101万回恋をした少女
恋人は近くにいた。
「ゴメン! キミとも駄目みたい!」
手を合わせ、頭を下げる。申し訳なさそうな顔で。
「ははは、いや、いいんだよ。
いい人が見つかるといいね」
ひきつった笑みで、男子は言ってくる。
「あー。
また1つ恋がおわったー」
私は歩きながら、ガクンっとうなだれる。
隣の幼なじみ(♀)は、何も反応してくれない。
「またフッちゃったよー。
なんかふしだらな女だー」
涙目の私。
「はあ。いつになったら恋できるんだろう、私」
さっき、放課後で男子と1つ恋を終わらせてしまった。
恋ができなかったから。
今は、下校中。毎日のように、幼なじみのサエと一緒に帰っている。相変わらず無口だけど。嫌われている訳じゃないよ、幼稚園から今の高3まで一緒だけど、1回も声を聞いたことがない。誰も。サエの弟すら。
中学校の卒業証書を校長のハゲからもらうときは、そりゃあもう、声を聞けると期待したんだけど、うなずいただけだったし。
「恋したーい! 青春おくれー!」
叫ぶ。
『恋心』が私には分からない。
アロマンテイック、と言うらしい。
産まれてから1回も恋をしたことがない。
イケメンって周りの女子から言われていた男児も、付き合ってみたけどダメだったし。
分からない私なりに考える。
ドキドキするのが『恋心』なんだろう。
相手を見るのすら恥ずかしくてできない。手をつなごうとするけど、やっぱり恥ずかしくてできない。
ドキドキ=恋心。
100万回生きたネコか、100万回死んだネコか、どっちだったか忘れたけど、そんな絵本がある。
何回も死ぬけど、何回も転生してしまう、転生モノの開拓者。けど、最後は、ある1匹のネコに恋をし、付き合い、幸せに暮らし。
転生はせず、その人生(ネコ生?)で命が終わりになる。
私も、100万回くらいはムリでも、たくさん付き合ってみようと。
そうすれば、いつかこんな私でも『恋』をして、幸せになるんじゃないかと。
幼稚園から高3まで、たくさんの男子と付き合ってきた。
「100万回って言っても過言じゃないよね、よねっ」
反応はない。
こっちはわざわざ顔を見て言ってやってるのに、向こうは見もしない。
小学校から高3まで、毎日ずっと一緒に帰ってるし、昼休みも一緒にいるのに。
なんか、一緒にいると落ち着くから。
ドキドキはしないけど、落ち着く。
ストンッ、て、テトリスみたいに、何かがピッタリとはまる感じがして。
…。
いやいや、まさかね。
「いっそ、サエちゃんと付き合ってみよっかなー」
笑顔で言ってみる。
ピタリ、とサエちゃんが立ち止まる。
不味いな、怒らせてしまったか。大切な親友なのに。
「冗談だってー、だって幼なじみだし、女子と付き合ったことないし」
相変わらず、立ち止まったまま。
ブラック校則が健在していたら、切ってこいと命令されるような、サエの長い前髪。それのせいで、感情はなんとなくしか分からない。
サエちゃんは、ゆっくりと、私に顔を向け、
「小さかった頃から、わたしはずっと貴女に恋してたよ?」
初めて聞いた声、それと一緒に衝撃的な発言。
小さかった頃から、ずっと私に恋してた?
え、ずっと近くにいたのに、この女子は私に恋を…? 私は全く気付かないで?
いや、確かに、テトリスみたいな、はまって気持ちいい感じは、あるんだけど。
今度は、私が立ち止まり、固まる番。
数秒の間。
なんとか私は声をノドから絞り出す。
「…マジで?」
100万回恋人の関係になり、『恋』をしようとした。
101万回目の『恋』は、本当の『恋』になるのかもしれない。
100万の次は100万1?
読んで頂きありがとうございました!




