満ちていた。

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