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瞑想と論争  作者: ムルイ
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瞑想と論争


『瞑想と論争』(第一話)




ありきたりな出来事だったのかもしれない。

無造作に置かれた不法放置された粗大ゴミが並んでいた。


ひとつのゴミから増えていく不法放置のゴミの山

五年前から少しずつ増えていくゴミに近隣の住民の人達は、市役所や警察に、苦情を言い続けていた。

その後も その状況は続いたのだが…

とあるきっかけから

そこから、ゴミの山は、姿を消した。


腐敗臭…


真夏の季節だっただろうか?

魚が腐った臭いのような獣の腐敗臭だというべきだろうか?

場所が場所なだけに、近隣の住人の人も通行人の人も

生ゴミか動物の死骸の臭いだと思っていたようだった。

その悪臭に耐えかねた住人の人達が集まり

その腐敗臭の臭いの原因を探すように、粗大ゴミを撤去していた時に、マネキンのような人形を数体見つけた。

そのマネキンのような人形を動かそうとした時に、その場に居た近隣の住人は叫び声をあげながらそのマネキンのような遺体と悪臭から逃げるようにその場を走り去る者や

嘔吐を繰り返す者や

警察に通報する者や

物珍しい瞳で遺体を見てる者も居た。



その事件があってからか分からないが、その町の住人の人達は、数年もしない内に都会の街へ引越ししていた。



新聞記者やテレビ番組の取材班や

野次馬の人達が、その粗大ゴミの山に群がっていた。

一年もしないうちに、その放置された腐敗した遺体の話題とニュースは忘れ去れてい。


その町の人口数は、500人ぐらい居たが、数年もしないうちに0人になったのが、大きな謎なのだが、誰も その真相を知らない

その町の住人に聞いてみても

全員、知らない顔して その理由を語る者は、一人もいなかった。


ただ、その町の元の住人は、何かに怯えているような感じがしていた。

何かの恐怖を忘れようとしているのか、何かを隠そうとしてるような

そんな感じがしていた。


その事件から約10年経っただろうか?

あの事件の現場は、粗大ゴミの姿は消えて小さな慰霊碑のようなものがあった。


『慰霊碑?』


俺は、その場所の何とも言えない違和感に嫌悪感を感じていた。


『この慰霊碑は、この場所で、見つかった方達のもので、この町の寺の住職の方が立てたものですよ』


少し年配の男性は、そう言うとその男性は、その慰霊碑の前で手を合わせていた。

俺も その慰霊碑に手を合わせ御冥福を願った。


『杉原さんを この場所に呼んだのは、この場所で見つかった遺体の事で、色々と推理して聞かせてもらいたいんですよ』


『俺の推理ですか?』


『はい』


『ここの町は、小さな町でね。昔…この町に、とある大会社の研究施設を作る予定だったんですけどね。住人達が、全員で施設建設を反対したんですよ』


『こんな のどかな町で?研究施設を?』


『私も反対したんですよ この町の交番勤務してた時にね…。』


(しば)さんが、この町で交番勤務してたんですか?』


俺は、少し驚きながら柴さんを見た。

柴さんは、笑いながら俺を見ていた。


『昔は、本当に良い町だったんだよ 犯罪件数なんて0だっからね。あの出来事から色々と変わってしまったのかもしれないな…。』


『どうして反対したんですか?そゆうの警察は、中間の立場を取るものでは?』


『私も若かったからね。ほんの少し無茶をしたのかもしれないな…。この町の人を守りたかったし この自然を守りたかったのかもしれないな それに、警察官でもあるけど、その前に、この町の住人だからね。』


