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魔法使いの学校

 魔法使いの村に来てから早くも1年が過ぎて、リルは7歳になっていた。


 木の上の家、その3階のクローゼットには水色のワンピースがかかっている。魔法でそれは新たに増えていた。

そのワンピースは魔法学校の制服である、白のセーラーカラーと腰から下がプリーツになっていて可愛らしい。足元には茶色のブーツ。男の子のは、上は同じ水色のセーラーカラーで下はハーフパンツになっている。

それを身に付けるといよいよ魔法学校が始まる。


「リルー!」

木の下をみるとマユリが大きく手を降っている。マユリももちろん同じワンピース姿である。


リルは扉を開けると、ふわりと翔んで着地する。こんな風に魔法を自然に使うことにもすっかり慣れてきている。


「おはようマユリ」

にこっとリルは微笑みかける。

二人は手を繋ぐと、うきうきとしながら駆け出した。


ブーツを履いた足は、足跡も残さずに森の中を軽やかに駆けていく。

「おはよーマユリ!リル!」

同じように制服を着た少女たちが木から降りてくる。みんな風をとらえて跳ぶように移動する。

森を出るとそこに同じように男の子たちが加わってくる。


「おはよう!アラシ、シオン!」

この1年で仲良くなった男の子、アラシは黒い髪と紫の瞳のとても綺麗な顔をしている男の子だ。シオンは金髪と青い瞳が綺麗な、整った顔立ちの男の子。

「おはよ」

シオンがそう挨拶をしたが、アラシは

「よ」

と言っただけである。


ここではほとんど知らない子供はいない。

とくに同年の子供たちは仲が良くなるのに、アラシはいつもぶっきらぼうで愛想がない。しかし、持ち前の運動神経と、魔法の能力が高いからか遊びだというのに他の子供たちが出来ないことをやすやすとしてしまう。

そのせいかあまりシオン以外の子供たちとは話すこともあまりしていない。


マユリはあからさまにアラシに不機嫌になって

「あんたね、よ って、なによ。ちゃんとおはようって言うべきでしょ?」

と食って掛かる。

美少女なのにマユリはなかなかに気性が荒いことはリルはこの1年でずいぶんわかっている。

「……はぁ?なんでおまえにそんな風にさしずされなきゃいけないわけ?」

アラシはギロッと睨み付ける。マユリも睨む。


そのにらみ合いにリルはその視線を遮るように間に入った。

「マユリ、今日から何をするのかなぁ?たのしみだよね、アラシとシオンもそうでしょ?」

話を変えるようにリルはそう言った。

「…お前って…偽善者なわけ?」

「え?」

偽善者という意味がよくわからないが、良くない言葉だとは理解した。

アラシにそう言われてリルは戸惑ってしまった。ただ、リルはアラシは口下手なだけで決して悪い子じゃないと思っていたから。

「そうじゃないよ。アラシ私はアラシとマユリにもけんかになってほしくないの」

「だからそれが偽善者だっての。うっとおしいんだよそういうの」

「だからなんでそんな風にいうの?」

ムカッとマユリがアラシに食らいつく。

「いいよ、マユリ」

リルはマユリの手を引いてアラシから離れた。


リルはただアラシが本当は優しい事をみんなにも知ってほしいのに、このままじゃまた、怒らせてしまう。

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