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SF  作者: 真夜
3/14

Fixedstar

将来なんて考えたことがなかった。

高卒するのか、大学に行くのかすらまだ先だと思っていた

中学2年生の頃。

あの時、あの蒼く輝く車と蒼弾に出会わなかったら多分今の人生は無い。

風洞実験室の様子を見守りながらそう思った。


風洞実験

車の空力を求めるにはこれが1番効果が高いと思う。


風洞実験はでかい扇風機の様なもの送風機から風が送られる

車のボディに糸を張り付けてそれがどう動くかによってエアロダイナミクスがいいか悪いかを調べる。

この、A80スープラはいい、とても、しかしサーキットで走るとなるとやはり、もっといいエアロダイナミクスを得ないとそう思う。


どんなことも行動しなければ始まらない。

データーを参考にエアロやウイング、デフューザーを作る。


自分がこんなに設計したいと思ったのは久しぶりだ...


しかし、この蒼く輝くスープラ...似ている、と言うか全く同じだ

あの時の蒼く輝く車に...


「健、ご飯できたよ。」

と親から連絡がきたので作業を中断する。


家の晩御飯は豪華だ...

そんなご飯を食べながら親に相談しなければ...そう思う


「父さん、あの自分の学校でA80スープラを改造することになったのは言ったよね」


「うん、聞いたね。それでさっき、風洞実験室に持っていたと言うことは、作りたいんだろ?エアロやその他もろもろのcarbon+パーツを。」

お父さんが、笑顔でそう言ってきた。


「うん、けどお金もかかるから...そのどうかなと...」

私は、ここでお金がかかるから辞めろ!って言われたら、どうしようと、恐怖に包まれながら言った。


「ハハハ。健がやりたいと思ったことだ...やりなさい。父さんも手伝うよ...それに、あのスープラは似ているな。」

素直に受け止めてくれた、父に感謝しつつ、父の言った言葉の意味を考える。

似ている...確かにね...あの車に本当に似ているよ...


「うん、そうだね...本当に...」

そう答え、作業室に戻る。


試作品の制作に入る。

試作品の設計図を作業員の方に再現してもらった。

取り敢えずフロントスポイラーと、サイドスカートとリアスポイラー、ウイングの制作。

フロントスポイラーとかはダクトを付けて熱を逃せる構造にしたい。少しでも軽く、流線型に近づけるこれが私の仕事だろう。

これに出来ればアンダーパネルやカナードとかを付けたいとこではあるが取り敢えずはこの4点でと言うことで、

明日完成と言うことなので今日は寝る。

明日は土曜日だし、試作品の実験が出来る。


今日の夢は少し変だった...

自分がよく分からない小学校に編入する夢を見た。

あれ、まず自分の小学生活って...何してたっけ...

よほど、興味がなかったのかもしれない。


実験2日目

今日は父に手伝って貰えるとのこと。


試作品が出来上がっていて、従業員の方に感謝しつつ。

装着して風洞実験をする。


父さんもこれは凄い...と言うぐらいの性能らしい...

よかった...データで見ても良い非常に...

だけど、ここまでは父さんのエアロ制作を見て学んだことを行動に移しただけ、ここからのオプションパーツこれが一番の鬼門になる。

カナードなんて作ったことなんてないし、アンダーパネルなんて

親が作ったとこなんて見たことがなかった。

父に作り方について教わった...

その間、父はホイールやバケットシートなどの設計をしていて

嗚呼、FALCO+sって色んなパーツ作るんだなと思った。

しかし、カーボンホイールなんて高級なもの...どの車に付けるのだろうと思った。

えーと、制作プロジェクト名は、なんて読むの...これ...


午前に頼んでいた、アンダーパネルとカナードの試作品は午後には出来ていた。本当に自分の会社やべーなと思いつつ装着して、

データを見ると思ったより良くない。

無いよりかはいいけど...これじゃない気がする。


父に助言を貰おうと思ったが...父は制作工場に行ったらしく

いなかった...


自分で、従業員に教えて貰いながら作る。

ネットを多用して作る...作り続けた

...納得はできるものが出来た。だけど、何かが足りない気がするもっと上に行けるのでは...そう思う。

これ以上やっても無駄なので今日は寝る。


今日もまた奇妙な夢の世界だった。


昨日編入?した小学校には蒼井ちゃんがいた。

なんでなんだろうか...まぁ、夢だからなんでもありか...


「佐々木健ちゃんてさー将来何なりたい」

小学生の蒼井さんが言ってくる。

夢の中で出てくるなんて...相当気にしてるなと思う。


「うーん、決まってないなーまだ先だし」


「私はねー創りたいものを形にして行きたいな...だってそれって...

