狙われた少年
22時過ぎ、とある住宅街の交差点を赤色灯が照らしていた。救急車が発進する。
「大野さん、被害者は松澤翔君13歳。第二中に通う1年生です。21時に終わったサッカーの練習から、帰るところだったそうです」
小林が報告する。大野の前には後輪が大きく潰れた自転車が、電柱に立てかけられている。スタンドも壊れ、自立不能だ。
日産キャラバンのステレオカメラ車が、屋根の上からサーチライトを照らし、一気に明るくなった。この車は交通捜査課に所属し、交通鑑識車として、精細な画像撮影などの証拠確保に寄与する。
「3件目だな、偶然じゃ無さそうだ」
「はい、私もそう思います」
「小林君、一旦署に戻ろう。鑑識さんからの報告を待つ他ない」
大野と小林は覆面パトカーに乗り込み、署へ戻った。
刑事部屋へ入ると、被害者の病院へ行っていた黒田と片山が戻っていた。
「どうだった、マル害の容体は」
大野が聞く。
「左肩の脱臼、左大腿部の骨折でした」
被害者の証言から、車は極低速でぶつかってきたこと。練習が終わってから、気づくと尾行されていたと判明した。
「友達10人と、自転車で帰っていたそうなんです。途中で別れ別れになり、一人になったところでの事のようです」
黒田が報告した。
「ただ、具体的にいつから車が居たかは、よくわからないそうです。イヤホンをつけていたそうで」
片山が自分のイヤホンを見せた。
「これだよ。本当に多いですよ、ながらスマホにイヤホンに。自転車のルールを厳しくせざるを得ない理由ですよ」
小林が憮然とした表情で話す。
高木交通課長が近づいてきた。
「皆ご苦労さん。とりあえず今日出来る事はここまでだ。明朝から掛かろうじゃないか」




