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プロローグ 食べても食べても満たされない

キャスト


主役 松崎 美鈴(24歳)152センチ

サキュバスのクォーター。クォーターなのでファンタジーらしく小悪魔な恰好はできない。けれど、定期的に男の精気を吸わなければ生きられない。地味でコミュ力皆無で男性経験も無いので生きているだけ奇跡。普段は普通にアルバイトを掛け持ちして暮らしている。



脇役 松崎 麗華(48)160センチ

純粋なサキュバスの母を持つハーフ。なので20代にしか見えず、シングルマザーとして美鈴を育てつつ男漁りをして適度に飢えを満たして生きている。サキュバスの本能が薄く、必須栄養に等しい男の精気を得ようとしない美鈴を心配している。普段は大手企業でバリキャリウーマンをしている。

この世はなんて不平等なんだと思う。美しい人、そうでない人。お金持ちの人、貧しい人… いろんな風に差別ができる。そして、超えられない壁があって…


「だからさ~、里奈のものだったはずなのよ! あんな背が高いだけの女じゃなくて! 見る目ないと思うんだよね!」


「そうなんだ。里奈ちゃんは可愛いもんね。ほら、これお勧めなんだよ~」


宴会の席の真ん中で楽しそうに愚痴を言い合っているのは大木里奈という人だ。最近、出向してきた人で上司と不倫したとかで左遷されたらしい。それもわかるくらい可愛らしくて仕事をしない。


分かりやすくあざとくて可愛いタイプだから上司のうけはいいけれど、同僚は仕事を押し付けられたりして迷惑している。


…あんなにあざとくしないと男から愛されないなら、私は一生一人でも構わない。


そんなことをチラリと考えて目の前の大皿を半ばやけくそで空にしていく。


「そんな食べて大丈夫?」


隣に座った男性社員が心配してくれているけれど、


「大丈夫です。私、大食いなので。今日は食べ放題でよかったです。皆さんの迷惑になりますので」


とそっけなく返して食べることに集中する。これがほとんど栄養にならないなんて知ったらこの人はどう思うだろう。もしも、私が普通の人間じゃないなんて明かしたら?


考えてみるけれど意味はない。誰も信じやしないって分かってるからだ。


いくら食べても満たされない。飢餓が募ってしまってしかたない。普通の人間なら三大欲求だけで済むのに、私はそれだけで済まない。


「ねえ、二次会行こうよ! 里奈、飲み足りな~い!」


「いいねいいね。奢るよ、里奈ちゃん」


帰るタイミングができたと我に返る。気が付くと、同僚が用意してくれた大皿はすべて空になっていて、隣に座っていた男性社員は大木里奈の方へ行ってしまっていた。彼女の周りには常に誰かしらの男が取り巻いていて…


その光景を見ると、寒気がするようで見ていられない。


「私、帰りますので」


と会費を支払って足早に店を出る。…大食の私を気味悪がって、誰も後を追いかけない。これでいいんだとようやく心から安心できて、思わずため息が出る。


早くこの人生が終わったらいい。


もう終わらない飢餓に苦しむのも疲れた。生きているだけで苦しいから。


ふとスマホが鳴り響いて、画面を見ると母親の文字。出たくないけど、出ない方がうるさいから仕方なく出る。


『飲み会終わった? お母さん、今日は帰らないから。朝には帰るからご飯だけ軽く用意しておいてね』


「分かってる。いい男見つけたんでしょ? 好きにしたらいいよ」


自分でもびっくりするくらい冷たい調子で返して、通話を切る。脳裏に浮かぶのは美魔女の王道を行く母親の姿。パッチリ二重に長いまつげと彫りの深い顔立ち。その容姿に隠されているのは優秀すぎる頭脳で…


母はその容姿と頭脳を生かして一人で私を育ててくれた。そこは感謝しているけれど、どうしても好きになれない。


50歳も近いのに男漁りをしているのが気持ち悪くて仕方ない。同じくらい美しい容姿に生まれていたら違ったのかもしれないけれど、私は違う。どうしてなのか?


同じ魔族の末裔… サキュバスの末裔なのに、それをどこまでも自由奔放に楽しめるお母さんと、その血筋が気持ち悪くて仕方ない私。そのせいで早く死にたくてならない。なのに、死ぬ勇気さえない。


まるでクラゲみたいだ。海をさまようばかりでどこにもたどり着けないクラゲ。あんな風に本能だけで生きていられたら違ったの?


もう一度スマホを取り出して待ち受け画面を眺める。映っているのはダークカラーのスーツと深紅のカラコンで着飾った俳優の姿。やや釣り目がちの気が強そうな美貌は、私より魔族の役が似合いそう。


死ぬまで会えたらって願ってやまない。叶うわけがない願いだ。涙が滲む。みじめで仕方なくて、生きている喜びもないのに死を選べないのが辛くてならなくて…


「どうやら、サキュバスの末裔がこの世界にも生き残っているようだねえ」


どこからか老婆の声が聞こえてくる。まるで最初からそうだったかのように通りの隅に立っている。腰の曲がった灰色の着物に割ぽう着姿だ。白髪をきっちり結っていて、小料理屋でもやっていそうな雰囲気。

始まりました( ^^) _旦~~

昴流和希くんのお話です。一度はやっておきたかったサキュバスもののお話です。

が、見た目は普通の子ですね。ハピエン目指して頑張りますのでお付き合いくだされば幸いです。

感想くださればもっと幸いです。

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