ほのぼの31! すらいむはんと②!
「ほら! ユウ君そっち!」
「分かってる!」
指示を出すハナに返事をしながら俺は網を振る。
――――ぽよーん。ブシュ!
と、青いスライムは、時間差を見極めてから跳ね、青いペイントをかけてくる。
「フタバ!」
スライムが跳ねたところで、落下中は跳ねることが出来ないところを狙って、ハナがフタバに声を掛ける。
「はいって!」
――――ブシュ!
と、落下地点に網を構えたフタバに、スライムがペイントを吐き出した。
「うっ!」
と、その影響で顔を背けたフタバは網をずらしてしまう。
――――ぽよーん。
と、スライムは網から逃れ、また跳ねて逃走を図る。
「貰ったー!」
と、跳ねて逃げるスライムに対し、先回りしていたハナが網を振るう。
――――ブシュ!
「きゃ!」
だが、途中スライムにペイントをかけられ、またもや、逃げられてしまう。
「………」
俺たちの身体には、赤に続き青のペイントが追加された。
「もう悔しいい!!」
と、ハナが子供よろしく悔しがる。
「ぶーまた汚れたー!」
「うーー!」
「――――グスン」
と、悔しがるママを見てか子供たちも悔しそうだ。イチノスケは泣きべそをかいているが。
「ほら! みんな次は作戦を立てるよ!」
と、ハナは悔しがってすぐに立ち直ると、みんなに呼びかける。ムキになるとトコトンやるハナちゃんのちょっとした一面である。
「まず、スライムを見つけたら、パパが木を揺らしてスライムを落とすでしょ。今度はその落ちてきたスライムが地面に落ちる前にキャッチするわよ」
と、円陣を組んだ俺たちにハナが作戦を伝える。
なるほど……さっきのポロックさんがやっていた戦法だな。
「みんな、分かった?」
「「「「はい!」」」」
「じゃあ、またスライムを探すよ!」
とスライムを探すこと30分ほど。
「いたぞ! こっちだ」
と、俺が今日3匹目のスライムを見つけた。今度は緑色のスライムだ。
「みんな作戦通りね」
と、子供たちを集めながらハナが先程の作戦の確認をする。
「じゃあ揺らすぞ?」
木の下で、みんなが網を準備したところで、俺は声を掛ける。
「いいわよ! 今度は絶対に捕まえるんだから!」
「フタバもオッケー!」
「ミツバも……」
「イチも!」
と、みんなペイントまみれの顔で、若干説得力はないがスライムを捕まえるのに意気込んでいる。
「ほら!」
俺は太い幹を抱きかかえるように木を揺らす。
「「来た!」」
と、落ちてきたスライムを見てか、ハナとフタバの声が重なる。それを聞いて俺も咄嗟に木の上を見る。
――――ブシュ!
「なっ!」
「きゃっ!」
「わっ!」
「!」
「うっ!」
俺が上を見た瞬間、スライムが放ったペイントが降ってきた。急なことだったので、俺はどうすることもできず、顔にペイントを浴びてしまう。反応を聞く限りみんなも俺と同じような状況で、ペイントを被っているところだろう。
俺たちがペイントを拭って目を開けた時には、もうスライムの姿は遠くの方にチラッと見えるだけだった。俺たちは今日3度目のスライム捕獲に失敗したのだった。もちろん、俺たちの身体には緑のペイントが追加された。
「もう! また逃げられたー!」
とハナが手をバタバタさせる。
「ぶー!!!」
「ぶー!!!」
「ぶー!!!」
と子供たちも、今度はイチまでもがお冠だ。こういうところは、やっぱり三つ子なんだなと感じる光景だ。
「ほら! 次行くよ! 今度は絶対に捕まえるんだから!」
「ハナちゃん! ちょっと待った!」
と、俺は次にと意気込むハナの手を掴んで止める。
「ちょっと一旦落ち着こうよ!」
頭に血が上っていたら捕まえられるものも捕まえられなくなるよ。
「そうだね……少し熱くなり過ぎていたみたいだね……」
俺がいうことを聞いて、ハナは少し落ち着いたようだ。
「とりあえず、今は何が悪かったのか反省をしてみようよ」
「そうだね……」
反省することで分かってくることもあるし、今はどうして失敗したのか明らかにしないと、また同じことを繰り返しかねないからな。
