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ほのぼの2! あいさつまわり おとなりさん!


 俺たちが住むことになった家の土地は、ハッキリ言ってかなり広い。

 昨日、ここに案内され、我が家だと言われた時の、俺とハナの驚いた表情はきっと凄いことになっていただろう。最も、服を着た牛さんを見た時や、ゾウガメが喋って村長だと言い出した時の驚きの方が大きかったと思うが。家の土地への驚きは、ファンタジー要素の絡んでいない一番の驚きだっただろう。


 簡単にうちの土地について説明すると。

 まず、うちの家は玄関が東側に向かって建てられている。そこから、真っ直ぐに村の中心部へと続く道が緩やかな坂道となって続いているが、その道の隣、段になっているところの北側…北東側は畑であり、南側…南東側も決して狭くない範囲でスペースが空いている。さらには、北に、今は荒れているが、畑の予定地がかなり広がっており、南には機械設備の予定地が十分な広さで取られている。西には、デカい池の跡と、南西にこれまた十分な広さの牧畜予定地がある。ついでに言えば、東側の道を挟んだ向かい側も自由に使っていいらしい。


 うん。はっきり言ってここの村の人たちは、俺たちに期待しすぎなのではないだろうか。


 最初は、野菜や果物を育てて、徐々に出来る事を増やしていけばいいと村長は言っていたが、明らかに、牛や豚などの畜産業もやらせる気満々である。西の池の跡に関しては、魚の養殖でもやれと言っているのだろうか。


 まぁ。これだけのいい土地を貰ったぶん、ちゃんと仕事をして村の人たちの期待に応えないとなと思っている。


 そんな訳で、結局何が言いたいのかというと。


「お隣さんが遠い……」


 挨拶回りにと出発した俺たち家族だが、俺たちの家の土地が広いこと、さらにお隣さんの家の土地も広いこともあり、家から出発しても、まだお隣さん家に着かないでいた。

 ちなみに、一番近いお隣さん家は北側で、村の中心部は南側なので、挨拶が終わったら、もう一度来た道を戻らないといけない。


「そうだね。お隣さんがこんなに遠いなんて、都会じゃありえないことだもんね」

 そう言ってハナが苦笑交じりに返答してくる。


「パパーおんぶー!」

「イチ! ずるーい! フタバもおんぶして!」

「……」


 最初は、楽しくて、先に走ったり、戻ってきたりしていた子供たちも、だんだんと飽きてきて疲れてきたのか。こうして、おねだりをする始末だ。

 なおママにはおねだりはしない。断られるのが分かっているからだろうか。それとも、いつも俺が言ってるママを大事にしなさいという言葉が効いているのか。パパも大事にして欲しいんだけど……。

 あと、イチとフタバはハッキリ訴えてくるからいいが、ミツバのその目線だけで訴えてくるのが、地味に効く。


「だーめ! いつも言ってるでしょ。パパとママは一人ずつ。二人しかいないの。あなた達は三人。パパとママで一人ずつおんぶしたら、一人余っちゃうでしょ。だから、三人ともおんぶは無しよ。分かった?」


 と、困った俺を見かねて、ハナが子供たちに注意をした。


「……」

 それを聞いて、こくりとうなづき、ガックシと肩を落とすミツバ。


「うん……」

 と、うなづき、同じく肩を落とすイチ。


「はーい……」

 と、返事をして、何かを考えだすフタバ。


 肩を落とした二人は、いかにも姉弟らしい。


 そして、フタバは何かを思いついたらしく、顔を上げて話し出した。


「イチは、男の子だからおんぶされなくてもいいでしょ! だから、フタバとミツバをパパとママでおんぶして!」

 おいおい……そう来たか。

 これを聞いて、俺は苦笑せざるを得ない。


「えぇ!」

 と、逆にイチはとばっちりでえあるが。

 ほら、イチ。頑張ってフタバに意見を言うんだよ。



 と、そんな出来事もありつつ、お隣さん家に到着した。

 結局、最後までおんぶはしなかった。もう、5歳だしね。子供たちが小さかった時は、俺が二人を抱いて、ハナが一人を抱くことで解決したんだけど、流石に、今二人いっぺんにおんぶするのはね。