蒼井さんの会話が途切れるぐらいどうでもよかったのかもしれない。


創りたいものを形にする。その力がある...っか...

そう言いたかったのかなっと思いながら起きる

今日は実験3日目、日曜日

今日完成出来ないと平日の授業で車を使うため、放課後いちいちここに運ばないといけない...それはめんどいので出来れば今日終わらせたい。


今回のカナードのデザインはスーパーGTで活躍してたスープラのカナードを真似て作る。

結果はいい感じ...いいデータが取れている。

これでもいいけど...あれ...なんでなんだろう。

この、失敗もが喜びに変わるようなこの感じ...

私って物作りが好きなのかな...そう思う

今思えばそうだった...中二の頃...ただ、興味もなく機械のように空力実験ばかりする女と、機械のよう車を走らすだけの女がいた。


そんな、女同士がある日突然、出会って、仲良くなって...

少しずつ、2人とも、走るのに、空力実験やモノづくりに興味を持ち初めて行った。楽しかった...

何もかもが新鮮で、失敗しても、成功しても取り敢えず喜ぶあの時が...そんな日々を作ってくれたのがあの蒼く輝く車だった。

しかし、いつからかな...その蒼く輝く車と少女はここに来ることはなくなった...



青い空が綺麗な昼だった。


「ねーねーけんちゃん」

真夜ちゃんが言う、嗚呼そうか、昔けんちゃんって言われてた気がする


「ん、なに?」


「けんちゃんって、将来なになりたいの?」

その時の私は当たり前のように言った


「私はね、想像したものをそのまま形にしたいな...だって」


ピピーと言う機械音と共に試作品の空力実験結果が出た。

結果は...いいと思う、いやこれが自分の限界だろう...

いい物ができた。スーパーGTでのノウハウと私自身の想像を合わせたもの。これを今は試作品の材料なのでcarbon+で構成させる。


carbon+でのパーツ作りは2週間ぐらいかかる。


早速、設計図を制作工場に持っていく。


「あの、これよろしくお願いします」


それから、2週間は早かった...


その間に起こった出来事としては、真夜ちゃんの調子が悪い...全然スープラを乗りこなしてない気がする...これじゃあ明日の試合には...とても勝てる気がしない


放課後...


「あのー真夜ちゃん今日うちにスープラ持ってきてくれない」


「うん、いいよ...佐々木健さんの家に行くのって久しぶりだな」


「うん、そうだね。中二ぶりかな」

けんちゃんと言ってくれてない...やっぱりあの時のことは...

自分と真夜の中には友情なんて無かったのかなと思えてしまう

それとも、昔と今は違う...そういう事なのだろうか


_______________放課後_______________

スープラは父がメインとなってオリジナルエアロパーツの取り付けをしてもらう。


...気まずい...

完全に真夜ちゃんとの会話のネタが無い

いや、あるでしょ、こう今つけてる、エアロがどんなものかとか

これでウイングとか付いたのに200kgも軽くなるよ...とか

うう、気まづいなー


「あのー佐々木健さん、このスープラってcarbon+使うとどうなるのかな?」

ビックリした、今自分が思ってることが言われたから


「えーと今回のエアロでウイングやデフューザー、カナード、アンダーパネルを付けても車重は約160kg軽くなるし、ダクトを付けたらから排熱性もかなり上がったと思うよ。」


「そうなんだ、すごいね160kgも軽くなるってどうなるんだろうねー動きが。」


「多分、あの時と同じぐらい、それ以上かな。」


「そうか...あのGT86と同じぐらいか?」


「あ、あの真夜ちゃん...どうして、来なくなったの?あの時...」

自分でも、なんで言ってしまったんだろうと思った。


「...佐々木健さん、ちょっと付いて来てくれるかな。」

ん?真夜ちゃんの、言っている意味が少しの間理解不能だった。


ここなんだけど...と真夜ちゃんが連れきたのはガレージだった。

ガレージを開けると目の前には潰れたGT86があった...


「私、なんなんだろうね...いつからかな...たまに夢で事故した夢を見てたんだ...それは予知夢だったのかな...この私と佐々木健さんを繋いでくれたGT86を私が壊す...それを壊して怖くて逃げてしまった...すいませんでした。」

真夜ちゃんが謝ってくる...違う...このGT86なんてどうでもいい。私はただ、真夜ちゃんと過ごす日々が欲しかった...


「真夜ちゃん、いいんだよ...確かにこの86はもう治すのは無理かもしれない...けどね...私は今真夜ちゃんとまたこうして車を改造できることがとても楽しいんだ」


「けんちゃん...その私も嬉しいよ...だけど、また壊したら..って思うとさ...怖いよ」

真夜ちゃんの手が震えていた...