『そうなんですか』


俺は、青い空を見つめた。


とても穏やかな微風が吹き抜けていく

かつて、この場所で、悲惨な出来事が起きたと思えないぐらいに、穏やかな陽射しが降り注いでいた。


『この場所が研究所施設の建設場所だったんだよ』


『そうなんですか?何の研究施設ができる予定だったんですか?』


『私にもよく分からないが、微生物の研究施設だったらしいよ』


『微生物ですか?』


柴さんの運転する車の中から数年前からこの町の時計の針が止まったまま世界を見つめていた。



柴さんの昔話に相づちを打ちながら

時間が止まったままの町並みを見ていると無人の町に、二人だけ居て一台の車が走っているの考えると、ほんの少し奇妙な感覚にとらわれていた。


信号は、点灯もしてない

人影のない商店街、車一台も走ってない交差点の端にある小さな交番の前に車を止めて

柴さんは、その小さな交番入っていく俺も柴さんの後をついていくように、小さな交番に入っていく


『懐かしいな…懐かしいと言っても五年ぶりだけど、随分昔のように感じるよな…』


『都会の暮らしに、慣れると色々あるから そう感じるもんですよ。俺なんて、この間10年前に、故郷に帰ったら浦島太郎になった気分でしたから』


俺は、小さな交番の中を見ると古びれた机と椅子があるのを眺めていた。


『浦島太郎か…それはそうで面白い体験が出来そうだな…』


柴さんは、そう言うと奥に行くと畳の部屋があった。


『ここで、昔は、昼寝をしながら推理小説を読んだものだよ』


『勤務中に、昼寝と小説ですか、今の柴さんだったら絶対しないでしょうね。』


『私も若かったからな 警察も必要ないぐらい平和な町だからね。この町は』


『平和な町か…』


俺は、どことなく柴さんの平和な町だという所に、奇妙な違和感を感じていた。警察が、平和とか何も異常もないとか言う時は、何かを秘めている時もあるけど、その言葉の通り平和で何も異常もない時もあるが…。