「ごめんくださーい!」

 と、お隣さん家のインターホンを押しながら、声を掛ける。


 すると、中から出てきたのは、150センチ程のの大きさの、服を着て、エプロンをしたハリネズミだった。


「おはようございます。朝早くからすみません。今度お隣に引っ越してきた木村というものですが……」


「あら。あなた達が今度引っ越してきたお隣さん? みんな随分楽しみにしてたのよー。ちょっと待ってね。今、主人を呼んでくるから」


 そう言って、ハリネズミの奥さんは、また家の中へと入って行った。


「…………」

 うん。昨日も一応喋るゾウガメを見たけど、やはり間近で喋る動物は違和感だな。

 と、思ってハナの方を見てみると。


「いい人そうだったね」

 どうやら、妻はこの光景にもう慣れたちゃったらしい。

 あれ? 俺がおかしいの? と思って子供たちを見てみるも。


「トゲトゲ……」

「ハリネズミよ!」

「お隣さん……」

 子供たちは、子供たちで自分たちで勝手に解釈をしていた。


 みんな、ファンタジーにはもう慣れるの早いな。これが若さなのかな。いや、でも、俺とハナは同い年だし……。もしかして、俺一人が慣れてないだけななのか……。


 と、軽くショックを受けながらも、しばらく待っていると、ハリネズミの奥さんが戻ってきた。


「ごめんなさいね。今、主人はちょっと遠くの方で、畑仕事をしているみたいで。もう少ししたら帰って来るから」


「あ、いえ。お気になさらずに、突然押し掛けたのはこちらですから」


「って言ってる間に、帰って来たみたいね」


 と、奥さんが指さす方向に首を向けると、この家の西側に広がる果樹園らしき場所から、人影が見えてきた。



「すまない。待たせてしまったな」

 と、急ぎ足でこちらに向かって来たのは、190センチぐらいの背丈をしたホワイトタイガーだった。




「俺はホワイトタイガーのブラックだ。見ての通り、農家をしている。よろしくな。そして、妻の…」

「妻のミロです。ハリネズミよ。お隣さん同士仲良くしましょうね」


 と、ブラックさんとミロさんは、にっこりと微笑みながら握手を求めてきた。


「木村ユウゴです」

「妻のハナです」

 俺たちは、そう自己紹介しながら握手に応じる。肉球だ。ぷにぷにする。


「そして、こっちが僕らの子供たち…三つ子です」

 と、握手が終わり、次は子供たちを紹介する。


 ほら。イチ。俺の後ろに隠れるのは辞めなさい。


「フタバです」

「ミツバ…です」

「イチノスケです」

「せーの」

「「「よろしくおねがいします!」」」

 と言って、ぺこりと子供たちが頭を下げる。


 うん。練習通り上手くできたね。


「お! 元気のいい子たちだ。こちらこそよろしくな」

「可愛いわねー。こちらこそよろしくね」

 と言って、ブラックさんとミロさんは、子供たちにも握手をしていた。


 ホワイトタイガーという事もあってブラックさんには、若干、怖がっていたが、握手した手がぷにぷにだったと、握手したあとは喜んでいた。まぁブラックさんのいい人オーラも子供たちは感じ取ったのかも知れない。



「家にも一人、この子たちと同い年ぐらいの息子がいるんだが、今日はあいにく風邪を引いていてな。紹介は、また今度になるな」


「あ、そうなんですか。会ってみたかったですが、残念ですね。でも、これから会う機会も沢山あると思いますんで、またの機会に紹介してください」


「おう。そうだな。あと、何か困った事があったらいつでも来いよ。頼りにしていいぜ」

 と、ブラックさんはその恐い顔をほころばせて言う。


「あら。困ったことが無くてもいつでも来ていいのよ」

 と、ミロさんが隣で笑いながら訂正した。


「はい。ありがとうございます。これからよろしくお願いします」

「よろしくお願いします」


 そう言って、もう一度頭を下げてから、お隣さん家を後にした。






「いい人たちだったね!」

 と、帰り道、ハナが笑顔で話してきたのが、印象的だった。








挨拶回りは基本ですね(笑)

ちなみに、ホワイトタイガーなのにブラックさんです。

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