あいつはどこ?
トリが起きるとベッドの上だった。
隣の部屋に現がいた。
まだ夜明け前の宿屋にて、冒険家はゆっくりとベッドから抜け出た。そして、庭に出た。
トリは1人の女性が松の木の前に立っていたのを見ると立ち止まった。トリの存在に気づいたのか、その女は身を隠した。
トリと現は宿屋の食堂で朝食を取っていた。
「ガツガツ、美味しい。」
現は、カツ丼を一生懸命に口に入れていた。
相変わらずよく食べるなとトリは思った。
食事が一段落したところで、トリが切り出した。
「今日はこのスカイの先にある森に行ってみようと思う。」
「その森に何かあるの?」
現がトリに尋ねた。
「いや、特にない。」
「...?。」
トリの真っ白な回答に、現は理解が出来ないようだった。
「お母さんを探すんだろう?」
ガタッ。
「あ、ごめんなさい。」
一人の女性がトリと現に謝った。
トリと現のテーブルに当たったのだ。その女性は、トリが今朝見かけた人だった。
「大丈夫ですか?」
現が心配して声をかけた。
「お母さん?」
現は出し抜けに聞いてみた。
「現?」
女性は何かに気付いた。
「え?」
トリはわけが分からない。
「お母さん!」
「現!」
2人は抱き合って喜んだ。
トリは事情がまだ飲み込めなかったが、2人の様子から、女性が現の母親であることに気付いた。
現の母親は宝という名前だった。
「ありがとう。トリ、本当にありがとう。」
「よかったな、現。」
「トリさん、ありがとう。」
宝に礼を言われて少し照れたトリは、
「これで、家に帰れるな。」
と言った。
「まだ、帰れないわ。」
「どうして?お母さん。」
2人は宝の話を聞いた。
「私が家を出たのは、二十強を倒すためです。」
「!?」
2人は驚いた。
「二十強はこのクラニズムを支配下にしかけています。だから、私は少しでも力になりたいと思い、家を出たのです。」
「そうだったんですか。じゃあ俺にも協力させて下さい。」
「お母さん、わたしも戦う。」
宝は嬉しそうにうなづいた。
「ありがとう。私は腕に自身があるから二十強の1人を倒しているのよ。」
「え?」
「本当?お母さんすごい。」
(やはり、この幻一家は強い家系だ。)
トリは少しホッとした。
ガシャーン。きゃあああ!
宿屋のガラスが割れた。
「おい、お前らか?最近俺らに刃向かってる奴らは?」
獣人が宿屋の客の女を掴みトリ達3人を睨んだ。
トリが刀を抜こうとしたときに、獣人が言った。
「おい、近づくとコイツを殺るぜ。」
「くっ、卑怯な。」
現はそこにはいなかった。誰かを呼びに行ったのか?
宝は速かった。一瞬の隙を逃さなかった。獣人の背後に回り込み、一撃でノックアウトした。
現が戻ってきた。
「あいつはどこ?今喉乾いたから水飲んできた。?」
「え?二十強の1人ってボスだったんですか?」
事態が収まったときに三人は宿屋のテーブルに座ってお茶を飲みながら話を始めていた。
「そうよ。幻家はクラニズムの中でも強い家系なのよ。」
「お母さんすごい。私も見習わなくっちゃ。」
宝の話によると、本人は二十強のボスを倒していたらしい。
昔話に花が咲き、三人の談笑は続いた。
「ボ、ボスを倒したやつがいる。」
獣の男がアジトに帰ると、仲間に報告していた。
「そんなあ。」
男と女は、ガッカリした。
二十強のボスが倒されたのはごく最近のことで、事情を知ったトップ2(さっきの男と女の男の方)も降参してクラニズムは平和になった。
「帰ろう、お母さん。」
「そうね、現。」
現と宝が手を繋いで、帰途につこうとしていた。
「トリも来て。」
「ああ。」
こうして3人は械の待つ家に帰った。