「まず今回は、前回スライムがすばしっこいことを知らなくて捕獲に失敗したから、スライムが地面に落ちる前に捕獲しようとしたよね?」
「うん。だけど、今回は落ちてくる時にペイントをかけられたよ。まるで、私たちが捕獲しようとしていることが分かってるみたいに…」
「たぶんそこが今回の失敗じゃないかな?」
「ん? どういうこと?」
「俺たちがスライムのことを勘違いしているんだよ。俺が思うに、スライムは目も鼻も口も無いけど俺たちの動きを把握…分かっているんだと思う」
「確かに……いつの間にか、スライムはこちらのことを分かってないと思ってた……」
と、俺の考えにハナも思い当たるところがあるのか同意する。
「あ! そう言えば、ポロックさんも捕獲する時、静かにって言ってたもんね!」
と続けてハナが思い出したかのように言った。
「そうだね。今回の作戦は、そのように…ポロックさんと同じようにやってみようか」
と、俺たちの反省は作戦を立てたところで終わり、またスライムを探し始めるのだった。
「パパ、見つけたよ」
と、小声で話しながら、俺をつついて来たのはミツバだった。
「どこにいるの?」
と、俺も小声で話しながらミツバに聞く。
「見つけたの?」
と同じく小声で話しながらハナもフタバとイチの手を引いて向かって来る。
「あっち」
と、ミツバが指差した先の木の枝には、確かに黒いスライムがいた。
「よし、じゃあみんな静かにね」
「「「うん」」」
と、ハナが声をかけ、俺たちは頷いたあと、静かに網をカバンから取り出す。
そして、俺はスライムのいる木の幹に静かにそろーっと近づく。
「じゃあ行くよ?」
と俺はみんなに確認すると、ハナから指でオッケーと返事が返ってくる。
――――ガサガサガサガサ。
揺らしながら、俺はスライムのいるところに顔を向ける。
案の定、スライムは重力に従い落ちているところだった。下には、ハナと子供たちが網を構えて待っている。
――――スポッ。
「やった!」
とハナがいち早く歓声を上げる。
あんなにも捕まえるのに苦労していたスライムは、静かにするだけでこうもあっさりと捕まえることが出来たのだった。
「ママすごい!」
「ママすごい!」
「ママすごい!」
「へへーすごいでしょー」
と、こんなに簡単に捕まえることが出来て、あっけに取られている俺に対して、子供たちとハナはとても喜んでいた。
あれから、2匹ほど試してみたが、やはり、静かにするだけでスライムは簡単に捕まえることが出来た。おそらく、音を聞く感覚はあるんだろうな。耳らしきところもないけど。本当に不思議な生物である。
とりあえず、今日の成果はスライム3匹である。
ちなみに、最後にはみんなで記念撮影をした。みんな身体中ペイントまみれで面白いしな。いい思い出になるだろう。
帰り道。
「お前らどんだけスライムと格闘したんだよ」
と、今日2度目の再会であるポロックさんに笑われ。
「お前ら、生活に困ってるのか?」
と、漁の帰りだというレンブラントさんに何故か同情され。
「あら。家族でスライムハント? 仲が良いわねー」
と、フェルメールさんには明らかに苦笑された。
まぁ身体中ペイントまみれで、歩いていたらそうなるわな。1日はこれでいないといけないというのは仕方ないが、みんなに言われる度にだんだんと恥ずかしくはなってくる。
すると、途中晩ご飯を買うために寄った食堂でマネさんが。
「コローのところで、ペイントを落とす入浴剤と石鹸が売ってるわよ」
と教えてくれた。その顔には若干笑みがこぼれていたが、そんなにこのペイントまみれの顔が面白いのだろうか…。
ともあれ、マネさんの言う通りに、薬師であるフクロウのコローさんの家…病院まで行き、入浴剤と石鹸を購入して、すぐに家に帰り風呂に入ったのは言うまでもない。
ちなみに、翌日届いたスライムの出荷価格は、3匹で1万5000円だった。
正直、おいしい仕事ではあるが、またペイントまみれになるかと思うと微妙なところである。




