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魔法の実戦


城の庭が見えて、みんな次々に降下していく。

リルもふわりと風をとらえて庭に降り立つ。見慣れた光景なのだろう。城の住人たちは驚く様子もこちらを見る様子もない。


かつてアデルとアルジーと歩いた回廊を通り、リルたちは魔法使いたちの詰所へと向かった。


「じゃあ早速仕事を割り当てるから、センパイ魔法使いたちに従って」

ダガーがパタパタとやって来た。と、そうしてそれだけを言うとまたパタパタと立ち去った。とても忙しそうである。


魔法使いたちがそれぞれのペアを引き受けて行く。アラシとリルにはトウリとナルドという男性魔法使いがついた。

トウリもナルドも20代前半といったところか。

「早速俺たちと一緒に来てもらって仕事を手伝ってもらうよ。北の町の外れにある洞窟で、人がよく行方不明になるらしい、で、数日後に探しにいくと見つかっている。これはどうも魔法がらみじゃないかと依頼がきているんだ」

トウリが歩きながら説明をする。

「それと、その近くでもう一件。森を歩くとかならず道に迷って大変らしい。こちらも続けて調査にいく」

「わかりました」


「ひよこちゃんたち、ご飯はしっかり食べてきた?」

「はい」

リルは返事をしたが、アラシは

「基本です」

とさらりと返事をした。

「ひよこはひよこでもこっちは猛獣の雛だな」

くくくっとナルドが笑った。


マントを翻して先を歩くトウリとナルドに続いて、リルは慌てて歩いていった。

再びシェリに乗ると、リルは北を目指して翔ぶ。


北方の地は今はまだ寒くないが、これからきっと寒くなるのだろう。

岩の隙間から洞窟がのぞいている。

トウリが攻撃でナルドが防御役なのだろうか、ナルドが結界をはっている。

「おい」

「あ、」

そうか、気づく。リルとアラシのペアならば、リルがこの場合結界をはるのだ。

「相変わらずトロいな」

「ごめんなさい」

その、やり取りにトウリがちらりとリルを見た。


トウリとアラシが暗闇のために魔法の明かりを灯した。

眼前にトウリのは炎がそのまま浮かんでいて、アラシのは光球である。

しばらく進むと、洞窟の分かれ道にやって来た。

奥を伺うが、どちらも

「どう思う?ナルド」

「まだ、何とも言えないな………しかし、魔力の気配はある」

「アラシはどうだ?」

「………まだ何とも……同じく魔力の気配は感じます」

「探索をしてみましょうか?」

リルはそう言ってみた。

どちらに向かうのか、魔力の源の気配を探ってみるのだ。

「得意なのか?」

「攻撃魔法よりは……」


アラシはちらりとトウリとナルドを見ると、頷きあった。

「じゃあ、少し待ってください」


リルはブレスレットを胸に当てた。

はじめて使う、魔法石を使っての魔法。


「………照らせ…行く道を…指し示せ…」

リルはそう呟くと、キラキラと光の流星が帯のように延びていく。魔法石があることで、意識的に行う魔法はとても精度がよさそうでいつもよりくっきりと流星が光っている。


流星の先はやがて止まった。

「行き先はあちらのようです。何があるかまではわかりませんでした」

「うん、それで構わない。しかしこんなところには何が棲みついているかわからないから、くれぐれも気を付けて」


進むにつれてどんどん不気味になっていく洞窟。

リルの放った流星が、点滅して道を教えている。


「リル技が遅い。もっと集中すれば速くなる」

アラシが、ぼそっと言ってくる。

「あ、はい」

やはり優秀なアラシからしてみれば、もどかしいのだろう。


入りくんだ洞窟を進んでいくと、どんどん空気がひんやりとしていてリルはぶるりと震えた。

「着ろ」

アラシはジャケットを脱いでリルにバサリと渡してきた。

「でも、アラシが…」

「俺はそんなやわじゃない」

きっぱりと言われてリルは、アラシらしいなと思いながら、アラシの体温が残るそのジャケットに袖を通した。

ふわりとアラシの体香らしき香りが鼻腔をくすぐる。


いくつかの角を曲がってすぐ

「来るぞ!」

トウリの警告と共に、ぶわっと魔法の力を感じてリルが防御魔法を張るのよりもアラシの放った攻撃の方が一拍早かった。


魔法がぶつかり合う光が洞窟を一瞬で真っ白に染める。

その光が落ち着く前に

(バク)

と、アラシが落ち着いて言うと、目の前には一匹の獣が身動きをとれなくなっていた。

青豹(せいひょう)か」

ナルドがそれを見て呟いた。

「やるなアラシ」

トウリがニヤリと笑っている。

「青豹がいるってことは…。この奥には…わかるかな?」

「えっと…魔法石、ですか?」

「そうだね、恐らくは」

ナルドがにっこりと微笑んでいる。


青豹を置いてそのまま奥に向かうと、そこには巨大な魔法石の塊があった。

「ひとまず、印をつけておくか」

トウリが魔法でその場所にマークをつけると、

「アラシ、青豹の縛を解いてやって」

アラシにいうと、青豹は動き出した。

青豹は悪さをするわけではなくて、こうして魔法石を、守っている事が多い。しかし、守るために攻撃を加えてくるので危険が無くはない。

魔法石は魔法使いたちには大切なものでもあるので良い発見でもあった。青豹は少し攻撃をまたするか迷ったのか、一瞬魔法使い達をみたが、たっと踵を返して青豹は魔法石の元へ戻っていく。


来た道を通って洞窟を出ると、

「迷い込む人がいないように、封鎖しておいた方がいいね」

「じゃあ、アラシ頼むね」

ナルドがいうと、アラシは一瞬で洞窟の入り口に封印をかけてしまう。

速い……。

「さて、報告を書くから待ってな」

地面に座ると、トウリが報告書をさらさらと書き上げて、鳥に変じさせるとそれを飛ばした。


「アラシ、ジャケットありがとう」

汚していないか気になるが、魔法で綺麗にしてからアラシに返した。


「ごはんにするか」

魔法でラグを敷くと、その上に座りバケットサンドを取り出して食べる。

やはりリルは女の子なので食べ終わるのも最後になってしまう。

「……おっせぇ」

ぼそっと言われてリルはごめんなさい。と謝る。

「あと、防御もさっきの遅い。相手があいつじゃなかったら俺に当たってたぞ」

「はい……」

「気を引き締めてやれ」

「はい」

リルは思わずしゅんとしてしまう。


「出来ない奴には俺も言わない」

ぼそっと追加で言われて、リルはアラシらしいなと思った。


よし、次はもっと頑張らないと!

リルは次は目的地へ向けて、気合いを入れ直した。

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