邪魔者は許さない
「これと、あとこれも。」
トリと冒険に出発することが決まってはしゃぐ現は、出発の準備の為、部屋をかき回した。現にとって、旅をするのは初めてのことだった。ウキウキするのも無理は無かった。
「おい、現。」
トリの呼び掛けも虚しく、現は荷造りに没頭していた。
トリは、これから先に行くところについて考えていた。昨日の夜、現と話したことについて。
「私ね、この先にある洞穴、そう、見えるでしょ。あの洞穴の先に何があるのか知りたいの。」
「洞穴?」
「そうよ。あの洞穴には何かあると思うのよ〜。」
二人の会話が部屋を包んだ。
その時トリは洞穴に気配を感じた。人ではなくしかし大きいものだった。
「楽しみねー。」
現はうっとりとした表情だった。
「終わったー。」
現が達成感を露わにするも、部屋はめちゃくちゃ。カバンには荷物がいっぱいだ。
トリは考えていた。洞穴のこと。そして何より、
「本当に一緒に行くのか?」
「そうよ。」
現は気軽に答えた。
出発の時がやって来た。
「それじゃあお父さん、行ってきます。」
トリは丁寧に出発の挨拶をした。
「ああ、気をつけてな。トリ君娘をよろしくな。」
械はトリを頼りにしている様子で言った。
「わかりました。でも、危ないとわかったらすぐに引き返します。」
現が続いて、
「大丈夫よお父さん。行ってくるね。」
バシッ
そう言うと同時に少女はトリに蹴りを入れた。
挨拶の後、二人は洞穴に向けて出発した。
「私、こういう旅みたいなの初めてなのよね。なんだかワクワクしちゃう。」
現は、冒険がさも楽しそうだった。
「……そうか。」
「?」
トリの反応がおかしいことに現は気付いて首をかしげた。
なんやかんやで、二人は洞穴の前までやって来た。
「ここか。現、準備はいいか?」
「もぐもぐ、ん?」
「何を食べてるんだ?」
「……んぐ、ごめんごめん。シュークリーム食べてた。お腹減っちゃって。」
呑気なもんだと少年は思った。事実、先程感じた恐怖感を洞穴から感じた。気を引き締めていかないととトリは思った。
「行くぞ、現。」
「オッケー。私に付いてきなさい。」
(一体何を考えているのか……)
トリは不安がさらに増した。
二人は洞穴の中へ入って行った。
洞穴の中は薄暗かったが所々にある電灯が行先を教えてくれた。
しばらく進んだところで現がトリに話しかけた。
「ねえねえ、トリ聞いてくれる?」
「な、なんだよ…。」
急に話しかけられてトリは驚いた。
「私ね、昔にお父さんにこんな話を聞いたことがあるの。」
「なんだよ。」
少年は少女に尋ねた。
「この洞穴に大きな主が住んでいるんだってー。 そいつねめちゃくちゃ強いらしいよ。何だったかなあ……確か……あ、そうだ世界ベスト20に入るんだって。」
「まさか、あの二十強の1人がここにいるのか!?本当か?だとしたらまずいぞ。」
「?」
「現、出直すぞ。」
ゴギャァァァァァァ!
トリと現が話している内に目の前に現れたのは
巨大な白い龍の形をしたロボットだった。
キュィィィン……グォン!
振り上げられた尾がトリと現を狙う。
「現逃げろ!」
「あ、あ、うん。」
トリは龍のロボットと戦い始めた。
キンッ、ガッ。
トリの剣とロボットの鉄のパーツがぶつかり合う音が洞穴中に響き渡る。
しかし、それは次の瞬間に起こった。
トリが尻尾を交わしたがその尻尾が現を直撃した……。
ドゴーン。
現は突き飛ばされ壁に突っ込んでしまった。
「現ーーー!」
トリは急いで駆け寄った。
抱き寄せようとしたその時だった。
「おい、お前、今私に何した?」
「現?」
現幻はドSだった。ブチ切れてしまった。
龍のドラゴンを睨みつけた。
尻尾を片手で掴み、壁に向かって投げ飛ばした。
ドッゴーン。
ロボットは壁にめり込んだ。
トリは開いた口が塞がらない。
「ふー落ち着いた。大丈夫トリ?」
「あ、ああ。」
「もう、邪魔者は許さないんだから。」
トリと現は洞穴の先に進んだ。
トリは楽しそうな現の隣でビビってた。
そんなこんなで、二人は次の街に向かった。