柴さんは、殺人課の刑事をしていたから どことなく柴さんが平和と言うっと違和感を感じていた…。


『杉原さん、ちょっとそ この畳を動かすのだが…手伝ってもいいかな?』


『畳ですか?っと言う前に、その杉原さんって言うの止めてもらえないですか?どうせなら呼び捨ての方が、有り難いのですが…』


『んっ?どうして杉原さんでもいいんじゃないか?仕事のパートナーなんだから この大きな棚を動かすから 杉原さんそっち持ってくれるかな?』


俺は、大きな茶色の棚の端を持ち部屋の隅まで運んだ。


『パートナーでも柴さんに、さん付けされると俺、なんか調子悪くなるから 今まで通りに、(れん)で、いいですよ…なんか悪夢を見てしまいそうで、怖いから…』


『そうか…分かった。杉原さんの推理を鈍らせたら分るものも分からなくなるからな…そうだね。今まで通りに蓮君と呼ぶようにするよ』


『柴さんも現役じゃないんですから…あんまり無理しない方がいいですよ。変な事件に首突っ込むとまた、あの恐いねぇさん刑事にお尻蹴られますよ』


『探偵としては、現役バリバリだよ。あざみに尻を蹴られのは勘弁してもらいたいものだな』


柴さんは、笑いながらジャケットの内ポケットから小さな折り畳み式のナイフ取り出して畳みの縁に縁に差し込み畳みを動かすと そこには、黒い鞄があった。


『柴さん、その黒い鞄なんなんですか?』


『この鞄には、ちょっとした資料が入っていてね。この資料を蓮君にも見てほしいんだよ。』


『資料?ただの観光じゃないんですが?』


『無人の町に観光するという事に、何も違和感を感じなかったかい?名探偵君!』


『無茶苦茶違和感をこの無人の町に来てからしてますけど、この町に何かあるんですか?』


柴さんの瞳は、昔のような鋭い瞳を一瞬見せた。


恐らく俺も柴さんも

この後に起きる怪奇の出来事を予知できたなら

きっと、この黒いカバンの中身を見る事がなかっただろう…。


そう残酷な現実を知る事もなかったのかもしれない…。




山奥にある小さな村は、少し都会の町から車で走って五時間ぐらいの所にあった。

自然に囲まれた穏やかな町並みが見えてくる。

ここは、数年前の異常な出来事から

この町の住人が全員が、都会に引っ越ししてしまったという…。


ほんの1、2年で、町の住人が全員居なくなった本当の理由を知る者は居なかった。


まるで、この小さな町の元の住人の人達は、何かを隠そうとしているのか、それとも何かを忘れてしまいたいような雰囲気だった…。


もしかしたら、柴さんは、その謎を解き明かそうとしているのかもしれない。


この町に起きた奇怪な現象のひとつひとつを……。


俺と柴さんは、交番の前で、辺りを見回していた。人の気配のない町の雰囲気は、どことなく不気味で、妙に不安な気持ちにさせた。

『蓮君も長旅で疲れただろうから 今日の宿に行こうか』


『宿?』


『そうだよ この先の小高い山の上にある町長さんの家に泊まろっと思ってね。』


『えっ!この町で泊まるんですか?!』


『そうだよ』


柴さんは、笑いながら車に乗り込む姿を見ながら俺は、ほんの少し溜め息をして愛想笑いをしながら柴さんを見た。


『仕方ないか、柴さんには、逆らえないからな…』


俺は、さっきから付きまとう不安を振り切る為に、ほっぺたを両手の手の平で軽く叩きながら助手席に乗り込みながら


『そう言えば、飯とかどうするんですか?』


『その心配しなくていいよ!トランクに必要な物資があるから それにバーベキュー用の食料もあるよ』


『バーベキューですか?』


『はははっ蓮と都会の疲れを癒しながら一緒に酒でも飲もうかなと思ってね。』


『なんか、キャンプみたいだな』


俺は、そう言うと柴さんは、笑いながら車を走らせる。

せして、細い一本道を走りながら小高い山の上にある町長の家を目指した。



暗闇の支配する静寂の中を俺は、気配を消してゆっくり歩いて辺りの気配を消して辺りを見回している。

何者かの姿を見つけてゆっくり身を地べたにつけて、その何者かの気配を感じながら遠くに行くのを待っていた。


俺は、さっきまでの事を思い出していた。

柴さんと一緒に町長の家の庭で、バーベキューを食べながら酒を飲みながら

色々な話しをしていた。


ズッキン…


激痛のような頭痛が走る

左手で頭部を触ると指に血がついていた。

さっき…殴られた時に、頭部に怪我をしたらしい


お酒に酔っているせいか、思ったより上手く動かない…頭部に走る傷みも重なって、寝そべたまま動けなかった。


微かに遠くから聞こえてくる声…なにか言い争っているように聞こえてくる。


『な…っだ!彼…っは!必要な…物…ぞ!』


『知…か…なぜ…一…ので……かった…』


『……では、この………解けないからだ!』


『クソっ!』


俺は、その言い争う声の反対側にゆっくり歩き出す…気配を消しながら…。

激しい頭痛がしてまともな判断できないぐらい酔っているせいか、視界が歪んでくる。

辺りを見回している内に、近くの場所に小さな獣道を見つけて歩み出す…とにかくこの場所から逃げなければ、さっきの奴等に捕まってしまうという不安感が俺を急がせる。


様々な思考が駆け巡る

柴さんは、どうなった?生きているのか?死んでいるのか?一体奴等は、何者なのだろうか?

この町は、無人の町のはず…人も住んでない場所で何をしていたのだろうか?

もしかしたら浮浪者の者で、この廃虚の町に住み着いたの者で、強盗目的で俺と柴さんを襲ったのだろうか?

