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ワールドウォーズ  作者: ブラックシュミット
19/20

18

作者「さて珍しく続きますキャラクター紹介!」

ル「普通続かないとおかしくね?」

作者「そこは主にツッコンだらいけないとこだ。

さて、今回のキャラはこの人です」

リ「あ、あの………わ、私なんかが出ても良いんですか………?」

作者「良いんだよ、むしろ出てくれないと困る」

リ「そう…………なんですか………?」

作者「うむ。というわけで名前を言ってもらって良いか?」

リ「は、はい!

あの、リリィ・サーペント、です。

お、お願いします」

作者「はい、良くできました」

ル「何故名乗らせたし」

作者「恥ずかしがりつつ、一生懸命自己紹介する姿がこうなんと言うか、可愛いだろ?」

ル「やばいこいつ…………早く何とかしないと………」

リ「そ、その可愛いだなんて、私には勿体無い言葉です!」

作者「謙虚だな。この謙虚さの1割でもルークにあれば………」

ル「おい今の言葉は聞き捨てならんぞ。

まるで俺が厚顔無恥みたいな言い方じゃねえか」

作者「え…………?」

ル「え…………?じゃねえよその気づいてないんだ可哀想みたいな顔をやめろぉ!」

作者「気づいてないのか………可哀想な奴………」

ル「そしてわざわざ言うな!」

作者「さて頭が可哀想な奴はともかく、リリィのプルフィールをババンと乗せるぜ」

リリィ・サーペント

好きなもの

甘いもの、可愛いもの、平和なこと

嫌いなもの

争い、気持ち悪いもの

得意なこと

回復、家事

苦手なもの

怖い人(教官等)、戦うこと

作者「流石パーフェクト幼馴染み。

家事まで完璧とは」

リ「そ、そんなことないですよ………!」

ル「(…………?何か忘れてることがあったような気がする………)」

作者「さて、それでは本編をお楽しみください」

「はー…………疲れた………」

ユニとテーマパークに行った翌日、色々(主に俺の命に関わること)があったせいで、俺は休み明けにも関わらず机に突っ伏していた。

「ルー君、おはよう………ど、どうしたの?」

登校してきたリリィが俺の様子に心配そうに声をかけてくる。

「ああ…………ちょっと昨日色々とな………」

「そ、そうなんだ。

大変だったんだね………」

リリィの同情の視線を受けつつ俺はため息をつく。

「でも楽しかったですよね。

また行ってみたいです」

ユニはテーマパークでのことを思い出してるのか、目を瞑りながら言った。

ほぼ絶叫系マシンにしか乗ってないがまあ喜んでくれたなら行って死にそうな目に合った甲斐も少しはあったな………。

と思っているとリリィが

「あ、もしかして二人でどこかいっーーー」

俺は言いかけたリリィの口をマッハで塞ぐ。

「む、むむうっ!?」

「良いか、リリィ。

今お前が思い至ったことは絶対にこのクラスの奴等には知られてはならない。

知られたら俺の命が危ういんだ、良いか?」

「(こくっこくっ)」

リリィが頷いたのを見て手を離す。

リリィは少し顔を赤くしつつ、すーはーすーはーと息を吸い込む。

ふう、危ないところだった。

あいつらにユニと二人でテーマパークに行ったことが知られたらクラスウォーズが起こるからな、絶対に知られないようにしないと。

ガラガラッ

「お前達、席につけ」

「おっと」

教官が来たのに合わせ、慌てて全員席につく。

全員が席についたのを確認して、リリィが号令をかけようとすると教官が止める。

「ああ、今日は号令は良い」

「は、はい」

「教官…………ついに号令までも面倒くさがるように」

ガッ!ゴッ!

「ぎゃあああああ!!」

『すげえ、瞬く間にチョークをルークの眉間に投げた!』

『しかも二本同時投げで二本とも眉間に当てた!』

『流石教官!』

「一人ぐらい俺の心配をしろよ………!」

チョークが砕け散るほどの威力でぶつけられたのに、心配する様子が微塵もないクラスメイト達に感動して涙が出そうだ。

「る、ルー君大丈夫?

