なみだ桜
この桜並木の中になみだ桜が生えています。
神様のいたずらなのでしょうか。
開花すると涙の花を咲かせます。
満開の涙の花びら。
悔しい涙、嬉しい涙、悲しい涙、感動の涙……
精一杯の涙の花が今、咲き誇ります。
どんな涙も桜色に透き通り輝いています。
思いっきり咲いた後、涙の花は散ってゆきます。
涙の飛沫が舞い上がります。
やがてなみだ桜は、他の桜と同じように新緑の葉を繁らせます。
夏を迎え、太陽の光をたくさん抱きしめます。
そして葉は秋色に彩られます。
木枯らしに身を任せ、枯葉を捨てて裸木になります。
冷たい冬を受けとめます。
あたたかい風が春を連れてきました。
つぼみが膨らみ、涙の桜はまた、花開きます。
悔しさは喜びの涙に変わっているでしょうか。
悲しみは希望の涙になったのでしょうか。
でも、どんな涙だって美しく咲くのです。
無駄な涙なんて一つもありません。
なみだ桜はすべての涙の花を平等に桜色に輝かせています。