不思議な小道
アオイはモコの後を追いながら、小道を進んだ。
道は曲がりくねり、森の奥へ奥へと続いている。太陽の光は木々に遮られ、ところどころに幻想的な光の斑が落ちる。風に揺れる草の葉がキラキラと輝き、空気は夏の日差しの中にほんの少し冷たさを含んでいた。
「ここ……なんだか夢みたい」
アオイは小声でつぶやいた。
モコはふわふわの体をくるくる回し、耳と尾をぴょこぴょこ揺らして答えた。
「そうでしょ? この森は普通じゃないんだ。町もね、ちょっと不思議なんだよ」
アオイは思わず顔を上げ、森の奥を見つめた。木々の隙間から、遠くに小さな光がちらちらと揺れて見える。そこには小さな建物や屋根の輪郭が、まるで絵本の中の町のように浮かんでいた。
「町……あんなところにあるの?」
「うん、もう少し。あそこを抜けたら、秘密の町だよ」
モコはふわふわの体を光らせ、アオイの前で跳ねながら道案内をする。
小道の途中、アオイは足を止めた。足元の草の間に小さな影が動いたのだ。
「な、なんだろう……」
その影は、瞬く間に小さな光の粒のように森の中に消えていった。
「森は生きてるんだ。気を抜くと道に迷っちゃうよ」
モコは軽く警告する。アオイは胸の奥がざわつくのを感じたが、好奇心の方が勝った。
歩きながら、アオイは自分が普段どれだけ日常に慣れていたかを思い出す。学校の教室、家の庭、道端の小さな公園――それらの景色は安全だけれど、少し色あせていたように感じられた。
でも今、目の前に広がる森は、息を呑むほどの鮮やかさを持っている。
「モコ……私、あの町に行ってみたい」
アオイは強くうなずくと、モコも体をふわりと光らせて喜んだ。
「よし、あと少しだよ。気をつけてね、町はちょっと変わってるから」
モコの光に導かれ、アオイは小道を進んだ。森の木々が開け、前方にほんのり温かい光を放つ町が姿を現す――
そこは、現実の世界では見たことのない、柔らかく、少し奇妙で美しい場所だった。
アオイは息を呑み、心がわくわくと高鳴るのを感じた。
「……来ちゃったんだ、秘密の町に」
モコはにこにこと跳ね、アオイの手にふわりと体を寄せた。
「うん、ここからが本当の冒険だよ」
アオイは少し緊張しながらも、胸いっぱいの期待を抱いて、町への第一歩を踏み出した――




