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ワールドウォーズ  作者: ブラックシュミット
7/20

帝国司令部は教会を占拠して置かれていた。

俺とユニとレオはその中を帝国兵に囲まれて進んでいた。

周りは武装した帝国兵に囲まれて一切の逃げ道なし、手足は拘束されてないが、銃口を突きつけられていて下手に動けば即射殺されそうな雰囲気だ。

「ぼ、僕達はどうなるんだろうね?」

レオが周りの帝国兵に震えながら言った。

「とりあえず殺されはしないだろうな。

ただ…………」

『黙れ!この家畜ども!!

余計な口を叩くな!!』

帝国兵がいきなり激昂し、銃床で俺の頭を殴り付けた。

「…………っ!!」

倒れそうになるが何とか踏み止まる。

『こっちはてめえらのせいで気が立ってんだ!

これ以上、余計な口を叩いてみろ、ぶっ殺してやる!!』

帝国兵はそうわめき散らすと、殺気立った様子でまた歩き出す。

レオは完全にビビって黙り込んでしまった。

《マスター大丈夫か!?》

《…………頭から血が………!!》

「(平気だ、それよりお前らも黙っとけ。

その代わり、いつでも力を使えるようにな)」

《…………了解じゃ》

《…………分かった》

ユキとクロはその言葉を最後に黙った。

これで良い、今はチャンスを待つんだ。

ユニも何か言いたげにしていたが、殺気立った帝国兵の手前それもできない。

ユニに視線で気にするなと送っておく。

でないと帝国兵に目をつけられかねんからな。

しかし俺達はどこに連れてかれてんだ?

さっきから延々長い廊下を歩いてるだけだからいい加減飽きてきたぜ。

と思ってると目の前に重厚な扉が現れた。

帝国兵がその前で立ち止まる。

『司令官!捕虜を連れてきました!』

「入れ」

大声で扉の向こうに話しかける帝国兵を見ていると、男の声が聞こえた。

重厚な扉が開かれ、中に入らされた俺達を待っていたのは意外にも若い男だった。

サラサラの金髪をしていて、背が高く一見細身だが、よく見れば筋肉も引き締まっている。

憂いを帯びたような顔をしているがかなり若く、それにかなりのイケメンだ。

しかし何より目を引くのは鷹のような鋭い眼光。

まるで射抜くような視線を受けて怯みそうになる。

「まずは初めましてだな。

私はグレンファーブ帝国第2師団大佐、ジルレリオ・ターライズだ。

貴様らが呼んでる名としては“疾風”があるな」

疾風だと!?

疾風と言えば数々の戦場で兵器を駆って、何十もの武勲を立てた帝国の重鎮中の重鎮じゃねえか!

中でも陸空両用強襲兵器『ヘルウイング』に搭乗した時の強さは、共和国の兵隊1000人に勝ると言われてる。

道理で共和国が苦戦するはずだ。

奇襲でただでさえ不利なことに加えてあの大佐と同じぐらいの実力の疾風がいたんじゃ勝てるわけもない。

「さて、君達に早速質問がある。

君達は見たところアカデミーの生徒のようだが、何故ここにいた?」

疾風がゆっくりと話す。

口調からして他の帝国兵と同じように、俺達共和国の人間を見下している感じではない。

だが質問には答えられない。

俺達が迂闊な発言をすれば、共和国が不利になるかもしれないからだ。

何を話して良いのか、悪いのかの判断がつかない以上、黙っておくのが共和国にとっては最善だ。

俺達が沈黙していると帝国兵の一人が苛立った声をあげた。

『さっさと答えろ!!

それとも痛い目に合わされなけりゃ分からんか!!』

他の帝国兵もにわかに殺気立ってくる。

常日頃から教官の殺気に晒されている俺はこの程度では動じないが…………。

レオとユニの方をチラッと見ると、レオは殺気立った雰囲気に完全に呑まれていた。

このままでは喋ると判断した俺は口を開く。

「やれるもんならやってみやがれ。

だが俺は絶対に喋らねえからな」

帝国兵の注意を引くために、わざと反抗的な態度を取る。

目論み道理、帝国兵の殺気立った視線が全て俺に向けられた。

『貴様ぁ!!余程、命がいらんらしいな!!

大佐!!もう我慢できません!!

