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ワールドウォーズ  作者: ブラックシュミット
13/20

12

「そういえば、俺たちってザンルートに直接行って良いんだろうか?」

「そう言われてみれば………」

「いや、この電車は便宜上ザンルート行きになっているが、実際にはザンルート近くに建てられた臨時の砦とその周りに作られた簡易的な街に着くようになっている」

俺達の疑問にフォンが答える。

そこが今の共和国のザンルートってわけか。

「そしてそこから少しザンルート寄りの所に、もう一つ攻略用の砦が建てられている。

ザンルートに着いたらまずはそこを目指すぞ」

流石フォンだ、もう到着後の動きまで考えてるとは。

「フォンさんって何でも知ってて凄いですよね

それに凄く強いですし」

「なに、親父が軍人だからな。

情報が入ってきやすいのと、鍛えられたからだ」

そういえばマーセル家の当主と言えば………

「フォン君のお父さんって確か“炎剣”って呼ばれてるんだよね?」

「ああ」

あの風剣のシュライトさんと同じく、共和国で屈指の実力を誇り、さらにあまり喋らないが部下思いで仲間にも慕われているという。

まさしくフォンの親父さんって感じだ、うちのちゃらんぽらんだった親父とは大違いだ。

《なるほど、だからマスターもちゃらんぽらんなのじゃな》

《…………カエルの子はカエル》

うるせえ!

「ルークルーク、アレ何ですか?」

「ん、どれだ………」

ユニが覗いていた窓から外を見た俺は固まった。

目の前は共和国側のザンルートへ続く街道が広がっているのだが、その街道を何十台もの輸送トラック、兵士を運ぶ装甲車両などが行き来していたからだ。

どう見ても尋常ではない事態が起きたのは確かだ。

「ルーク?どうしたのですか?」

「…………なあ、もう学園長からの依頼なんて放って帰らねえか?」

「ど、どうしたのルー君。

いきなりそんなことを言うなんて」

「そうですよ、私の記憶がかかってるんですから」

「外を見てみろよ………」

俺に言われ外を見たリリィが顔を真っ青にしていく。

ユニには俺から説明してやると、状況を理解するにつれユニも顔を青ざめさせていく。

「し、しかしまだ何かあったとは………」

ユニのそんなささやかな希望を否定するかのように、今度は戦闘用の車両ーー戦車や装甲車両等が通過していった。

帝国よりは劣るが、アレも立派な戦争のための道具だ。

帝国はともかく、今まで街に被害が及ばないよう相手の戦力に合わせ歩兵で戦っていた共和国があんなものを持ち出した時点で、何もないというのはあり得ないこととなった。

『次、ザンルート。ザンルートです。お忘れもののないようお願いします』

電車が速度を落とし、駅に入ったところで俺はすぐさま降りる準備を整える。

「今回は仕方ない!また、平和になった頃に来ようぜ!」

「ちょ、すでに帰る気満々ですか!?」

「そ、そうだよルー君!

簡単に諦めちゃダメだよ!」

「我が家の家訓に面倒なことはなるべく避けろってあるんでね!」

「そんなことナギサちゃんからは聞いてないですよ!」

「俺が今は当主だから俺が家訓を作れるんだ!」

「無茶苦茶な理屈です!?」

「無茶でも何でも今は貫き通さなければいけないんだ!」

「そのセリフ、もっと違う場面で使うべきじゃないか?」

フォンにまでツッコまれるが、気にせず電車が止まったのを確認して帰りのチケットを買おうとーーー

『乗客の皆様!

緊急放送をお知らせします!

現在、軍より第2種警戒発令が発せられました

その関係で今より電車は全て運行停止・・・・・・となります!

繰り返しますーーー』

ようとしたまま、俺は固まった。

「第2種警戒発令?」

「いつ戦闘が始まるか分からない状況の時に出される発令だね………」

つまりそんな危ない状況に今なってるということだ。

おまけに電車は止まってしまった。

「くっ、こうなったら街道からーーー」

『なお、街道は警戒体制が解除されるまで全面通行止めです!』

「……………」

「八方塞がったな」

「やるよ!戦闘終わらしゃ良いんだろ!」

俺は泣く泣く依頼をする覚悟を決めた。

《まあ、仕方なかろうて》

《…………マスターは普段怠けてるからちょうど良い》

「普段怠けてるのは否定しないが、対価デカすぎね……?」

「な、なんだか大変なことになりましたね……」

「その割にはちょっとワクワクしてませんかユニさん?」

「そ、そんなことないですよ!」

「でも今夜泊まる所どうしよう………?」

「最悪野宿だな。

まあ問題あるまい」

「………問題ない」

「クーデリカも野宿の経験があるのか?」

「…………ある」

意外だな、そんなにアクティブな性格には見えないけど。

「とりあえずどうする?」

「ふむ、そうだな。

街道が使えない以上、ここにある砦に行って事情を説明するしかないな」

流石フォン、状況に合わせてすぐに対応を考えるとは。

「しかし、俺達の話を聞いてくれるか?」

「学院長から話は行っていると思うが」

「そうなのかクーデリカ?」

俺が聞くとクーデリカはコクッと頷いた。

なら決まりだな。

「よし、じゃあ砦にいーー」

「いたぞー!!」

俺の声を遮るように誰かの叫び声が聞こえた。

声のしたほうに振り向くと、武器を構えた軍人であろう人達が、こっちに向かってきている。

「なんだなんだ。

こっちに向かってきてるが、犯罪者でも出たのか?」

「凄い剣幕でこちらに来ますね………」

たしかにこっちに向かってどんどん………どんど……ん?

