ほのぼの9! ごはんとわいばーん!
「ゴロゴロー」
お風呂から上がり、さっぱりした俺たちは、畳間でみんなでゴロゴロしていた。
一部、本当にゴロゴロ転がっている子もいるが。
「ゴロゴロー」
そんなゆったりとした時間の中、ハナが爆弾発言を投下する。
「晩ご飯ないよ」
「え?」
「ガーン…!!!」
「ガーン…!!!」
「ガーン…!!!」
って、考えたら当たり前か。だって、冷蔵庫が無いんだもん。
というか、子供たちよ。結構そのネタは古くないか? どこで覚えてくるんだか。
という訳で、やってきました食堂。
と、そこには、結構な人だかりが……いなかった。
晩ご飯時なのに、大丈夫だろうかこの食堂…まぁ宿屋も兼業だから大丈夫か。
「あらーいらっしゃい。今日は三度目ね」
と笑いながら話すマネさんに、挨拶しながら事情を説明すると。
「あらーそれだったら、うちで持ち帰りを買っていったら良かったのに……」
という言葉が。
何でも、料理カプセルという、これまた魔法道具…鮮度が落ちない収納カプセルが存在していて、それに料理を保存しておけるのだと言う。だから、朝はここでご飯を食べて、持ち帰りを注文し、昼、夜は自宅で持ち帰りで注文したご飯を食べるという人も結構いるらしい。中には、何日分も料理を買っていく人もいるのだとか。
なんやそれ。完全に手抜きやないかい。
と、まぁ、せっかく食堂まで来たんだし、俺たちは、ここで料理を食べることにする。
「どうぞ……」
と、マネさんの孫のモネちゃんがメニュー表を持ってきたので、俺はそれにお礼を言ってメニューを見ていく。
「なんにしようかな……」
今朝とはまたラインナップの増えたメニューに俺は迷う。ちなみに、朝食は、朝食セットAという、ご飯に味噌汁、目玉焼きにベーコンという和と洋が混ざったものを食べた。
「フタバは、お子様ランチ!」
「ミツバも……」
「イチも!」
と、先に決めたのは子供たちだ。というか、朝も同じものを食べていたので、メニューを見ずに決めたみたいだ。
「もう、お子様ランチも3種類あるでしょ? どれにするか決めたの?」
と、ハナは子供たちに言うが。
「フタバはカレーが入ったの!」
「ミツバは、うどんがいい……」
「イチはねぇ…エビフライ!」
と、どうやら既に決まっていたっぽい。フタバは朝と同じやつをミツバとイチは朝とは違うやつをそれぞれ選んでいた。
「ユウ君は?」
「俺は、この天ぷらセットで」
俺も早々にメニューを決める。
1200円と少々お高いが今日ぐらいは良いだろう。
それから、モネちゃんを呼んで注文を頼む。マネさんの孫であるモネちゃんは、12歳ながらも、ここの食堂でウエイトレスとしてお手伝いをしているのだ。うん。偉いな。
と、ハナがモネちゃんに注文を言い終わり、俺たちは暫し雑談をしながら料理を待つ。
そして、10分も待たずに。
「はいよ! お待ちどおさま!」
と、言って食事を持ってきてくれたのは、この食堂の料理人であるマティスさんだ。最初は、村長…マネさんたちの息子さんかと思ったが、それは違うとのこと。ただの従業員だそうだ。
マティスさんは、その横文字な名前とは裏腹に、和食の料理人で、この店に和食が多いのはマティスさんのおかげなんだとマネさんが言っていた。ちなみに、割烹着を着て、人間の姿をしているが、実はタヌキらしく、その証拠に、割烹着からタヌキの尻尾がちょこんと可愛らしく出ている。
俺はマティスさんにお礼を言って、料理を受け取る。
俺が頼んだ天ぷらセットは、エビを始め、ナス、レンコン、大葉の天ぷらがきれいに盛り付けされており、それにキャベツのサラダ、ご飯、味噌汁、漬物、茶碗蒸しで、和食! という感じにまとまっている。
ハナが頼んだのは、お寿司セット(梅)だ。同じお寿司セットの松や竹よりも、お寿司は少ないが、その分値段もお手頃で女性が食べるには丁度いいくらいの量だ。綺麗に盛り付けられたお寿司は、マグロ、サーモン、イカ、甘エビ、タマゴ、軍艦巻きのネギトロとなっており、これに茶碗蒸しと味噌汁、漬物が付いている。