激しく痛む頭部を左手でおさえながら歩くアルコールのせいか、視界は歪んで見える…。


その小道の脇にある用水路の洞窟見えた。

俺は、その用水路の洞窟を目指して小走り走りながら

その洞窟の中に隠れながら辺りを見て人の気配の探していた。


鼓動が爆発しそうなぐらい激しく脈打つ

全身から溢れる出す汗と恐怖と緊張からくる痙攣のような震えが止まらなかった。


思わず俺は、昼間の違和感と嫌な予感を思い出していた。

用水路の洞窟の奥へ隠れるように、ゆっくり歩き出すと暫くすると階段があった。

その階段を上ると鉄の扉があった。

その鉄の扉のドアノブを回すと扉が開くと俺は、その鉄の扉の中に入っていく

そして、鍵をした。


『用水路に…鉄の扉?』


俺は、何故か この用水路の鉄の扉がある事に違和感を感じながらも激しく震える身体を引きずるように歩くと奥に、また鉄の扉がある事に気付いた。

そして、その鉄の扉に入っていくと真っ暗な世界に包まれていた。

ズボンのポケットからライターを取り出して火をつけながら辺りを照らすとベッドと棚と机と椅子があった。

机の上に、古いアルコールランプが置かれていたのを手に取り震える手で火をつけた。

辺りは、明るくなると窓のない部屋の中に俺は居た。


『なんなんだ…この部屋は?』


俺は、激しく目眩を感じていた。

そして、ランプを机の上に置き

ゆっくりとベッドの上に倒れ込みながら壁に刻まれた文字が見えたが読みとれないほど意識がもうろうとしていた。


そして俺は、ゆっくり眠りについた。

まるで、深い夢の世界へ旅立つように………。



何も感じない世界に漂うような感覚に俺は、無意識に死後の世界を想像していた。

記憶は、曖昧に瞼に映る過去の世界を見つめていた。


『死んだのか?俺は?』


ほんの少し瞳を開けるとそこには、見知らない部屋の壁だった。

俺は、ゆっくり身を起こしながら辺りを見てみると、さっきの鉄の扉の中の部屋じゃない部屋にいた。


『どうなってるんだ?確か…ランプに火をつけて意識が吹っ飛びそうになって…そのまま白いシーツのベットに倒れこんだはずなのに…』


俺は、左手で頭を触ると怪我などもしてないのを確認すると不思議な感覚に問われながら見知らぬ部屋の中を見回してみるとなんとなく女性の部屋だと分かった。


『さっきまでの出来事は、夢だったのか…それとも今夢を見ているというのか?』


俺は、自分のほっぺたを軽くつまみながらひねると微かな傷みを感じた。


『夢じゃないのか?』


不意に人の気配がして後ろに振り向くと誰もいない…ただ、本棚があるだけだった。


『んっ?なんだあの写真?』


俺は、ゆっくり歩み出す

その本棚の棚に飾られた写真立てを手に取り見つめてみると


『んっ?柴さんだ』


そこには、警察官の制服を着た柴さんの姿があった。

柴さんの横に、綺麗なお姉さんと数人の子供達の姿が写っていた。

背景には、昼間に行った交番があった。


『なんなんだ…此処は?夢の世界なのか?それとも夢の世界なのか?』


急な激しい頭痛に教われ激しい耳鳴りが鳴り響く

薄れていく意識の中で、その写真を頭の中に焼きつけるように見つめながら瞳を閉じた。


むせるようなホコリとカビと湿気の臭いに咳をしながら瞳を開けると壁に刻まれた文字を見た。


『天使に似た貴方の温もりを愛している』


そう壁に刻まれた文字を口ずさみと身を起こした。

頭に傷みを感じて少し触ると鈍い痛みを感じる。


『夢じゃなかったのか?』


俺は、古びれた木製の木の机のランプを暫く眺めていた。

ぼんやりとした意識がハッキリするまで…。


さっき見た夢のような現実のような世界で見た写真を何度も何度も思い出してい。


『一体…なんなんだ…なにがあるんだろうか…この町に…』



腐敗臭…?


動物の死骸の匂い…?


生ゴミの腐った匂い…?



そんな悪臭が一週間続けば、誰だって嫌悪感を抱くだろう


誰もそれが、人間の腐敗臭だと誰も思わなかっただろう…。



女性、子供、男性、子供から大人の死体が数十体が不法投棄されたゴミの山の中から発見された。

死後3週間から1ヶ月も経つものあった。


大量殺人事件だといえるだろうか?