回復しようか?」

「いや、そこまでじゃないから大丈夫。

ありがとなリリィ」

「そうだぞリリィ。

こいつは体が頑丈だから多少手荒に扱っても問題ない」

「おい!?」

「さてバカは放っといて説明を続けよう。

号令を省いたのは、今日が他クラスとの合同授業だからだ。

だから各自、今から十分以内に動きやすい格好に着替え、準備体操をすませ特別演習場に集合」

「教官!演習場まで歩いて十分はかか」

「走れ。

質問はないな?では朝のHRを終わる」

「ちょ、質問する時間すらなーー」

「あと九分半だな」

「絶対いつか復讐してやるからなこの鬼教官!」

俺は慌てて着替えのために教室を出ていく(男子は別の場所だから)クラスメイト達と一緒に更衣室へ走り出したのだった。

ーーーー特別演習場ーーーー

「はあはあ…………何とか間に合ったか………」

俺たち男子は息も絶え絶えになりながら演習場の前に死屍累々の状態で転がっていた。

リリィやユニは俺たちに申し訳なさそうな、同情するような微妙な視線を向けている。

「全く、授業前からこの様とは。

情けないやつらだ」

「更衣室に行く時と、ここまで全力疾走で来た俺たちに言う言葉はそれだけですか?」

「さて授業の説明を始めよう」

「………………」

これ以上は皆の迷惑になるので、言葉にならない怒りを堪えながら黙って話を聞く。

「今日、合同で授業をやることにした理由は来るべき帝国との戦いに備えて、集団戦闘を行いたかったからだ」

「集団戦闘………というと?」

「ここにいる全員分かっているとは思うが、戦争は個人の力だけでは勝てない。

仲間と連携を取りつつ緻密な作戦を立ててようやく勝つものだ。

特に我が共和国は、兵器では帝国に遠く及ばす、さらに兵士の数も少ない。

つまり我々は、常に相手より一歩二歩劣っている状態で戦闘を行わなければならない。

そんな状態で勝利を得ようとするならば、相手よりも兵の質を上げ、さらに綿密な作戦を立てなければならない、分かるかルーク?」

「何で俺に言うんですか!?

あとこの人数の中での名指しはやめてくれませんかねぇ!?」

他クラスから『おい、あいつがあの有名なルークだってよ』『サボり魔で有名らしいな』『おまけに魔法が一切使えないとか』などといったひそひそ話が聞こえてくる。

「くそ、教官のせいで悪目立ちしちまったじゃねえか」

「話している内容はほとんど普段のルークの行いに対してみたいですが」

「あー!あー!聞こえなーい!」

ユニが痛いところを突いてきたので、耳を塞いで聞こえないフリをする。

「お前ら、夫婦漫才は家に帰ってからやってくれるか?」

「教官、その話はガチでやめてください、殺気が周りからビシバシ飛んでくるんで」

ユニが俺の家に住んでいることを知ってるクラスメイト達は、教官の言葉に思い出したかのように殺気を放ってくる。

「まあお前に殺気が向けられようとどうでも良いが」

「あんた本当によく教官やってるな!」

「話が進まんから少し黙ってろ。

それでだ、今から諸君はクラス単位で模擬戦を行ってもらう。

ルールは簡単、本陣にある旗を取られるか、全滅したら負け。

魔法、武器の使用はありだが、武器には殺傷を禁じる魔法をかけさせてもらう。

またフィールド内には魔法の威力を抑える魔導機も置いておく。

多少強力な魔法を使っても心配はないぞ」

教官が言っている魔導機とは、軍などでも使用されている訓練用の魔導機だ。

数個でフィールドを作り、そのフィールド内の魔法の威力を死なない程度の威力に抑えるというもので、魔法に特化した共和国ならではの技術だ。

「作戦は十分間、時間をやるのでその間に話し合って決めるように。

何か質問のあるやつは?

