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SF  作者: 真夜
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蒼行会

蒼い空が広がる夜空

そんな空が見えないガレージに眠るGT86を前にして私と佐々木健さんは昔話をしていた

そこで私は、佐々木健さんになんで会いにこなかったのと聞かれた時に嘘をついてしまった。まぁ、本当の話なんだけど中略が激しかったなと...


GT86を事故で壊したのは本当だった。申し訳なかった。

だけど、会いに行けなかったのは...私は2ヵ月ずっと入院していたらしい。


私も気がついた時には退院していて、そして叔母に親とドライブ中に事故して私だけが生き残っていたと言う事だけ聞かされた。


今思えば、気がついた時に退院とか幾ら何でも気が動転しすぎだろ...と思うが、そんな事よりも早く佐々木健さんの元に行って話をしたかった。


だけど、何でだろう...車に乗っても怖くてハンドルすら握る気にならなかった...

事故するのが怖いから?

そう私は、そう思っていたのだろう..そこで辞めておけばよかった。

それを押し殺して、ハンドルを握って運転したら事故をしてしまった。

親が事故死して一ヶ月未満で私も事故...本当に学習能力が無いなと思った。怪我事態は軽傷ですぐ治ったが...

二度と車なんて乗りたくない。そう思った。


約1年と半年前の私の思いはこの日、佐々木健さんによって破かれた気がする。


その日の夢は佐々木健さんの小学生時の将来の夢について語っている夢だった気がする。

想像を形にする。いい言葉だったと思うしそれを行動に移したものが、私たちのスープラに付けられた。

負けられないなーそう思って迎えた今日の決戦日。

朝の日差しが眩しかった


私は、車のレースは1人でただ、黙々と走っていただけなので知らなかったが...SFは団体戦当たり前だが準備が違う。

私が一番びっくりしたのは...データ収集班として情報電子科が応援に来てくれたり、車は乗ってサーキットに行くのではなく、ドラマとかアニメでよく見るトラックに載せて運送すると言う事らしい。


今回は交流戦と言うことで県内の工業高校との練習試合と聞いたけど、どんな車と戦うのだろうか。

同じ馬力での勝負なら超軽量仕様のスープラが負けることは無いと思うが...練習試合だしな...どの車がくるのかな


「まやちゃん、大丈夫」

佐々木健さんが喋りかけてくる


「うん、大丈夫だよ。ちょっと今日の対戦する車が気になって」


「大丈夫だよ、まやちゃんならどんな車にだって勝てるよ」

佐々木健さんが近づいてくる。ちょっと距離が近いような気がするけど、気にしない。


車内を見渡すと私と佐々木健さん以外寝ていた...

フリーだな、と思いながら窓から見える瀬戸内海を見る。

今はまだ春で海に入る気にすらなれないが、綺麗だな。

瀬戸内海が見えるきれいな町、呉とても静かでいい雰囲気だった


広島県には東雲工業高校、呉工業高校、国際工業高校の3つの高校に自動車科がある。

今日は、呉工業高校で交流戦が行われる。


着いた...ここが呉工業高校、我が校、東雲工業高校よりも広く歴史がある様な校舎。

ここは、テストサーキットや風洞実験棟があるなど施設もかなり良いだろう。

今回はその、テストサーキットを借りて走行するのかな、と思う


「こんにちは、呉工業高校へようこそ」

そう言って出迎えてくれた方がいた


「私は竹下恋羽と言います」

竹下恋羽、見た目がもうお姉さんって感じだろうか

黒髪ロングでとても大人しい感じだった。


「こちらこそ、よろしくお願いします」


「あら、貴方は蒼弾さんですか?よろしくお願いしますね」


「え、まぁ、そうかもしれないですね」

な、なんで知ってんだろう...


「あ、そう言えば私達の高校で改造してる車を見せてなかったですね。付いてきて下さいね」

そう言われてたので、ピットまで付いていくとマットブラックに染め上げられた車があった。


日産スカイラインGT-R32

日産のスポーツカーとして有名なGT-R、今ではR35シリーズまででて、毎年マイナーチェンジされて販売されている。


GT-R32のスペックを紹介しよう。

まず、R32は日産の901活動と言う。日産の車の車体運動性の底上げを図る活動の集大成で生まれたものである。


RB26DETTと言う直列6気筒、ツインターボエンジンを搭載していて、馬力は280馬力を発生させる。

更に、当時では最新鋭のATTESA E-TSと言い、通常時は運動性の良いFR駆動、そして後輪のグリップが限界値に行くと一時的4WDの優れたトルクを引っ張り出すシステムである。