まるで、人間をゴミのように捨てられていた事が、犯人の残虐性さが分かるだろう…。


1ヶ月間…小さな町は、様々なトラブルを巻き起こしていく

テレビ局関係者や

新聞記者や

週刊誌の記者の異常な聞き込みやカメラ撮影に、住人達は疲れ果てていた。

その事件以来…野次馬が毎日のように訪れては、馬鹿みたに騒いでは、住人に被害を出していく

深夜にも訪れるよそ者に、この町の人達は、強いストレスを感じていたのだろう


だんだん…精神を病んでくる者や

こんな異常なほどの状況に強いストレスを抱く者や

死体の発見以来…その不法投棄の真相が分からないまま時間が過ぎていくと変な噂が広まっていく…。


犯人は、この小さな町に居る…。


そんな噂は、週刊誌やネットから広がり

まるで、この町の人々が殺して死体を不法投棄したと言われていた。


やがて、穏やかな町は、だんだんと姿を変えていく

町の人は、ストレスと疲れから笑顔を見せる事がなくなっていた…。


そして、大きな過ちをしてしまったのかもしれない…。


その秘密は、この町の人は、知っている…。


でも、それは隠されている


もし、その秘密に関わる事を聞くと…


誰もが言う…知らない…


もう昔の事だから忘れた…


無口のまま無視をしては、意味の解らない事を言いながら悪口を言う


そんな、怪奇な事がある…。


一人の刑事は、そんな町の人達の変貌を朧な気持ちで見つめていた…。


昔は、挨拶したら笑顔で挨拶をしてくれたのだけど…

今では、無視をされてる。

あの事件以来…この町の人は、変わってしまった。


一体何があったというのだろうか…


私は、孤独を感じていた…


そして、疑問を感じていた。

この町の人達が隠している秘密を…。


私は、その秘密に触れた…。


そして、失ったのかもしれない


心を…


信念を…


正義感を…


私は、この小さな町に隠された異常なまでの怨念に似た…狂気を感じていた。




そして…瞑想と論争…。


恐らく3年前に、この町に、とある施設が建設されようとしていた。

町長は、その施設の建設する為の責任者代理の人達と幾度となく話し合いを繰り返していた。

町長の家で、町の人達と施設の責任者代理人の人達とは、ほぼ言い争う感じになったりしたので、私は、警察官という立場であった為、町長と責任者代理人の間に入り

話し合いをしていた。


その施設というのは、微生物研究所らしいのだが、この施設とこの会社自体には、色々な黒い噂があった…。


その噂を知った町の人が、町長に知らせたらしく

町長も町の人も

この施設建設に反対をしたのだが…。


法外な金額を町長に支払われ町の人達にも幾らかの金額を支払われると市役所のお偉いさんと役所関係者と施設の責任者代理と社員達は、町長一人に一方的な交渉を押しつけていた。

金の魅力というか魔力というのか、次第に反対していた町の人達も

だんだんと賛成していく

私は、ただその状況を見ているだけしかできなかった。

まるで、無力な人間だといえるだろう

町長と私は、似ているというべきか?