いないようだな、では各クラスごとに分かれろ」

教官の指示に向こうのクラスとこっちのクラスで固まる。

「で、だ。

どういう作戦でいく?」

『作戦なんていらねえだろ!』

『突撃、突撃、突撃あるのみ!!』

「頼もしい奴らばっかだな………」

俺は呆れた口調で言うが、確かに今回はそれでも良いかと思う。

しょせん相手は同じ学生だし、そこまで本気になることもない。

相手も同じことを考えてるだろうし、正直言って面倒くさい。

「だ、そうだが良いかリリィ?」

俺はクラスのリーダーである委員長のリリィに聞く。

「え、あ、その…………」

リリィはあたふたとしながら皆の顔を見回す。

まあ確かに集団戦闘って言ってるのに作戦がただの突撃だったら真面目なリリィとしては頷きにくいだろう。

「お前はどう思う?フォン」

「…………それでも良いだろう」

フォンは何か言いたそうにしながらも、皆を見て諦めたように頷く。

まあ

「フォンもこう言ってるし大丈夫大丈夫」

「う、うん………」

リリィはまだ納得しきれてないようだったが頷く。

「じゃあ戦力の三割ぐらいを本陣に置いて、残りは全員攻撃で」

流石に本陣がら空きはまずいのでそう言うと、クラス全員が納得したように頷く。

本陣に残る人を決め、俺たちは教官に呼ばれるまで気楽な気持ちで待つのだった。

ーーーーーーーーーーーーー

『それではこれより、二組と一組による合同授業を始める!

各クラスの奮闘を期待する!』

通信機による教官の号令により俺たちは動き始めた。

ちなみに俺とリリィとユニは同じ班で行動することになった。

フォンも一応誘ったのだが、あいつは本陣に残ると言ったので今回は別行動だ。

恐らく相手が奇襲をかけるようなことはないだろうが、まあフォンがいれば何とかするだろうという気持ちもある。

「ルーク、相手の組はどんな人達がいるのですか?」

「俺もよくは知らねえが、確か貴族とか、富豪とか、軍のお偉いさんの子供が集まってるとか聞いたことがあるな」

「?そのきぞくという人はどこが凄いのですか?」

「あー…………とにかく、金持ちで凄い人達って思っときゃ大丈夫だ」

「はい」

「る、ルー君、怒られるよ………?」

俺のざっくりとした説明にリリィが周りをきょろきょろと見回しながら諌める。

確かに一組は家柄が家柄なだけに、妙なプライドを持ってる奴らがいるからなー……。

ただユニに貴族は家柄が古く云々言っても通じたかどうかは疑問ではあるが。

「さてそろそろ敵とぶつかるはずだが…………」

俺たちが今いるのは教官が指定した範囲の中間。

恐らく向こうも俺たちと同じような戦法を取ってくるだろうから、ぼちぼち会ってもおかしくな

ザザッ

「っ!!」

ギインッ!!

「ルー君!?」

「大丈夫ですか?」

茂みから飛び出してきた誰かの斬撃を受け止めた俺にリリィとユニがそれぞれ反応を示す。

「………よく………止めた………」

ぼそぼそと喋る斬りかかってきた男は、太刀使いのようだ。

太刀を見て、一瞬嫌な奴の記憶が甦りそうになるが、すぐに振り払い、ユニとリリィに「気をつけろ!まだいるぞ!」と警告する。

俺の警告直後、四方八方から魔法が飛んでくる。

「あ、アクアシールド!」

リリィがすぐさま魔法で防ぐが、敵は散発的に魔法を飛ばしリリィに休む暇を与えない。

「う、うう……このままだと……持たない………!」

「ちっ、クロヒメ、シラユキ!」

《………ふわあ、了解じゃ》

《…………分かった………》

「おい待て、お前ら何でそんなに眠たげなんだ?」

《マスターが今回は模擬戦だから寝てても良いぞ、と言ったのではないか》

《…………起こされて不満》

どうやら俺の言葉通り寝てた所を叩き起こされて不機嫌らしい。

「か、帰ってから何か作ってやるからやる気出せ」

《ふむ、まあしょうがないのう………ふわあ》

《………………》

「ええい、とにかく行くぞ!」

「………行かせると思うか………?」

太刀使いが俺から離れ、居合いの構えを取る。

その流れは淀みなく、流れる水のごとく流麗な動きだった。

ユキとクロとの会話に気を取られていた俺はそれに反応するのが遅れる。

「しまっ………!」

「…………斬!」

静かな気迫と共に放たれる斬撃。

回避は………間に合わない!

