素敵な姿
100m走の試合の日がやって来た。
トリは、械との勝負が行われる時間10分前に荒野に来ていた。
一週間前に械との100メートル走対決が決まり、それまで準備していたトリは、自信に充ち溢れていた。
「遅い。」
トリは苛立った。
時刻は午前8時を過ぎていた。
一人、荒野のど真ん中に立つ黒服の少年は、に勝つために集中しなくてはと、腕組みしながら目を閉じて考えていた。
「お待たせ。」
トリが気付くと、現が来ていた。
「おはよう。」
挨拶すると、少女は微笑んで、
「おはよう。」と、挨拶を返した。
「いや、遅くなってすまない。」
ちょっと老け顔の男が、笑いながら現れて、遅刻したことを詫びた。
械だった。
後ろに、布のかかった荷物を、荷車に乗せていた。
「準備に時間がかかってな。」
「準備?」
トリが質問するや否や、現が叫んだ。
「さあ、用意はいい?100メートル対決の始まり~。」
トリと械に緊張が走った。
「ルールは、あの大きな岩の下から、この…」
現が、地面に線を引っ張って言う。
「ラインまで早くたどり着いた方の勝ち。」
「分かった。」
「うむ。」
トリと械は了解して、スタート位置である岩の下まで向かった。
二人が岩の下にたどり着いた。。
「驚くなよ、少年。私の秘密兵器はこれだ。」
そう言うと、械は荷物にかかっていた白い布を剥いだ。
そこに現れたのは、人の形をしたロボットだった。青と白に彩られたボディに、直立する精度の高さが械の腕前の高さを物語っていた。
「じゃあ、行くわよ。よーい、どん。」
シュン
掛け声が終わる瞬間に、トリは全速力で走り出した。
速かった、限りなく。
しかし、50メートルぐらい走った後だろうか。
械のロボットが猛烈なスピードでトリの後ろから迫ってくるではないか。
そのまま、械のロボットがトリを抜いてゴールした。
「ゴール。お父さんの勝ちー。」
現が応援旗をパタパタと振りながら自分の父親の勝利を喜んだ。
トリも続いてゴールした。
トリは、上がる息を押し殺して、械の機械を見た。
「なんという速さなんだ。」
少年は械のロボットに驚愕を覚えた。
「わしの勝ちじゃな。」
械は微笑んで言った。
ビシッ
現はトリに蹴りを入れた。
「星の名前は教えてもらえないか…。」
トリは落胆した。
すると、現が、ひょっこり顔を出した。
「なんだ?」
少年は少女に尋ねた。
「いいわ。こんなに素晴らしい戦いを見せてもらったんだもの。教えてあげる。」
少女はくるりとダンスを踊るように一回転して人差し指を立てて、勇敢な敗北者に顔を近付けてこう言った。
「この星の名前は、えっとなんだっけ?」
少女の天然ボケにトリはよろめいた。
「あ、そうそう、思い出した。この星の名前は、クラニズムよ。」
「クラニズム…。」
冒険者は、感銘を覚えた。この星の名前の美しさに。
「ほほ。」
佇む機械技術者の笑い声が微かに響いた。
「ねえ、お父さん。私もこの人と冒険に行くわ。」
「な…」
少女の言葉にトリが驚く。
械は少し考えた、
「う~む。よし、いいだろう。行ってきなさい。」
「わーい。ありがとう、お父さん。」
「しかし、俺は…」
バシッ。
少女がまた、トリに蹴りを入れた。
「よろしくな。」
中年紳士の言葉があった。
「よろしくね。」
少女は嬉しそうに挨拶した。
トリは、長い旅の始まりと新たな不安要素に追われることになった。