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魔法のおうち


再び竜に乗って、リルは空を翔る。

ふと疑問になって聞いてみる。

「アデルさんもアルジーさんもまほうつかいなのに、どうしてまほうのいしをもってもなんにもおこらなかったの?」

ああ、とアデルは微笑むと、

「あんな風に反応するのは何故だか知らないけれど6歳の誕生日を迎えてから数ヵ月なのですって」

「へぇ…」

たったそれだけなんだ…。


ちゃらっと、音をさせてアデルは手首にはめたブレスレットを見せた。

「私の石は緑と白」

2連になった美しいブレスレットには、さりげなくその2色の石が嵌め込まれていて美しい。

「大人になるとこうやって石を身に付けるの」

「きれい…」

にこっとアデルが微笑む。


魔法使いの村は、村という割りにはとても大きな島でどこかほのぼのとした雰囲気である。

リルの知る人々の営む暮らしの雰囲気がどこかホッとさせる。


大きなお城があり、そしてまるで牧草地が広がっていてとても緑が美しい。それから家があって、お店やさんが並んでいてとても明るい雰囲気である。


そして大きな森があって、その近くに竜は降り立った。

「待ってたわ」

にこっと微笑む、女性が大きな大きな巨木の下で立っていた。

「あなたがリルね?私はミクル」

ミクルが着ているのは、魔法使いの黒い服ではなくて普通に街の人たちが着るような服である。

「この道沿いにある明かりのついてない木はどれでも選んでいいわよ」

にっこり微笑む。

「き?えらぶの?」

「そう。今日からリルが住みたいと思った木を選べばいいのよ。残念ながら明かりがついているのは他の子供が住んでいるからね」

「聞くより見た方が早いよ」

アルジーがそう言うと、歩き出す。


森のなかにある道沿いに歩いていくと、さやさやと風に揺れる木の葉越しに木の上に家があることに気がついた。

「きのうえにおうちがある…」

「そう、家なの」

アデルがうなずいた。


こんな家があるなんて…。


うわぁーと感動しながら見ていくと、それぞれに家に特徴があったりもする。蔦が一杯なの。キノコが色とりどり生えているの、などなど。

リルはその中で、可愛らしく蔦がガーランドのように絡まった家を選んだ。

木についた階段を木の回りをくるくると回るように登ると、

ふっと明かりがついた。


「わぁ…」

一階には小さなキッチンと、そしてテーブルと椅子。二階には壁を掘ったような本棚とその下にはソファ。真ん中には丸いラグと大きなクッション。

向かい合うように壁とくっついた机と椅子。三階にはハンモック型のベッドが吊るされていた。そして小さなクローゼット。


「ここでいいかな?」

「はい!」

リルはわくわくしながら辺りを見回した。

どういう作りなのか…。外から見るより、とても立派で十分な広さがある。それこそ魔法なのだろう。

「わたし、ひとりすむの?」

親も離れて、リルは一人で住むのかと思うと心細くなる。

「うん、そうなるね。けれど、料理はちゃんと時間になったら出るよ魔法でここに運んでくれる。それに私たちも近くにいるからね」

アデルが微笑んでいる。


「ミクルさん、ここでいいって」

ミクルはここにいないけれど、アデルが魔法を使ったのか、そう言うと、クローゼットには服が現れて、ハンモックには毛布が現れた。

気になって下に降りると、本棚には本が入り机には文房具たちが

さらに下に行くとテーブルの上にはほかほかと湯気のたっている料理が登場した。

「スゴい…これがまほうなの…」

リルは呆然と言った。

「そう。魔法だね」

「さ、リル食べよう」

アデルが元気よくいい、リルを座らせた。


3人で食べる食事は美味しかった。けれど、やはり母の手料理を思い出してしまい、散々泣いたはずなのにホロホロと涙がこぼれ落ちる。

美味しいのにしょっぱくなる。


お腹いっぱいになると、アデルがクローゼットから白いワンピースの寝間着を出してくれた。

ハンモックに横たわるとゆらゆらとした揺れが次第に眠りに落としていく。


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