「ぐうっ!?」

ギャリンッ!!

辛うじてユキとクロを盾にして剃らし、手が若干痺れたものの直撃は避けることに成功する。

「………ほう……?

…………今のを防ぐか……?」

一方相手は居合い斬りを放った姿勢のまま、俺を感心した目で見ている。

「てめえ………調子に乗るなよ………。

クロ、ユキ!今ので目ぇ覚めたろ!」

《ああ…………最悪の目覚めじゃ………うう》

《…………許さない。

………安眠妨害の罪は重い》

ユキとクロもやる気十分になったようだ。

別にこの勝負の行方なんてどうでも良いが、ここまで好き勝手されて黙ってるほど俺は寛容じゃない。

「まずはリリィを助けねえとな。

ユキ!ブリザード!」

ユキを振ると、そこから氷混じりの暴風が吹き荒れる。

「………これが………例の………」

呟く男の姿が白く見えなくなったのを確認しクロを抜く。

「クロ、移動だ!」

《了解じゃ!》

クロを振り、魔法を撃っている奴等の背後に出る。

「うわっ!?

い、いきなり現れた!?」

「ど、どうやって!?」

「氷結境界!」

ユキを地面に突き刺し地面や周りの木々を凍らせていく。

「う、動けない!?」

「あ、足がぁッ!?」

今は威力減衰の魔法をかけられてるから、数十秒ぐらいしか持たないがリリィを逃がすのには十分だ。

俺はクロを振ってリリィの近くに出現する。

「リリィ、大丈夫か?」

「ルー君………ありがとう………」

リリィはずっと魔法を防いでいたせいか疲れきった様子で俺に礼を言う。

「礼は良いから早く隠れろ」

「う、うん………ごめんね………」

リリィはふらふらと近くの茂みへと隠れる。

「で、ユニいるか?」

「はい?何ですか?」

名前を呼ぶと近くの茂みに隠れていたらしいユニがひょこっと出てくる。

「ユニ、あの辺りをお前の魔法で吹き飛ばしてくれ」

「え!?で、ですが、その…………私は………」

「大丈夫だ。

教官が言ってたろ?

多少派手な魔法使っても問題ないさ。

むしろこういう時にこそ使わないでどうする?」

「そ、それはそうですが………でもまた前の時みたいになったら………」

「大丈夫だ。そのときは俺が責任持って止めてやる。

だから安心して使え」

ユニは悩むようにしばらく黙っていたがやがて意を決したように顔をあげる。

「分かりました、やってみます!」

「おう!やっちまえ!

ただし、ぶっ倒れないようにな!」

ユニは正面を見据えて目を瞑り手のひらを突き出した。

「な、なんだ?

何をする気だ?」

「くそ、この氷全然割れねえ………!」

「何か知らんが嫌な予感がする」

俺が先程動けなくした相手がユニを見て、不穏な空気を感じ取ったようだ。

「ふははははは!

今頃気づいても遅いわ!

ユニ、やれぇ!」

「集中してるので話しかけないでください」

「あ、すみません………」

怒られたので黙ってユニを見ていると、突き出した手のひらに小さな火の玉が生まれ、それがどんどん大きくなっていく。

「え、ちょ、なんだあの大きさ!?」

「あれって誰でも使える初級魔法のファイアボールだよな!?」

「俺…………この戦いが終わったら結婚するんだ………」

「待て、今フラグ立てんな洒落にならんから!」

相手側が狼狽えるのも無理はない、普通ボールぐらいの大きさのファイアボールが、今や飛空挺ぐらいの大きさになっているのだから。

「そろそろだ!ユニ、放て!」

「はい!」

「ちょっと待て!降参するからーー」

降参しかけた相手が言い終わる前にユニは魔法を発動した。

ドオオオオオンッッ!!

火の玉が着弾した所から大きな火柱が上がり、周囲一帯を焼き尽くしていく。

「………これ、最早別物だな」

俺は初級魔法ではあり得ない威力を叩き出したユニを見ながら呟く。

「あわわ………る、ルーク!

