小さな試練
町の朝は、いつもと同じように柔らかい光に包まれていた。
アオイとサクラは広場で今日の予定を話しながら歩いていた。モコもふわふわと跳ね、二人の間でくるくると回る。
「今日は町の北側にある『風の庭』に行ってみようよ」
サクラが目を輝かせて言う。
「風の庭? どんなところ?」
アオイが興味津々で尋ねると、サクラはにっこり笑った。
「風が自由に吹いて、いろんな植物が踊る場所。ちょっと不思議で、ちょっと難しいところもあるんだ」
二人は町の北側へ歩き出した。途中、小道の曲がり角で、小さな光の渦が立ちはだかった。
「わっ……!」
アオイが驚き後ずさると、モコがすぐに体を膨らませて飛び上がった。
「大丈夫、この町の小さな試練だよ」
光の渦は、通る者の心の状態を映し出す不思議な現象だった。勇気が足りないと、渦に押し返されて進めない。
アオイは少し緊張しながら、深呼吸をする。
「……私、できるかな?」
モコがぴょんと跳ね、耳と尾を揺らす。
「できるよ、アオイ。君の心は強いんだから」
サクラも手を差し伸べる。
「一緒に行こう、アオイ!」
二人は手を取り合い、光の渦に一歩踏み出した。
渦の中は柔らかい風と光の流れが複雑に絡み合っていた。
一歩進むごとに風が強く吹き、足元の草は揺れ、光が眩しく瞬く。怖さと不安が心に押し寄せる。
「……大丈夫、大丈夫」
アオイは心の中で自分に言い聞かせながら、サクラの手を握り直した。
少しずつ、二人の心が揃うと、光の渦は柔らかく揺れ、二人を通過させた。
「やった……通れた!」
アオイは思わず飛び跳ねた。モコも光を放ちながら喜ぶ。
その先に広がるのは『風の庭』だった。
風が柔らかく吹き、草花はまるで踊るように揺れる。光る花びらが舞い、空中を漂う種が光の粒を散らす。
アオイは息を飲み、目を輝かせた。
「すごい……まるで魔法の世界みたい」
サクラも目を輝かせて言う。
「ね? だから言ったでしょ。ちょっと難しいけど、頑張る価値がある場所なんだ」
アオイは頷き、庭を歩き始めた。足元の草や花に触れると、ほんのり暖かく、心が軽くなる。
「モコ……私、少し自信が持てたかも」
モコは体をくるりと回して光を輝かせ、嬉しそうに跳ねた。
小さな試練を乗り越えたことで、アオイの心は少し強く、少し自由になった。
町での冒険は、楽しさだけではなく、自分を試す経験でもある――そう実感した瞬間だった。
夕方、町の広場に戻ると、他の住人たちが微笑んで迎えてくれた。
アオイは胸の奥が温かくなるのを感じながら、今日の出来事を心に刻んだ。
「これからも、もっといろんな試練があるんだろうな……」
そう思いながら、アオイは次の冒険に向かう決意を固めた――




