ほのぼの38! はなまつり②!
「おう。ブラックにユウゴ。来てくれたのか」
ポロックさんの家は、俺たちの家とは反対側、村の北、東側にあった。村の農家はほとんど北側に位置しているので、俺たちの家が西側で、ポロックさんの家は東側という意味で反対側だ。
ポロックさんの家の敷地に入るや否や、綺麗に装飾された門の左側にテントが張られており、そこでポロックさんに声を掛けられた。
「あぁ。お前んとこが一番目の見回りルートだったからな」
と、幼馴染であるらしいブラックさんがまず言葉を返す。
「こんにちは…って何やってるんですか?」
俺も後に続いて挨拶をしようとしたところで、ポロックさんの姿を見て俺は反射的に疑問を呈する。
「何って見りゃあ分かるだろ。花祭りだからな。稼ぎ時だろ?」
ポロックさんは俺の問いに、さも当然のように答えた。
そうポロックさんは、テントの下でテーブルに商品を置いて商売をしていたのだ。花祭りだから、稼ぎ時って……。あんた、今日の朝もバザールで商品売ってただろ。しかも、朝見た時より若干値段が高いし。
「まぁ、なんだユウゴ……言いたいことは分かるがポロックだ。気にしない方が楽だ」
と俺の表情で察したのか、ブラックさんは俺の肩にポンと手を置き、そう話した。
うん。まぁ、ポロックさんだしな。この言葉で片付けよう……。
「どうだ。ユウゴ。また買っていくか?」
「買うかよ!」
朝も買っただろ。買うわけねぇじゃん。
さて。気を取り直して、ポロックさんの屋台は無視して、俺たちは、ポロックさんがエントリーしている花畑へと向かう。道中出会ったポロックさんの奥さん…チュウさんに案内されながら、ポロックさん家の広い敷地内を歩く。ちなみに、ポロックさんの奥さんもニワトリさんである。去年の12月に生まれたという生後4か月の赤ちゃんも同様だ。赤ちゃんもニワトリなんだよな。ヒヨコじゃなく。
そして、忘れていた…というより、考えていなかったのだが、ポロックさん家は養鶏場である。至る所に鶏がいる。もちろん、金網で囲われている奴もいれば、柵で囲われているだけで、自由に放牧されている奴もいる。まぁ、この際ニワトリの飼育法は何でもいいのだが…。とりあえず、俺が言いたいのは……うちの子供たちがそれはそれは大興奮なのである。
「キャー♪ ニワトリさん!」
「くろいニワトリ!」
「ヒヨコ!」
「ぶー!」
ブラックさんの息子であるシュル君は、落ち着いているのだが、うちの子たちはご覧のあり様である。
初めて、こんなに多くのニワトリを見たからか、養鶏スペースに来た時からテンションMAXである。
「キャー♪ あれはウコッケイ! オナガドリもいるわ!」
ちなみに、約1名、大人もテンションMAXである。うちのハナである。
俺は、ニワトリの品種とかそんなに知らないんだが…。
「チュウさん凄いですここ。すべての品種が揃ってるんじゃないですか!?」
「いやーそんなことはないわよー」
「とにかく、凄すぎます。図鑑でしか見たことないのばっかりいます!」
いや、そもそもニワトリの品種が載っている図鑑を俺は見たことないのだが。
と、うちの家族のせいで、若干遅れつつもようやく花畑に着いた。
「お、おぅ。予想外だった」
「すごーい!」
「ポロックめ、今年もこれで来たか……」
「去年よりも凄いわよ?」
花畑に到着して、俺たちが見た第一感想はこんな感じだった。上から俺、ハナ、ブラックさん、ブラックさんの奥さんミロさんの言葉である。子供たちは、驚いているのか言葉を発していない。
そこには、一輪の超巨大なひまわりがドンッ! と主張して咲いていた。
そのデカさ凡そ、全長7メートル。
ポロックさん家の敷地にある風車に隠れて気付かなかったが、近くで見ると中々の大きさである。
くそ。何かしら、ファンタジー要素が絡んでくると予想はしていたが、まさか、大きなかb……大きなジャガイモと同じ、巨大シリーズで来るとは…。
「花祭り…これでいいのか…」
まぁ、観光で人を呼べれば何でもいいんだろうけど。一輪って……。初っ端から先が思いやられるぜ……。
と、一人遠い目をしている俺に気付いたのか、ブラックさんが話を切り出した。
「一応、解説するとだな。まず、このひまわりのポイントは2つだ。何かわかるか?」
「2つですか?」
1つは、まぁ巨大なところだろう。もう1つはなんだ?
