町の秘密
翌日、町は朝から柔らかい光に包まれていた。
アオイとサクラは昨日の冒険の続きを楽しみに、町の小道を歩いていた。モコもふわふわと飛びながら、二人の前を跳ねて案内する。
「ねえ、モコ。昨日の町の時間のこと、ちょっと不思議だよね」
アオイがつぶやくと、モコは首をかしげた。
「ふふ、それはね、この町がちょっと特別だからだよ」
二人は町の奥にある丘の上へ登った。丘から見る町は、屋根や塔、光る植物が入り混じり、まるで夢の中の景色のようだった。
「実はね、アオイ。この町には秘密があるんだ」
モコは少し真剣な表情で話し始めた。
「この町は、人間界の人々には見えないんだ。ここに来るのは、心が少し柔らかくて、不思議なことを受け入れられる人だけ」
アオイは驚いた。
「え……そうなの? じゃあ、私みたいな普通の子でも来れるの?」
モコはふわりと体を膨らませて笑った。
「うん、特別な才能とかじゃなくて、心の持ち方なんだよ。優しさや好奇心、少しの勇気があれば、この町は君を迎えてくれる」
サクラも目を丸くして聞いている。
「じゃあ、この町は……誰でも来られるわけじゃないんだ」
「そう。この町はね、自然や住人たちのバランスで成り立っているの。町の魔法は、訪れる人の心にも影響するんだ」
アオイは少し考え込む。
この町の美しさや優しさは、偶然じゃなくて、町自身が生きているからなのかもしれない――。
「でも、モコ。もし町に悪いことが起きたら……どうなるの?」
アオイの声には、少し不安が混ざる。
モコは耳をぴょこぴょこ揺らして答えた。
「大丈夫。町には守る人たちがいるから。でもね、町を守るのは住人だけじゃない。訪れる人も、少しだけ手伝うことになるんだ」
その言葉を聞き、アオイの胸の奥がざわついた。
町の不思議さや楽しさの裏に、責任や秘密がある――それを知った瞬間、ただ遊んでいるだけでは済まないのだと気づく。
丘から見下ろす町の屋根や広場の光景は、今まで以上に神秘的で、少し緊張感を伴って美しかった。
「私……ちゃんと、この町で役に立てるのかな……」
アオイは小さくつぶやく。
モコはその頭をふわりと押し、励ますように光を輝かせた。
「大丈夫、アオイ。君ならできる。ここでの経験は、きっと君の心をもっと強く、優しくするよ」
アオイは深呼吸をひとつして、心を落ち着けた。
町の秘密を知ったことで、少しだけ大人になった気分になる。
この町の魅力は、楽しさだけじゃなく、心の成長の場でもあるのだ――そう実感した。
丘を下りると、町の住人たちが朝の挨拶を交わしていた。
彼らの笑顔と優しさを見て、アオイの胸は温かくなる。
「この町……やっぱり、好きだな」
小さな決意を胸に、アオイは今日も町での一日を歩き始めた――