フタバが頼んだお子様ランチは、小さめのプレートにカレーライスが盛り付けられ、小さいハンバーグにウインナーが2本入っている。
ミツバが頼んだお子様ランチは、小さめのお椀に温うどん。それに、小さめのおにぎりが1つに、これまたハンバーグが付いている。
イチノスケが頼んだお子様ランチは、子供用プレートにエビフライ、旗付きのチャーハン、そして、ウインナーが2本入っている。
そして、お子様ランチにはデザートにフルーツゼリーが付く。
全部で税込み3800円。
お寿司とか天ぷらを取った割には、安い値段だと思う。家族5人でだし。
でもまあ、今日のエンゲル係数の高さは否定できない。明日から頑張らないとな。
と、俺たちは、美味しい晩ご飯を満喫するのだった。
ちなみに、明日の朝食の分まで持ち帰りに頼んだので、3800円以上掛かったのは致し方ない。
あと、料理カプセル超すげぇ。丸い透明のカプセルの中に料理が入っているんだけど、これ、料理を入れた途端に、ガチャガチャのカプセルぐらいに小さくなるし、ひっくり返しても中の料理はぐちゃぐちゃにならない。それに加えて、料理の鮮度は落ちない……もう、めちゃくちゃな技術である。
そして、俺たちは家に帰ると、みんなすぐに就寝した。
まぁ、今日も色々な事があったし、畑仕事という肉体労働もあった。みんな慣れないことをして、疲れていたんだろう。俺たちは泥のように眠りについたのだった。
コケコッコー!
四月二日の朝。今日も近所のニワトリさんの声で目を覚ました。
時計を見ると、6時ピッタリ。やはり、時間に正確なニワトリさんである。
「おはよ……」
隣を見るとハナも目を擦りながら起きてきた。
俺もおはようと返して、あくびを一つ。
子供たちの乱れた布団を直して、俺とハナは顔を洗いに行く。
ハナが昨日食堂で買った朝ご飯の準備をしている間に、俺は郵便受けの確認をしにいく。
昨日、雑貨屋のロココさんが言っていた、買い物の領収書が届いているかの確認だ。
郵便受けを開くと、案の定、綺麗な便箋が。
その手紙が俺宛てになっていることを確認して、俺は中を開く。
うん。間違いなく、昨日買った商品とその金額だ。と言うか、雑貨屋の名前は、「雑貨屋シキサイ」って言うんだな。昨日は全然気付かなかった。そう言えば、ダンさんの喫茶店も、pot&eggと名前があったし、もしかしたら、他の食堂や、動物屋さんにも店名があるのかも知れないな。
家に戻ると、ミツバは既に起きていて、ハナの手伝いをしていた。と言っても料理はもう出来上がっているので、お皿に盛り付けるだけだ。ミツバは料理にとても関心がある子なので、将来は、料理の美味しい素敵なお嫁さんになるだろう。いや、まだ絶対に嫁には出さないが。
寝室を見ると、フタバもイチもいないので、2人ともすでに起きて、顔を洗いに行っているのだろう。
「パパおはよう」
「パパおはよう…」
俺はすることがないので、食卓につき、ハナとミツバの作業風景をボーっと見ていると、フタバとイチが洗面所から出てきた。
「フタバ、イチおはよう」
「はい。みんな出来たよー」
「出来た……」
と、丁度、朝ご飯の準備も出来た。朝は、みんな同じ食事。昨日買った目玉焼きトースト。それに、新鮮な葉野菜のサラダだ。
「では、手を合わせて、いただきます」
「「「「いただきます!」」」」
と、俺たちは朝ご飯を楽しんだ。
9時。
朝ご飯も食べ終わり、畑の水まきも終わり、家で少し休憩していたところに、インターホンが鳴った。
「いいよ。俺が出るよ」
と、立ち上がろうとしたハナを止めて、俺は玄関に向かう。
「はーい。今出ますよっと」
そして、玄関を開けると、そこにいたのは――――赤いドラゴンだった。
「どうも。おはようございます。ワイバーン便です――――」
間違った。ワイバーンだった。
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