町長側も一方的な圧力のような交渉に、疲労滲み出てきたのだろう

足を引きずるように歩くように、目の下にクマを作り次第に痩せていった。

町長は、昔は、温厚て心温かい人で、人望があったが…今では、憎しみを露にして目付きも鋭くなりまるで、鬼の形相で、施設の責任者代理人達に罵声を浴びせかけていた。


私は、町長の気持ちが分かっていた…。

この町を守りたい気持ちが強すぎて、我を見失っているのだと…。


私は、警察官の立場であったが…町長の味方をした…

私も この穏やかな小さな町を守りたかった…


それが、全ての始まりだったのかもしれない



私は、山の奥の小屋の中で、椅子に縛りつけられていた。

うっすらとした暗闇の中で、ぼんやりとした板で塞がれていた窓の隙間から見える光を見つめていた。


『柴さん』


不意に声をかけてくる老人の声に、走馬灯のように過去の記憶が蘇ってくる…


私は、背中と腹部の鈍い傷みに苦笑いをしたながら答えた。


『お久しぶりですね。町長さん…』



『本当に久しぶりですね…あれから五年か六年ぐらいか過ぎてないのに、遥か昔の様に感じますよ。』


『町長も、この町に里帰りでもしてたんですか…?』


私は、ゆっくり振り向きながら町長の姿を見た。

まるで、あの日の町長の姿の面影もないぐらい痩せこけて鬼の形相のような顔がうっすらと見えた。


『里帰りではありませんよ…都会の暮らしは、肌に合わないので、この町に帰ってきたんですよ…息子達とね…』


私は、思わず鳥肌を立つぐらいの寒気を感じた。

都会の暮らしで、初めての任務の時に、逮捕した凶悪犯の殺人の鋭い瞳で睨まれた事を思い出すような気配を町長から感じていた…。


『息子達と?確かあの時に、事故で亡くなったのでは?』


『いえいえ…死んでないですよ。生きてますよ…。』


町長は、鬼の形相でニヤリっと笑いながら私を見ていた。



『まだ警察をしてるんですか?』


『……いいえ、今は、アルバイトを転々としながら生活をしているだけの毎日ですよ』


『おやおや…警察をお辞めになったんですか?』


『ええ…』


私は、都会の警察の生活で学んだ事がある。

身分を偽る事を警察という仕事してる者は、何かとして恨まれる業種だったりするから

あんまり、警察ですと言うのは、仕事以外では、しない方が良いと学んだからだ…。

町長は、国、政府関係者を意味嫌っているのを良く知っていた。恐らく警察官の私の事を嫌っているのを知っていたからだ…国家権力を頼る様に毎日のように、私に頼る町長の願いを叶える事もできないまま、心を救う事もできなかった…。

ただ…町長の憎む者達に、注意を促すだけの私を…国家権力の無力さをどんな思いで町長は見ていたのだろうか……。


『あんな出来事があってから…私は、警察の仕事が嫌になりましてね…辞めてしまいましたよ。』


『そうなんですか…柴さんも苦労したんでしょうね…あの時は、私の味方をしてくれたのを今でも感謝してますよ…あの糞共を追い払う為に…』


町長は、ほんの少し鬼の形相の表情が和らいた様に見えた。


『私の家で、妙な者が居るからと若い衆が、柴さんをこんな目に合わせた事をお許しください…。』


町長は、ゆっくりと立ち上がり私の側に来て右手に握られているナイフで、私を縛っている縄を切った。


『柴さんは、昔のままの優しい瞳をしてますね。本当に懐かしい…あの頃のあの穏やかな日々に戻れたなら…わしは…』


『町長…』


私は、身体の自由を取り戻しながら

ゆっくりと立ち上がり町長と向き合うように立っていた。



『若い衆?町長一人ではないんですか?』


『さっき言ったじゃないんですか…息子達と…』


『??』


『私は、この町に数人の町の住人の人達と帰ってきんですよ…やっぱり産まれ育った町が一番ですからね…。』


『そうなんですか…』


私は、ほんの少し辺りを見回してみると町長以外の人の気配はなかった…。


『おや…?柴さん…何か疑っていますかね…?もしかして…わし以外の人が居て柴さんを殺そうしていると…?』


町長は、物凄く嬉しそうに笑いながらそう呟くと私の顔を見つめていた。

まるで…獲物を見るような瞳で…。


『そんな事疑ってないですよ』


私は、ほんの少しふらつく振りをしながら壁に寄りかかり手をついた。町長の握り締めるナイフの間合いに入らないように…本能がそうさせるのか…職業病の名残なのか、自然に身体が動いた。


『おやおや…大丈夫ですか?柴さんも疲れたでしょう?私の家で、ゆっくり休みましょう…恐らくお友達も居るはずですから…』




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