さらにもう一つ、Super HICASと言う電子制御四輪操舵機構を取り入れている。これを入れることによりR32の様なヘビーウェイトの車でも運動性向上されている。


更に駆動方式も4WDと言う事なので、雪道も悪路もお構い無しと言う事から陸の王者とも言われていたらしい。


280馬力という驚異の馬力に当時の最新鋭システム、4WDと言う駆動方式を採用したモンスターマシーンである。


あれ、280馬力って私たちのスープラと響子のNSXと同じ馬力である。と言うことはSFでは同じ土俵で戦うことになるのだ。


「あの、このR32ってガソリンエンジンですよね?」


「はい、そうですけど」

竹下恋羽さんが当たり前のように喋る。

と言うことは広島県の工業高校は全部ガソリンエンジンでの出場と言うことになる。

これは、面白いことになりそうだなと思った。


「えーと、それでレースについてですけど」

ああ、そうだったGT-Rに感動していて忘れてたけど今日はレースしに来たんだった。


「私たちのGT-Rは500馬力今あるんですよ...」

ん?いやいや、500馬力って、え?う、嘘でしょ

500馬力のエンジンを作ることに驚いたが、女の子が500馬力って運転出来るのかなーと思った。


「えーと、500馬力ってまた、なんで?」


「あれ?知らないですか?SFのクラス分けの最高ランクは500から600馬力のクラスなんです。だからそれを目指しての取り敢えず500馬力です。」

え、知らなかった...500馬力か、まぁ私たちには別世界だな。


「その、500馬力のエンジンって誰が組んだんですか?」


「ふふ、それはですね。この子山木ちゃんが組んだんですよ」

そう言って竹下恋羽さんが指した子は大人しそうなロリっ子って感じだろうか。芳村と並べたらいい感じになりそうだな。


すごいな、この子が500馬力のエンジンを...そう感動してると山木さんがこちらの方にくる。嫌、私ではなく私のさらに奥、芳村の方に行った。


「芳村、久しぶりだね。」

そう言って芳村に喋りかけた

喋りかけられた本人はもう固まってんじゃないかな...


「そ、その、ひ、久しぶりだね」

すごい噛んでるじゃないかとツッコミたかったけど抑えた。


「芳村、なんで、スープラのエンジンチューンしないの?」


「そ、その、馬力上げていいって今日初めて知ったから」


「あ、そうなの、私は芳村が組んだエンジンと戦いたいから早く組んでよ」

そう言って山木が去って行った


「その。話が逸れましたが、馬力が違うので今回は10ラップで1ラップハンデと言うのでどうでしょうか?」


「1ラップっていいんですか?」


「はい、このテストサーキットは1周3.7kmのコースなので37kmのレースですので。多分これぐらいが丁度いいんじゃないんですかね。それにコーナリングのテストコースなので車重的に見てもいい感じだと思うのですけど。」

なるほど、確かに馬力では圧倒的に不利だけど

車重は350kgぐらい軽い...勝機はあるだろうかな?


「分かりました。やりましょう」

そう言って勝負の火蓋が切られた。


レース開始前のミーティングに入る。

「ええ。じゃあミーティングに入るけど、あんまり時間ないんで。とりあえずタイヤはスリックタイヤにしようか。」

美希が手っ取り早くセッティングしてくれる。

とは、言っても37kmなのでそこまでセッティングしないでもいいのでは...と思ったけどありがたかった。


「お姉ちゃん、取り敢えずセッティングは終わったけど相手は500馬力、リズム崩されないようにね」

そう言って、葵ちゃんから何かを貰った


「これは?」

葵ちゃんから貰ったものは蒼い宝石の様なもので構成されたアクセサリーだった。


「お守りかな、車内でも飾ってて」


「うん。その、ありがとうね!」

そう言うと、葵ちゃんの顔が火照った。

ま、まぁ、例言われて嬉しくない子なんて居ないよね。


スープラの車内に入り、ドリンクホルダーにお守りを取り付ける

よし、行きますか

鍵を刺して、エンジンを始動。とてもいいエキゾーストノートに心震わされ戦場に出向いた。


「それじゃあ、ルール説明ね。スタートはお互い駆動系保護のためにローリングスタートにして、1周走った後にレース開始。」


「うん。いいですよ。それじゃあ、行きますか」


R32を前にしてタイヤを温める作業に入る。ここでタイヤを温めないとすぐに抜かれてしまう。


そうして、コースを眺める。

コーナリングの試験コースだけあって

低速、高速コーナーが多いコースだった。

車線も狭いとこが多く、SUGOサーキットのように事故が多発するんじゃとちょっと不安になる。


それだけに、馬力もだけど、ここはトータルバランスかな必要なのは...


とと、そろそろレースが始まるな...

そう思った瞬間R32がアクセル全開、レース開始だ。


レースの1から3周にかけては特に危機感を覚えることなく。

必死に走った。

ピット内から連絡が入った


「まやちゃん、1から3周のタイム差を計算してたらこのまま行けば8周目にはまやちゃんの後ろにR32が来るわ。気をつけて」


え。8周、速くない...ドックファイトで2周も...無理そ...

取り敢えず、時間を削って行くしかない...