「動くなそこの学生共!!」

ガチャガチャガチャ

こちらに走ってきた軍人達が俺たちを取り囲み、銃を構えた。

「な、なんだっ!?」

「口を開くな!

黙って我らについて来い!」

俺たちは訳が分からないまま、軍人の人たちに砦まで連行されたのだった。

ーーーザンルート砦ーーー

「失礼します!

例の学生たちを連れてきました!」

「ご苦労、後は私に任せなさい」

「はっ!」

俺たちは軍人の人に押され、室内へと入らされる。

そこには士官の制服を着たなんと女の人が、椅子に座っていた。

長い黒髪に、すらりとした長身、整った顔立ち、そして何より目を引くのはその女の人の横に立て掛けられている、刃が人の身長ほどある大剣だった。

こ、この人は………!

「ま、まさか第5師団の双剣と言われる内の一人、“剛剣”のミラウェル大佐ですか!?」

「ん?私の名前を知ってるのか?」

「知ってるも何も………」

共和国人で知らない方がおかしいだろう。

「そうけん?ごうけん??」

ユニが俺の言葉を呟きながら首を傾げている。

ああ、こいつは知らないよな。

「ユニ、とりあえずこの人は超凄い人、と思っておけば大丈夫だ」

「なるほど、分かりやすいですね」

「そ、そんなざっくりな説明で良いの?

というかルー君、何か凄い嬉しそうだね?」

「そりゃお前有名人にあったら嬉しいだろ?」

「う、うん………そうだよね」

リリィが俺の言葉にどこか納得しきれてない顔で頷く。

全く、何を疑ってるんだか、俺は純粋に有名人に会えて嬉しいだけだってのに。

「マスターは美人でスタイルの良い大人の女の人に会えて嬉しいんじゃ」

「………そう、視線はさっきから胸元に固定されている」

「お前らあああああああ!?」

俺の本音を読めるクロとユキの言葉を聞いたリリィとユニは何故か自分の体を一度見てから俺を睨み付けた。

「ルー君………酷い」

「最低です!」

「まま、待て待て!

今のはこいつらのデタラメだ!

というか、何で今自分の体を見た!?」

「う、る、ルー君には関係ないよ!

どうせルー君はスタイルの良い人が好きなんでしょっ!?」

「そりゃ………まあ」

「「………………」」

「いたた、ちょ、無言でしばかないで!?」

「マスター、身体的特徴で女子を苛めるものではない」

「……………外道」

「良いじゃん!?

何故か俺の周りにはお子様体型な奴しかいないんだからたまにスタイルの良い女の人がいたら目に焼きつけたってっていてて!

お前らまで参戦してくるだと!?」

「………それで、俺達を呼び出した用は何ですか?」

フォンは四人がかりでしばかれている俺には気に留めずに、大佐と話をしていた。

「うむ、手荒な真似をしてすまない。

シーナから「1名は逃走を図るかもしれないから多少手荒に連れてきても良い」と言われていたものでな。

実は数日前から攻略用の砦にいた部隊と連絡が取れなくなってね。

部下に確認に行かせたら、砦にいた部隊の全員が殺されていたんだ。

おまけにその砦には帝国の旗が掲げられていてね」

「数日で………ですか?」

「ああ。帝国の奇襲かはたまた未知の兵器でも投入してきたか………とにかく、我らはこれ以上敵の戦力が拡大する前に電撃作戦で街を奪還することに決めた。

すでに編成は済み、後は燃料などの補給が済み次第出撃する」

「で、でもそんなことをしたら街の人が…………」

「ああ、帝国軍の焼き討ちも含め多大な死者が出るだろう。

だが、これ以上敵の戦力を増強されては、逆にこっちがやられる。

今なら我らの総力は敵より上だ、まだ取り返すことはできる」

大佐の理路整然とした言葉に何も言い返せない。

確かに今まで戦況が膠着していたのは、あくまでこちらが敵の戦力を圧倒的に上回っていたからだ。

だから戦力を小出しにする余裕もあったが、敵がこちらを上回る戦力を持つかもしれない以上、その前に叩かなければ最悪ザンルートを完全に奪われてしまう。

そんなことを俺は床にボロ雑巾のように倒れ込んだまま思っていた。

「そんな………なにか、何か手はないのですか?」

「…………一つだけある」

大佐の言葉に嫌な予感を覚える俺。

「まさか………俺達だけで街を取り戻してこい、と?」

「いや、いくら特殊な武器等を持っていても所詮は学生、そこまでは期待していない」

「なら………?」

「うむ、お前達には奪われた砦を取り戻してほしい」

「砦………ですか?」

「ああ。あそこを攻略すれば敵に気づかれる前に一気にザンルートまで攻め込める。

野戦では性能が高いあちらの戦車が有利だが、街中ならば地理を知り尽くしている我らの方が有利だ。

早く戦闘が終わればその分、市民への被害も少なく済む」

「それに帝国軍の焼き討ちも防げる、ということですか」

「ああ。どうだ、やってくれるか?」

ミラウェル大佐の言葉にフォンとリリィとユニと(倒れたまま)俺は頷き合い、代表して俺はミラウェル大佐を見上げた。

「受けます、その依頼。

俺達もまだ学生とはいえ軍人の端くれ………何もしていない人達が傷つくのを黙って見ているほど臆病者ではありません!」

「ふっ、よく言った。

ならば君たちに命じる。

我らの攻撃に合わせ、砦を強襲し、内部にいる帝国兵を無力化せよ!」

「「「「了解!!」」」」

俺達は声を揃えて司令官室を………

「って待って!

置いてかないで!?」

危うく置いていかれそうになった俺はフォンに抱えられ、移動用の車に詰め込まれたのだった。

ーーーーーENDーーーーー

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