どうしようと思った瞬間、いや、その前から私は真夜ちゃんの手を握っていた。

真夜ちゃんがびっくりした顔をしてくる。握った自分も何で、こんな事したんだろうと思う。


「その時は、また私が直してあげるから...真夜ちゃんは速いんだから...明日の練習試合は全力で走ってくれたら私はそれで十分だよ。」


「けんちゃん...任せてだって私は、蒼弾だから!」

その時の真夜ちゃんは笑っていた


「ふふ、宜しくね、蒼弾!」


「蒼弾と恒星が手を取れば勝てない相手なんかないね。」

蒼弾と恒星...これは中学の時にお互いが名付けた中二病感満載のコードネーム

蒼輝車が弾丸の様な速さで走ることから取られた名前と、恒星は自ら光り輝く星、その名の元で自らが光り輝くぐらいの性能のものを創造することからその名が取られた。


「真夜ちゃん、覚えていてくれてたんだね...」


「けんちゃんとの思い出、忘れるわけないでしょ。」

笑った昔のように...この時間が永遠に続けばいいのになと思った

そんなことを考えながらみた夜空は蒼かった気がした。


電話がなって...親からスープラのエアロ換装が終わったと連絡がきた。

今の空気ぶち壊しだなと怒りつつ、工場に戻る。


「ただいま...」

帰った挨拶をしようと思った瞬間息を呑む

だ、だって、目の前にはあるスープラは...すごいかっこよかった。

ノーマルの外装とは全く異なっている。

スポーティながらガッシリと構えるボディにウイングやデフューザーが付いている。


すごい...あれ、ホイールとか内装も変わっているような気がする

ホイールをトントンと軽く叩くと返ってくる音はカーボンの打音。

父さんの方を向くとドヤ顔だった...と、父さん...ん?中も見てみろ?

父さんのハンドサインに急かされ車内を見る。

こ、これは...ダッシュボードやシフトケースがもろもろカーボン製になっていた。更にシートもカーボンバケットシートになっていた。

ダッシュボードやバケットシートにFixedstarとロゴが入っていた。


「父さんFixedstarってなに?」

ドヤ顔の父さんに聞いてみる。うん、確かにイケメン行動はしたけどね...


「Fixedstar計画って言ってね。このスープラはその実験機だ

普段は外装だけにしか使わないcarbon+を内装やホイールに多様することによって更なる軽量化を図るんだ。このスープラの場合は合計で約400kgの軽量化に成功してある」

400kgって凄いなと思う...確かにガラスもアクリルに変更されているし。内装だって余分なものは排除されている。

その代わりにロールケージが組みまれていた。

さらに私が考えていなかったルーフやミラー、ドアもカーボンになっていた。

極限までの軽量化...すごい...


「ちなみにFixedstarはな...恒星って読むんだぞ。」

恒星...それは私のコードネーム...父さんありがとう

今回の軽量化により車重は1510kgから約1110kgへ生まれ変わった。

生まれ変わったスープラにはFALCO+sとFixedstarというロゴが刻まれていた。


「真夜ちゃん、どうかな、このスープラ?」

私は、自信はあったけどそう聞いてみた。


「最高だよ、けんちゃん、それに、けんちゃんの父さん。」

真夜ちゃん、元気よくそう言ってきた。

...よかった。本当に...



「うんうん、頑張れよ...そうやーこのスープラの内装を変えてる時に前のオーナーなのかな?その人の名刺が入っててなー使わないとは思うけど...一応学校に渡しておいてくれるか。」

そう言って渡された名刺、失礼ながら読ませてもらった。

黒井護さんって言うのかまぁ、別にどうでもいいけど 。


「分かりました。それじゃあ。本当に色々とありがとうございます!」

そう言って真夜ちゃんは帰っていった。


真夜ちゃんが帰ったあと、父さんにもう一度では足りないぐらい感謝をして、部屋につく...


胸のドキドキが止まらない...多分これはスープラが激変した感動だろう。そうでしかないだろう。うん。

よ、よし、寝ますよ...誰に言い聞かせてるか分からないがそう言い聞かせて睡眠する


夢の中の小学校だ。

当たり前のように真夜ちゃんが喋りかけてくる。

う、真夜ちゃんちょっと、幼い頃から可愛すぎませんかねと変態何じゃないかと思いながら話を聞く。


「けんちゃんはさー将来なりたいもの決まった?」


「うん、私はね、創りたい物を本当に形にしたいな。だってそれってさ...すごい楽しいし素敵なことじゃない?」

私は、ほんとに車が好きなのか分からない。

もしかしたら、車なんてどうでもいいのかもしれない...

けど、モノづくりを通して人がモノに興味を持ってくれたら...それって幸せな事じゃないかな...私はそんな事がしたい。


そう思いながら見た空は青く澄んでいた。

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