本当に大丈夫なのですか!?」

「死にはしてないと思うぞ。

お、ほら見てみろ」

火柱が消えた後には焼け焦げた地面と草木、そして体から煙を出しながらも呻いている相手が倒れていた。

「ほら、呻いてるから生きてる生きてる。

心配要らねえさ」

「そ、そうですか………?

まあ、ルークが言うのなら」

うん、まあ一週間か二週間は体中が文字通り焼けように痛いだろうが、死にはしないから嘘はついてない。

「さて、これだけ派手にやったんだ。

わんさか敵が来る前に離れーー」

「ふははは!

流石は僕の認めた男!

まさか、あの絶望的な状況から見事脱出するとはね!」

こ、このバカオーラ漂う声は………

声のした方に振り向くと、そこには長めの茶髪をふわさっとかきあげている貴族っぽい男がいた。

「ふ、久しぶりだな、我が友よ!」

「お、お前はバカ・ガーズヴェルト!?」

《レオ・アーホヴェルトではなかったかの?》

《…………キモ男》

「き、君、友に対してその言いぐさはないんじゃないかい!?」

誰が友だ。

「えーと…………ルーク、知り合いですか?」

一応告白したユニからも完全に忘れ去られていることにレオはショックを受けた顔になったが、一瞬後すぐに元のうざい顔になった。

「ふ、ふふ………そうか、今は我々は敵同士!

敵に語る言葉はないとそういう意味か!」

前一回たまたま一緒になっただけだが、相変わらずうざい奴だな………。

「き、貴様ら!

レオ様に向かって何たる言いぐさ!

そこに直っていろ、今すぐ成敗してやる!!」

俺たちの言葉を聞いてふるふる震えていたレオの隣にいる黒髪の女がそう言って、片手で持っている薙刀をブンッ!と振り俺たちに怒鳴る。

「こらこら、シズク。

女の子がそんな汚い言葉を使うものではないよ」

「しかしあやつらレオ様に対して無礼が過ぎます!」

「良いんだ、僕は貴族だから恨みを買うのは慣れている。

それに彼は命の恩人」

レオは俺を指差し。

「そして彼女は僕の運命の人だからね!」

レオはユニを指差しながら言った。

そしてそれを聞いた黒髪の女の子は目に見えて狼狽える。

「う、運命の人!?」

「そうさ!僕と彼女は恐らく前世からーー良いや!

きっとその前から宿命づけられ出逢うべくして出会った!

そんな気がするのだよ!」

「な、あ…………」

女の子は興奮気味に話すレオにパクパクと口を動かしていたが、唐突にユニをキッ!と睨む。

「おのれ貴様………どんな手を使ってレオ様に取り入った…………!!」

「る、ルーク………あの女の人すごく怖いんですが………」

「ああ、安心しろ。

俺もさっきから冷や汗と震えが止まらん」

バカな、この殺気………白閃と同等だと………!

あの女、相当できるぞ………!!(?)

「さあユニさん!

僕とともに人生というロードを歩もうではないか!」

「…………いま歩んでも………困る………」

レオが興奮したままユニに近づこうとした時、レオの前に誰かが立ち塞がる。

「あ!てめえはさっきの太刀使い!」

ちっ、さっきのユニの魔法に巻き込まれなかったか。

「おお、スクルド。

いきなり走り出して行ったからどうしたかと思ったよ」

「…………奇襲したが………失敗した………」

「ふむ、そうだったのか。

やはりここは正面から堂々と勝負するべきだろう。

このレオ・ガーズヴェルト、正々堂々とした勝負でこそ真の実力を発揮するのだから!」

「その通りですレオ様!」

「…………はあ…………言っても………聞かないか………」

レオとシズクと呼ばれた薙刀使いの少女、そしてスクルドと呼ばれたあの太刀使いがそれぞれ戦闘体勢を取る。

それに対し俺とユニも戦闘体勢を取る。

「行くぞ!

僕の魔法を見よ!」

レオが自信満々に言い放ち、バッと両手を前に突き出す。

「必殺!ガーズヴェルト家に伝わる伝統魔法!