こいつらを処刑させてください!!』

さっきから怒鳴っている帝国兵の一人が叫ぶ。

よく見たらこいつ、さっき俺を殴った奴じゃねえか。

どうやらこいつは、帝国の思想に染まりきってるらしい。

「落ち着けヘイト。

まだ何の情報も引き出してないんだ。

殺すには早い」

『どうせガキの持ってる情報なんてたかが知れてます!!』

「こいつらにはまだ聞きたいことがある。

下がっていろ」

疾風がそう言うと、ヘイトは不満げな顔を隠しもせず黙った。

疾風は俺達の方に向き直り、俺に視線を固定した。

「さて、君の度胸に免じて質問を変えよう。

君達はEー000と、どこで会った?」

「Eー000?」

なんだそれ?

俺達が怪訝な顔をしていると疾風は顎に手をやって呟いた。

「なるほど…………知っていたわけではないようだな。

なら偶然に出会ったということか」

何を納得してるんだ?

「Eー000とは―――」

『申し上げます!!』

疾風が何かを告げようとした時、帝国兵の一人が慌てた様子で部屋に入ってきた。

「どうした?」

『司令部正面での戦闘中、司令部内で次々と火の手が上がり、動揺した我が軍が総崩れし敵に突破されました!

もうすぐここに流れ込んできます!!』

フォンだ………!

あいつ、見ないと思ったらそんなことしてたのか。

「慌てるな。

予備部隊を呼び戻して―――」

『申し上げます!!

各方面より共和国の援軍多数!!

その数、少なくとも3万!

あと30分でここに到達します!!』

続いて駆けてきた兵の報告に、騒然となる室内。

『バカな!?

援軍が来るまであと一時間はあるんじゃなかったのか!?』

『そ、それが奴ら前もって転送魔法を各所に配置し、移動時間を短縮したようです!!』

『と、ということは我らの奇襲はバレていたのか!!』

混乱する室内でチャンスと見た俺は、クロとユキを抜く。

「待たせたな!!

クロヒメ!シラユキ!」

《待ちわびたぞ!!》

《………マスター、命令を》

「シラユキ!ブリザード!」

剣を一振りし氷風を発生させる。

『なっ!?前が見えんっ!?』

『ガキ共はどこだ!?』

帝国兵の混乱する声を置いてユニの手を取り、レオに「来い!」と言う。

部屋を脱出すると、扉の前でクロを振る。

爆弾でもないと吹き飛ばせないような扉が、空間ごと切断されて道を塞ぐ。

空間は元に戻るが物は元に戻らない。

「行くぞ!!」

俺はユニの手を引きながら走る。

「いやあ!あの絶体絶命の状況から生きて出られるとは!

やはり僕は祝福されし男!

ところで君、さっきの声は腹話術か何かかい?」

「うるせえ!!口動かす暇があったら走れ!!」

帝国兵の包囲から抜け出した途端口が軽くなりやがって!

「どこまで走るんですか?」

「味方が突入したんだろ、ならそこまで走りゃあ何とかなる!」

敵も勢いに乗ってる味方を突破して俺達を追うだけの余力はないだろう。

おまけに敵は混乱してる、そう難しくはないはずだ。

「良いか、道中の敵は無視しろ!

味方と合流することだけを考えて…………」

『いたぞ!あいつらだ!!』

………………え?

まさかと思いながら振り向くと、帝国兵十数人が銃を手に俺達の方に向かって来ているのが見えた。

《見事に予想が外れたのう》

《……………大外れ》

「こ、こんなはずは…………」

敵がそこまで来てるんだぞ!?

一介のアカデミー生ぐらい見逃せよ!!

「ええい、とにかく逃げ」

帝国兵が来るのとは逆方向に振り向くと、その方向からも帝国兵が来ていた。

《前門の虎、後門の狼じゃな》

「虎と狼の方がまだマシだ………」

こうなったらそこの窓から秘技・ガラス割りで飛び降りるしかないか?

真剣に秘技の使用を考えてると

「爆竜爪!!」

前から迫っていた帝国兵が吹き飛び、崩れた包囲網から赤い髪をたなびかせたフォンが現れた。

「…………これでお前に助けられるのも二回目だな」

その前に敵地に置いてかれた恨みが二回分あるがな。

「話は後だ。行くぞ」

フォンは言うや否や踵を返してさっさと走り出した。

「って待て!!

