子爵令嬢は後輩騎士爵三男と自習室で恋に落ちる
「『仲が良すぎる』って言われたんだよね」
放課後の自習室、当然のように隣に座るオリバーに向けてそう口にした。
学院を卒業して一定期間働くとと希望者は専門校に入学することができる。経営学や経済学など、自分の従事している分野でも良いし農学など家業を希望する人もいる。
四つ下のオリバーは二年飛び級して学院に入学し三年目で専門校を受験した。ので、六年目で希望したエルバと国際関係学の同期だった。入学オリエンテーションでたまたま隣の席になり、学院の同級生の後輩と言う事で何かと世話を焼いていたら懐かれて一緒に行動していたが、やはり目立ってしまっていたらしい。
先ほど自習室の前のベンチに座る同期に呼び止められ、咎められてしまった。
ーー久々の学生生活に浮かれていたのかもしれない。若い子をたぶらかしていると思われているのだろうか。
そんな事を考えながらいつもの席に向かうと、こちらに気づいたオリバーが嬉しそうに微笑む。
最初の頃に比べるとだいぶ心を許したようで、随分気安く話すようになった。
ーー彼の評判にも関わるし、距離を置いた方が良いと伝えた方が良いかな…
言語学の宿題に取り掛かりながらしばらく悩んで、
いつものように小声で話しかけてきたオリバーに向かって言った。
先程の「仲が良すぎる」話。
オリバーは一瞬目を見開いて
「俺は、エルバさんのこと好きですよ」
と口にした。
う、うえ
と情けない声が出た気がする。
オリバーの姉は私は私より年下だし、なんなら私の友達でオリバーの先輩であるセリーヌとの方が仲が良かったのだ。
「セ、セリーヌが好きなのかと」
思わず声が上ずる。
「なんで」
不満気にこちらを見つめてくる。
顔は赤くなっていないだろうか。
椅子ごと体をこちらに寄せてオリバーが耳元で囁く。
「…俺と一緒にいるの、嫌?」
「そ、そんな事ないけど」
机と机の間の衝立で顔を隠そうとすると左手を掴まれる。
「…両思いだと思ってたのに違うの?」
心臓がギュッと痛くなってやっとの思いで答えた。
「…わ、わたしも」
張り詰めた空気が緩んで掴まれた手をギュッと握られた。