潜入しちゃおう
1人でいることが好きだった。
そんな昔もあったかと振り返り笑う自分がいた。
トリは、置いていた剣を持ち上げると、立ち上がり草原を去って行った。
「いやっほーい!さあさあ皆さん。よってらっしゃい見てらっしゃい!現のマジックショーの始まり始まりー。」
パチパチパチパチ
トリと械と宝の3人と数匹の動物達が見守る中
それは始まった。
「では、これよりスプーン曲げをします。はい、これは何の変哲もないスプーンです。調べてください。はい。」
トリと械と宝は順番にスプーンを調べた。
「......。」
トリは黙ったまま。
「まさかな。」
「やっぱり?」
械と宝は不安そうだった。
「はい。では、これからこのスプーンを曲げたいと思います。」
ゴクリ
3人は緊張し始めた。
動物達は和やかに草を食べている。
それーーー
掛け声と共に現はスプーンを怪力で曲げてしまった。
カラン
スプーンがテーブルの上に転げた。
3人はシーンとしていた。
「......。」
トリは黙ったままだった。
「お前それ怪力でやったんだろう?」
トリが今度はつっこんだ。
「はい。種も仕掛けもありません。以上現のマジックショーでしたー。」
その夜、械が倉庫に向かって歩いていくのをトリと現は目撃した。誰にも見つからないようにしているみたいだ。
「潜入しちゃおうよ。」
「...。」
トリは現に付いて行った。
械は机に向かって何か設計図のようなものを描いていた。
現とトリは隠れてそれを見ていた。
ゴトッ
「誰だ?」
械に気づかれた2人は潔く出てきた。
「なんだ、君達か。」
「パパ、一体何描いてたの?」
械は現の質問に仕方が無いといった感じで答えてくれた。
パサッ
設計図を広げた。
「これ何?」
「?」
戸惑う2人。
「これはな、ロボットの設計図だよ。」
「ロボット?」
不思議がる現に械は笑顔で、
「現、お前には兄弟がいないだろう?弟が欲しいんじゃないかと思ってな。作ろうとしていたんだ。」
「それで...。」
感心するトリ。
一方、現は項垂れたままだった。
「妹がいい。」
トリは感動しているのだと思った。
「妹がいい。」
「え?」
「妹がいいんですけどー。」
現は言い張った。
械は一本取られたという感じで、
「そうか、ごめんごめん。じゃあ設計を少し変えなきゃな。」
(現、ことごとくわがままだな。)
トリは思った。
だがそんな家族愛に溢れた家庭もいいものだと心の底からは嬉しかった。