後ろの敵を何とかしてから」

《来るぞ!!》

クロの警告と同時に振り向きざま、目の前の空間を縦に引き裂く。

間一髪で帝国兵の放った銃弾が空間の裂け目に飲み込まれていった。

「くそ、この戦いが終わったら絶対あいつを殴る!!」

「それフラグじゃないかい?」

「俺がフラグじゃないと思ったらフラグじゃない!」

ガションッ!←ストライカー登場。

ガションッ!←ストライカー登場。

ガションッ!←ストライカー登場。

「君がフラグなんて立てるからあああああ!?」

「お前がフラグだなんて言うからあああああ!?」

レオと叫び合うも、ストライカーはすでに重機関銃を発射していた。

ドドドドドドドドドド!!と、ストライカー三体分の発射音が響き、銃弾が俺達に迫る。

とても一人じゃ捌けない、つまり俺、オワタ。

「アクアウォール!」

死を覚悟してると俺達の前に水の防壁が現れ、銃弾を全て受け止めた。

「ルー君、大丈」

「リリィ!お前最高の幼馴染みだぜ!!」

あまりにも良いタイミングに思わずリリィの声を遮って叫ぶ。

「そ、そんな最高だなんて…………」

顔を赤くしながらそう呟いたリリィの後ろにストライカーが迫る。

「リリィ!後ろ後ろ!」

「え?」

リリィが振り向くより先にストライカーがアームを振り下ろそうとする。

「クロヒメ!」

空間を越えた斬撃でリリィを攻撃しようとしたストライカーを真っ二つにする。

「え?え?

今の…………」

混乱するリリィはさておき、俺は黒剣を二振り。

すると一瞬後、ストライカーは二体とも斬り裂かれた。

これはクロヒメの能力で空間を越え、斬撃を直接ストライカーに叩き込んだのだが、リリィにそれを説明する暇はないので「後で説明する!来い!」と言って走り出す。

しかし…………ついに人前で使っちまったな。

またあの時のようになりはしないだろうか…………いや、使っちまったもんは仕方ねえ、今はここを脱出することを一番に考えねえと。

「遅かったな」

少し走るとフォンが待っていた。

その姿を見た瞬間、俺は衝動的に

「フォンてめええええええ!!

よくも二度も置いてったなあああああああ!!」

殴りかかっていた。

フォンはひらりとかわすと何事もなかったかのように、「行くぞ、走りながら説明する」と言って走り出す。

ちっ、まあいい、今は後回しだ。

「…………今のあなた相当カッコ悪いですよ」

ユニが呆れた視線を向けてくる。

男には譲れん時がある、ユニにはまだ分からんだろうな。

《…………譲れない時って状況を忘れて仲間に殴りかかることなの?》

あーあー、聞こえない聞こえない。

しかし、説明とは何のことだ?

とりあえずフォンに追いつくと、フォンは走りながら手短に説明した。

それをまとめると………

「つまり、俺を囮にした司令官暗殺はダミーで……………本当は内部から敵を混乱させることだったと?」

「そうだ。お前を囮にして内部から騒ぎを起こす二重囮作戦だった」

成る程……………

「って俺はどっちにしろ囮かよ!!」

本命の作戦でも囮だった事実に何だか涙が出そうだ。

「もうすぐ味方と合流する」

フォンの言葉通り、味方と思わしき集団に会う………ってクラスメイトじゃねえか。

クラスメイト達も俺に気づく。

『おい、あれルークじゃねえか?』

『本当だ!ルークだ!』

『おいおい、マジかよ…………』

『『『まさか生きてるなんて』』』

てめえら後で絶対泣かす。

「何はともあれ外に出れ…………」

嬉しそうにそう言ったレオが何かを見て固まる。

訝しげにレオの視線を追って…………全員がとっさに戦闘態勢をとる。

そこにいたのは………

『学生を相手にするのは好まんが私も軍人だからな。

Eー000は置いて行ってもらう、邪魔する者はこの疾風が全力で排除する』

翼を生やした、人型をしているが、人の二倍の大きさはある帝国軍の兵器『ヘルウイング』に乗った疾風の姿だった…………。

――――END――――


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