「あぁ。2つだ。1つは見て分かる通り、ここまで巨大に育てることだな。もう1つは分かるか?」
と、問いかけるブラックさんに、俺は腕を組んで考える。
「うーん……」
「ヒントは、季節だ」
首を傾げていく俺に、ブラックさんが助け舟を出してくれる。
「季節? あ! ひまわりは、夏の花なのに、今…春に咲いているということですか!」
と、俺はポンッと手を叩いて答える。
「正解だ。夏の花を春に、大きく育てるということは、意外と難しいものだ」
なるほど。そういう観点から見るとまた違って見えるものか。
「っていうか、ポロックさんも養鶏をしているだけじゃないんですね」
「そうだな。養鶏をメインにやってはいるが、見て分かる通り、土地はあるからなこの村。余っている土地を遊ばせておくのも勿体無いし、自分たちで食べる分の野菜とかはみんな育ててるからな。例え養鶏をメインでやっていたとしても、土くらいは弄れるもんさ」
俺の疑問に分かりやすく答えてくれるブラックさん。
ということは、養鶏をメインでやっているポロックさんにも、俺は作物で勝てないという事もあり得ると。うわー。それは、それで嫌だなぁ。花祭りが終わったらもっと頑張らないといけないな。
「ユウ君ー。カメラ出して。写真撮ろ! 写真!」
と、ハナが俺に催促してきたので、俺はカバンからカメラを取り出す。
ブラックさんに頼んで、俺たち家族と巨大ひまわりを撮ってもらう。
それから交代して、ブラックさん家族も撮ってあげた。
「あとで、プリントアウトして渡しますね」
「おう。なんだかよく知らねぇが、よろしくな!」
それから、ポロックさんの農場で30分くらい過ごした。
大人たちは用意されたベンチで休憩し、子供たちは追いかけっこをして遊んでいた。
途中これ見よがしに、ポロックさんがアイスクリームを売り始めたが、今日はポカポカ陽気で暑かったので、まぁいっかと思って家族全員分購入した。
良いタマゴを使っているからか、ポロックさんが作ったというアイスクリームは、とても美味しかった。たまには、いい仕事しよる。ワイバーンさんを撃ち落とすぐらい変人なのに。
俺たちは、アイスクリームを食べたあと、ポロックさんの敷地をあとにして、次の花畑へと向かう。
次は、村長の息子さんでモネちゃんとレオ君のお父さんであるヴィンさんの花畑である。俺の誕生日の時も食堂に来てくれていた。普段は、奥さんのミレーさんと山でキノコや山菜を取ったりしているらしいが、花祭りにはエントリーしている。
「うわー! 綺麗!」
「これはまた凄いな……」
「カラフル!」
「きれい!」
「すごい!」
「ぶー!」
ヴィンさんの花畑は、ポロックさんのようにインパクトに欠けるもののちゃんとした立派なチューリップ畑だった。畑の空間を拡張しているのか、見渡す限り、視界一杯にチューリップが咲き誇っている。
色ごとに分けられて植えられたチューリップは、曲線を描いてカーブしていたり、丸く模様が作られていたりととても細かいし、一面ランダムに色とりどりに咲くチューリップも見ていて爽快だ。また、所々に配置してあるミニチュアな風車もオランダの雰囲気を醸し出していて、俺的にはとても高評価である。これぞ花祭りという感じだ。何処かの巨大な一輪の花とは大違いである。
とりあえず、暫定1位と心で決めて、俺はチューリップに埋もれる家族の写真を撮っていくのだった。
どんどん雑に扱われるポロックさん。




