婚活頑張ります
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レンに案内された先にはユカリナ王室の馬車が用意されていて、アルは一応セイを使者だと認める事に納得したようだった。
馬車には私とレンで乗る。セイは馬で先導を、アルは馬で後からついてくるからだ。
馬車に乗って二人きりになった途端、レンが深い深い息をついた。
「ああ、なんて事」
頬が赤い。
「ちょっと見惚れすぎじゃない?」
「だって、私、あんなに綺麗な男性を初めてみました。兄さまだって素敵な顔だとは思うけど、セイ様と比べたら岩山の欠片みたいですわ」
「いや、言いすぎでしょ」
「姫様は何とも思わないのですか?」
「そりゃあ綺麗だとは思ったわよ? でも、私にはマスラ王の方が綺麗に見えるから」
「マスラ王はその、次元が違うといいますか、触れてはいけないもののような美しさですから。セイ様は少し違います」
「そんなもの?」
「そんなものです」
強く言いきられてしまうとこれ以上何も言えなくなってしまう。大抵の事において、レンの言う事が正しいのだ。城の中の事しか知らない私とは色々違う。だからレンと話すと心が軽くなるし、楽しい。
「あーあ、それにしてもマスラ王は迎えに来てくれないのね」
「無理を言ってはいけませんよ、ユカリナは今大変らしいですから。まあ、でも、少し私もがっかりしました。ぁっ、兄さまには秘密にして下さいね?」
「分かってるって。それにしても、やっぱり迷惑だと思われてるのかな」
「随分急ですしね。向こうからすれば婚約を断った姫が押し掛けてくるというのは少しばかり穏やかではない気分なのかもしれません」
ずばりと言われて思わずがっくりと肩を落とす。
「けれど姫さま、引きさがってはなりません。それではここまで来た意味がなくなります」
「そう、ね」
「姫さまがここまで来られたのは」
「マスラ王の妃になる為」
「その為には姫さまの素晴らしさに気付いていただかねばなりません」
「うん……がんばる」
「はい、頑張りましょう」
満面の笑みを携えたレンとがっしりと手を取り、私はもう一度強く誓った。
呪い姫なんて不名誉は、絶対に無くしてやるんだから!
あっ、それから気の毒な犬の汚名も。