コーナーを丁寧にそして素早く曲がっていく。


低速コーナーと言うかコーナリングに正解は無いって言うのはよく分かるよな。今のだって結構やらかしたし。


当たり前だけどタイヤのグリップもフルに使っていく...

こっちがフルにタイヤを使っても先に熱ダレするのはR32の方だろう。


ストレートは馬力勝負ここだけはどうしようもないが

コーナーは車重が軽いこと、ダウンホースが効いてる事もあり結構綺麗に曲がれる。

軽さがどれだけ車を変えるのか分かった気がした。


7ラップ目に突入する。

タイヤのグリップは最大限に引き出せている。


そして、8ラップ目に入りロングストレートで遂にバックミラーにR32が写った。

ロングストレートが終わり次はRのキツイコーナに入る。

ここでは、差は開いているだろう。。しかしストレートで差が縮まっている。

9ラップ目にはほぼサイドバイサイドになろうとしていた。

まずい...どうしよう...

自分なりに、最短コースを走ってこのざまだ。

私は蒼弾ではもう無い...今はこのR32の方が速い...

昔の私は...どうやって蒼弾と言われる様な走りをしていたのだろう。

そう考えていると、葵ちゃんから貰ったお守りが目に写った。

その、お守りを構成している蒼い宝石が光っている。

見ていると感情がその蒼に塗りつぶされそうになる。

心が体から抜ける様な感覚...


何でだろう。さっきのスピードよりももっと速いスピードでもコーナーが曲がれるそんな気がしてくる。

R32がアウトから抜こうとしている。

それをスープラがギリギリの所でコースで踏ん張った。


残る距離は500mここからは二つのコーナーとそこからの上り下りしかない。このコーナーで距離を開けないと負ける。


けど、何でだろう。全然焦ってないし、さっきまで怖かったコーナーが全然怖くない。

後ろのR32を確認しようとバックミラーを見た時に写った私の瞳は普通は黒なのに蒼かった。な、なんで...けど今はレースに集中しないと...


ピット内がざわついてる

それもそうだ、ラスト1ラップの時にスープラの挙動が変わったからだ、みんな、ブレーキが逝ったとか、タイヤが熱ダレしまくってんじゃと...不安になっている


だけど、違う...この高速コーナリングを実現することが蒼弾なんだ。私は知っている。ずっと見ていたから...


「最終コーナーに突入したけど、まやちゃん頭逝ったのかな?めちゃくちゃえぐい、進入角度だよ。」

頭逝ったって...私の姉に向かって言いますかね...


「佐々木健さん、あれが姉、蒼弾ですよ。昔から蒼い物を見ると恐怖心が抜けて無心になる。だから、常人が恐怖してブレーキを踏むスピード以上の領域でコーナーに入ることが出来るんです。

それでいてブレーキングポイントはほぼ理論値と言っても過言じゃないとこまで行ってます。」


そうは、言いながらも私は心配だ...お姉ちゃんに車を乗せることすら本当は嫌なのにあんなに攻めている。怖くて仕方なかった。

どんなに、速いスピードでコーナリング出来てもそれはハイリスクになる。

その、リスクを忘れていたから...私達は...


そう思っている間に勝負は決まった。

勝ったのは蒼く輝くスープラだった。


「負けちゃいました」

竹下さんがそう言ってくる


「今回はコーナーが多かったのでそこまでパワー差が出なかったってのが大きいと思いますよ。」


「そうですか?もし、そうだとしても、真夜さんの最後らへんのコーナーの突っ込み素晴らしかったですよ。」


「あの時は、もうとにかく必死で...取り敢えず今日はありがとうございます。」


「いえいえ、また今度戦う時は同じ馬力でやり合いたいとこですね。」


「はい、今度も負けませんよ。」

そう言って呉工業高校を後にした。


その後、疲れたのか知らないけどその後の事は覚えてない無い。


月曜日の学校ほどダルイものはない...

それに昨日はレースもあったし...休校にしてくれてもいいんじゃないかな...

いや...それに私の蒼目治ってないし...眼科行けばいいのかな

天然カラコン、なんてステータス要らないな...

そう思いながら登校していると後ろから声が聞こえる。


「...あの」

芳村だった、芳村に喋りかけられるなんて珍しいな


「えーと、何かな?」


「あの...その、私に2JZ-GTEのチューニングさせてくだはい」

してくだはい...噛んだなっと思いながら

昨日、山木さんが芳村はエンジンチューン出来るとか言ってたなと思い出す。


「そりゃ、勿論任せたいけど、590馬力ぐらい出せそう?」


「はい、任せてください。その、頑張ります」

その時の芳村はとても頼り甲斐のある顔をしていた。


「うん...それじゃあ、お願いしようかな」


そう言いながら...周りを見渡すといろんな人が私達を見ながらやばいとか言っている。


芳村の後ろにあった鏡を見ると

ロリっ娘と日本人離れした蒼眼少女が映っていた...

よし。眼科に行こう。そう決意するには十分な理由だった。

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