華麗な僕に相応しい華麗で完璧な」

「なげえ!」

「魔ぶふぉ!?」

何かの口上の途中で俺が放った氷のトゲがレオに当たり吹き飛ばした。

レオの体は数メートル地面を転がってからやっと止まる。

「き、貴様ぁ!

レオ様がまだ喋ってただろう!?

この卑怯もの!」

「前口上がなげえんだよ!

いちいち待ってられるか!」

「あれからさらに詠唱があったのだぞ!?」

「尚更待てるか!?」

「くっ………!ああ言えばこう言う………!

貴様のような奴は実力で分からせるしかないようだな…………!」

シズクが薙刀を構えこちらに突進してくる。

「速い!?」

その動きは薙刀を持っているとは思えないほど速く、実力をうかがわせる。

レオはバカだが、あの太刀使いと言い、取り巻きどもの実力は本物ということか…………!

「行くぞ!はあああ!」

シズクが薙刀を上段に構え、突進の勢いのまま振り下ろそうとし

ガッ

「え?きゃあああ!?」

ズザーーー!

下にあった石に足を引っかけ、勢いのまま滑っていった。

「「……………」」

あまりの展開に言葉が出ない俺とユニ。

「くっ………卑劣な………!きゃう!?」

ゴンッ!

俺たちを睨みながら勢いよく立ち上がったシズクは、勢いのまま上にあった木の枝に頭をぶつけ、頭を抱えてしゃがみこむ。

「~~~~っ!!」

涙目でもなお俺たちに睨みを飛ばしてきているのは、ある意味、称賛に値するな………。

「……………で、どうする?

お前一人で俺たちを相手にするか?」

俺は瞬く間に一人になった太刀使いに言う。

太刀使いは二人を見てため息を吐いてから太刀を抜く。

「…………良いだろう………相手になってやる………」

「はっ、相手してやるのはこっちだ」

「………ただし………」

太刀使いは笑って

「………お前たちに…………その余裕があればだがな………」

「なに?」

どういう意味なのか聞き返そうとした時

ドンッ!バーンッ!ドゴオオンッ!

静かだった周りが急に騒がしくなり、戦闘音が聞こえ始めた。

「な、なんだ!?」

「………うまく………いったようだな………」

「お前がやったのか!?

何をした!?」

「………それは………」

「僕が説明しよう!」

復活したらしいレオがスッと立ち上がってスクルドの言葉を遮った。

いつの間にかシズクもレオの隣に戻っている。

「実は僕たちは作戦を立てていてね、まず戦力の何割かが君たちと正面から突撃し、君たち攻撃部隊を引き付け、そして残りの戦力の何割かを本陣の奇襲に当てたのさ」

「なにっ………!?」

それが本当なら戦力の大部分が攻撃部隊に回っている本陣は長くは持たないだろう。

「くっ…………!

このバカどもに構ってられん!

ユニ、それにリリィ!

後退するぞ!」

二人に声をかけ、本陣の方へ戻ろうとするが

「残念ながらそうはいかないよ!」

レオがパチンと指を鳴らすと、周りから敵が次々と現れ俺たちを包囲する。

「伏兵!?

いつの間に…………!?」

「ふふ、私たちがお前たちの相手をしていたのはこのため、つまりさっきまでの私たちは時間稼ぎのための演技だ!」

自慢げに胸を張りながら言うシズク。

「……………でもお前さっき本気で泣いてなかったか?」

「な、なな泣いてなどない!

バーカバーカ!」

「小学生かお前は………」

やはりさっき滑ってこけて、木の枝で頭を打ったのは素らしい。

「ふっふっふっ、さあもう勝敗は決した。

大人しく降伏したらどうだい?」

「甘いな、レオ。

俺たちにはまだフォンがいるんだぜ、そう易々とは」

『あー、あー、全員聞こえてるか?

残念なことに私のクラスの本陣が落とされたため、これにて合同授業は中止とする。

繰り返す、合同授業は中止だ。

各自、戦闘をやめ最初の場所に戻るように』

「…………なん………だと」

聞こえてきた放送の内容に俺は呆然と立ち尽くす。

「ふ、まあ僕にかかればこんなものさ!」

「…………お前は………作戦を……………立ててないだろう………」

「しー!ここは格好よく決めさせてくれ!」

「流石ですレオ様!」

というようなアホなやり取りを聞いて改めて思う。

こんなやつらに負けたのか………。

俺は肩を落としたのだった。

ーーーーーーーーーーーーー

「あー、諸君。ご苦労だった。

まあ今回の模擬戦で、集団戦闘における戦術の大切さというものがよく分かっただろう?

ただ突撃するだけで勝てるのは数でも質でもこちらが有利な場合のみ、そして最初に説明した通りどっちでも帝国に及ばない我々にそんな機会はない。

模擬戦だろうが本気でやらないと後々後悔するからな」

戦闘終了後、俺たちはそれぞれのクラスに分かれて教官の話を聞いていた。

特に俺たちは教官の言う通り、模擬戦だと舐めてかかってこてんぱんにやられたのでばつの悪い思いで聞いていた。

「さて…………今回のお前らの評価だが………」

教官はまずリリィを見た。

「リリィ・サーペント」

「ひゃ、はい!?」

「勢いに押されたのは分かるが、本来はクラスのリーダーであるお前がこのバカどもを先導して行かないといけない、分かるな?」

「は、はい…………」

「まあお前の性格からして難しいかもしれないが、もう少し積極性を出すのが今後の課題だな。

で、フォン」

教官はフォンの方に向く。

「お前は………相変わらず言うことがないな。

奇襲され、動揺した味方をすぐに立て直し、自分達の倍以上の敵を相手に長く持たせたその手際、見事だ」

「ありがとうございます」

「まあひとつ言うなれば、こういう展開になるのが分かってて黙っていたことぐらいか。

お前ももう少し積極的に意見を出して皆を引っ張って行っても良いんだぞ?」

「私はその立場ではありません」

「そうなんだがな…………」

教官は困ったような顔をしたが、すぐに元の顔に戻り、今度はユニの方を向いた。

「ユニはよくやったな。

いつもよりは制御しやすかったとはいえ、よく魔法を制御して、発動させた」

「はい、何かコツも掴めたような気がします」

「うむ、良いことだ。

で…………」

教官は俺たちをぐるりと見回した。

「お前ら男子の体たらくはなんだ?」

教官の声のトーンが一段低くなったのを感じ、俺を含め男子勢は背筋を凍らせる。

「作戦も何も考えずただ突撃し、結果本陣は手薄になり奇襲を受け、貴様らは敵の伏兵に包囲される始末。

これが本番だったらどうするつもりだ?」

俺たち男子はいっせいに顔を伏せる。

図星すぎて何も言い返せないのもあるが、何より教官の放っているオーラがやばい、マトモに目を合わせられない。

「貴様らに言うことは、まず練習だろうと本気でやること、そして一人一人の力を過大評価するな。

私たちがやってるのは一対一の試合じゃない、数千、数万の人間が殺し合いをする戦争なんだ」

教官はそう言った後、何故か準備運動を始めた。

「あの、教官?

何をしてるんですか?」

「なに、無様な戦いをして私に恥をかかせてくれた貴様らにお礼をしようと思ってな。

リリィ、フォン、ユニ以外の奴らは全員残れ!

今から特別補習を開始する!」

「と、特別補習!?」

「そうだ。

貴様らの精神、肉体から叩き直してやる。

とりあえずお前ら全員で私の相手だ、私に一撃入れるまでは帰さないから覚悟しろ」

そう言う教官の目は冗談を言ってるようではなく、本気で帰さないつもりなのが伺える。

「お、俺そういえば今日家族の葬式が…………」

「あ、俺も今日ばあちゃんの墓参りに………」

ドゴッ!!

クラスメイトが言い訳をしながら逃げ出そうとすると、教官は地面を思い切り殴り陥没させた。

「ん?どうした、帰りたいなら帰っても良いぞ?」

「「…………(ブンブン)」」

逃げ出そうとした奴らは青い顔で首が千切れんばかりに振る。

「そうか、なら全員参加だな。

勉強熱心な生徒を持って私は嬉しいぞ。

さて、早速始めようか」

教官の楽しそうな声とともに、特別演習場に俺たち男子の野太い悲鳴が響き渡ったのだったーー。

ーーーーーENDーーーーー

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